2019年1月4日金曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑪

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑪


スイム後半がスタートした。

今回は、進路右側に最短距離のコースロープがある。ここは、息継ぎをするたびに確認できるので、ヘッドアップの必要がない。しかも、ジグザグに泳ぐ心配がないので、後半の方がタイムが期待できる。

まずは沖合に向けて泳いでいく。100mほど泳いだ後に右に曲がり、ここから1000m以上の直線コースだ。体力的にはまだまだ問題ない。回りにはほとんど選手がいないのは相変わらず。マーシャルのライフセイバーさんの方が多いくらいだ。

さて、長い直線を泳ぐ場合、プールと違ってゴールが全く見えないので、場合によっては心が折れそうになる。今回、その対策として僕がとったのは、腕をかく数を数える方法だった。

プールだと、25m泳ぐのに大体10かき~12かきかかる。最初の5mは壁をキックしたときに進むから、実質10mで10~12回腕を動かしていることになる。1かき≒2m(この場合の1かきは、右手と左手の両方を動かしたときを1かきと数えています)。
そうすると、約1500m進むのには、計算上は750回。
ということで、直線に入ってから、750まで腕を回した回数をずっと数えていた。

先のことは考えず、ひたすら数を数えることだけに集中する。眠れない時に羊が一匹、羊が二匹・・・とか数えるのと同じだ。

ちなみに、子供のころ羊が一匹、羊が二匹と数えてなんで眠くなるのか疑問だったが、大人になって謎が解けた。羊は英語だとsheep。シ~プ。シ~プと唱えるのは、羊が・・・と唱えるのとは全然違って呼吸とちょうど合う。ホントのところは知らないが、自分の中ではこれが正解だと思っている。

脇道にそれた。

スイム後半はひたすら単純作業を繰り返し進んでいく。時々、今が400回台なのか、500回台なのか判然としなくなったりしながらも、とにかく数を数えることだけ考える。後どれくらいでゴールかな?とか、何分だろう?とか、ペースはいいか?なんてことを考えるのは上級者になってから。

僕のような永遠の初心者は、いかに「体」と「心」を疲れさせずに淡々と作業を進められるかが重要になる。

これは、仕事にも通じる考えだと思う。仕事をしていると、つい短期的な成果を求めてしまう。けれど、皆生のスイムに関しては、スタートから3000m先にしか、ゴールという成果はない。

100mも2900mも、どちらも途中経過であり、そこでやめてしまったら、結果はDNFでしかなく、成果はゼロだ。
そう、皆生のスイムの成果はゼロか100かしかないのだ。このことを理解していないと、ああ、1000mいったとか、まだ1200m残っているとか、不毛なことを考えてしまう。そうするとモチベーションに上がり下がりが発生し、パフォーマンスも上下してしまう。

成果がでるまで(=ゴールするまで)続けることが、成果を出す唯一の方法なのであれば、どうすればそれを最も効率よく達成できるかに注力するべきだ。

その方法が、僕にとっては回数を数えるという作業だった。実は僕は単純作業が大好きで、単純作業を続けることにストレスがほとんど生じない。合わせて、同じペースで同じ動きを繰り返していくと、体の動きがだんだんと最適化されてくる(疲れによるフォームの乱れを考えなければ)ので、最も効率が良い。

そのため、ひたすら腕をかく回数を数えることに集中した―。



500回を超え、600回を超え、700回を数える。

700回になったところで初めてヘッドアップしたら、50mほど先に最後のコーナーになるブイが見えた。ドンピシャ!

でもここでペースを変えるとよくない。だって最後にはまた200mほど岸に向って泳がなければならない。そこで、またここから200数えることに集中する。

最初の40くらいで最後のコーナーを曲がり終える。そこからまた100回を数え、150回を数える。だんだん海底が浅くなってくる。

さらに進む。そろそろ立てそうな感じがするが、これまでの経験上こう思ってからしばらくしないと足がつかないことは知っていたので、ひたすら手を動かす。足をつくのは手が海底の砂に触ってからだ。

ひとかきひとかき、少しずつながら確実にゴールに向かっている。

そしてついに、右手が海底の砂をとらえた。念のため、もう一回だけ腕を動かしてから立ち上がる。すぐに時計を見ると1時間25分。
後半は38分で回ってきた。前半の47分に比べ10分近く早いタイム。やはり、前半はかなり余計な距離を泳いでいた模様。

水中で重力を感じていなかった体が重い。どたどたという感じで足を進めトランジットエリアに急ぐ。途中シャワーがあって海水を流せたので、ここで一緒にウェットスーツも脱いでしまう。

トランジットエリアでバイク用の荷物が入ったバックをつかみ、更衣室になっているテントへ。素っ裸になりバイクパンツをはいてバイクウェアを着る。ちゃんと靴下もはく。これ、長時間のバイクの場合結構重要で、足の裏に豆ができるのを防いでくれる。

さらに、背中のポケットにジェルを5つ装備。そして来ていたウェットスーツを袋に入れてようやくトランジットエリアを飛び出し、バイクパートに移る。

3種目の中で、比較的得意なバイク。これで順位を上げてやる。
しかし、炎天下でのバイクは想像を超える展開を見せるのだった―。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

人生、曇り時々晴れがいい。

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