2019年1月12日土曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑮

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑮



前回までのあらすじ―。

ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし、その後の長い上りに心が折れそうになりながらも登り切った。ようやく補給も行い、後半戦に突入したー。


バイクパートの後半はジェットコースターと呼ばれるコースが続く。要するに上り下りが繰り返されるコースということ。とはいえ、どの程度の上り下りなのかは行ってみないとわからない。ここまで、思ったようにペースを上げることができていないので、何とかここでペースアップを果たしたい。

とはいえ、通常、アップダウンがあるコースと平地のコースの場合、平地の方がペースが早くなるので、期待はできないが・・・。

小学校の算数の問題みたいだけれど、例えば、時速30kmのスピードで巡航できるとすると、15km進むのにかかる時間は30分。
これが、上り5km、平地5km、下り5kmのコースがあって、平地は同じ時速30kmのペースで走れるとして、上りは半分の時速15km、下りは倍の時速60kmで走れるとする。

一見、同じスピードで走れそうな気がするけれど、これが間違い。
上りの5kmを時速15kmで走ると20分かかる。平地の5kmは10分。この時点で30分かかっている。下りの5kmは5分で走り抜けられる計算になるが、計35分。

上り下りがあると、下りのスピードアップ分では、上りのロスを上回れない。

けれど、これが500mの下りの後に500mの上り、そして平地が500mとなると話が変わってくる。下りのスピードアップ分の勢いを使って上るので、上りのロスが減る。斜度にもよるけれど、500m下って時速60kmまで加速していた場合、上りは200m位まではだんだんスピードが落ちて平地の巡航速度くらいになり、上りの時速15にまで落ちるのは最後の100m位。ここはダンシングで頑張ればそこまでスピードが落ちることなくクリアできるので、平地と同じくらいの時間で通過できてしまう。

こうなることを期待して後半戦に入ったのだけれど、そうは問屋が降ろさなかった。皆生大会は、交通規制が敷かれていないことは前にも書いた。そのため、一時停止の標識や、信号機があると赤信号では止まらないといけない。

これが絶妙なポイントにある。

下りに入ってスピードが上がった勢いで、次の上りに入りたい時、下った先に一時停止の標識があることがある。そうすると、せっかく時速60kmまで加速したのに、急ブレーキをかけて一時停止。そして上りを時速0kmから進まないといけない。

また、同じく下りで加速してきたのに、わずか50m前で信号が赤になることも。
ロードバイク乗っている人ならわかると思うけど、これが悲しい。本当に悲しくなる。
時速60km→0kmを何度繰り返したことか。

それでも何とか、最後の折り返しを通過。

エイドステーションの方から、「ここからは最後天国だぞ」と言われて送り出された。

残り40kmちょっと。
想定よりは遅れているが、完走が危ぶまれるようなペースには一度もなっていない。ある意味順調に距離を積んでいる状態だ。

このまま何事もなくバイクフィニッシュを迎えたい。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

人生、曇り時々晴れがいい。




2019年1月9日水曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑭

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑭



前回までのあらすじ―。

ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし、その後の長い上りに心が折れそうになりながらも登り切った。しかし、距離はまだ半分残っている。



あと200mで下り―。

その声に鼓舞され、力を振り絞る。・・・しかしこれ、今思うと振り絞る力が残っていたということだ。その直前まではいつ足を止めて歩くかを考えていたというのに、現金なもので、間もなく終わりと聞くと頑張れる。要は気持ちの持ちようで頑張れるときとがんばれないときがあるということ。

これは、仕事や人生の色々なところでも出てくることだと思う。終わらない仕事やタスクの数々。毛できないと思ったことでも、何かのきっかけでもっと頑張れるようになる。

別に精神論を言いたいわけではなく、結局のところ、モチベーションを上げる「仕組み」をどう自分の中で作るかということなんだと思う。自分の力で、自分の心でモチベーションを上げていくのは難しい。けれど、例えば友人に「○○○○」をやると宣言することで、「途中で挫折すると恥ずかしい」という状況を作る。これも、一つモチベーションを上げる方法だといえる。こういうことを一つ一つ積み重ねていくことが、様々な壁を乗り越える力になるんだと思う。

この時も、確かに壁を一つ越えたと実感できる瞬間だった。残りの200mを走り切り、下りに入る。それまで、下手をすると時速10kmを下回るようなスピードで走っていたのと違い、40km以上にスピードが上がると、風を受けて気持ちがいい上に、汗が乾き体温が下がる。

そうすると、それまでぼんやりしていた頭がすっきりしてきて、色々なことに目が向けられるようになる。まず、アベレージスピードが上りに入る前は、28kmほどだったのが、22km前後に落ちている。これは下りが続けば回復できるはずだけれど、結構ペースが落ちていた。

また、残りの距離が約半分。70kmほど残っている。補給のリズムがずれているので、次の補給時間から立て直しが必要だ。それと、下りながら回している足に少しずつ力が戻ってきた感じがする。疲れから一気に足が止まった50km過ぎの落ち込みから、脂肪燃焼+補給した糖質の消費エネルギーで体を動かすサイクルがうまく回り始めたことが要因だろう。ここが一つの壁を乗り越えたということだ。

思ったよりも短い下りが終わり、小さいアップダウンが続く。水はボトルに入っていない。水分補給ができないのが痛いが、スピードが出ている分、暑さをあまり感じなくなっていて我慢できる。

そうして走ること15分あまり。ようやく、ようやくエイドステーションが見えてきた。

ここでは、これまでのような軽い補給ではなく、一度しっかりと立て直すことにする。
まず、カラカラに乾いていたのどを潤す。渡されたボトルのふたを開けてまずはコーラを一気飲み。さらにスポーツドリンクを一本飲んだ。

ぷは~~~!生き返る!!

飲んだ瞬間全身から汗が噴き出してくる。もう体中の毛穴という毛穴が開きまくっているので、汗の出方が半端ない。レース中にもらえるボトルを水で満タンにすると、持参してきたボトルには、クエン酸入りのドリンクの粉末を溶かす。これ、本当は1リットルの水に溶かすものなんだけど、600mlのボトルに入れて濃いめのドリンクにする。もう一本の水と一緒に使えばちょうどいいだろう。

また、エイドステーションに置いてあった、レモンに塩をつけてほおばる。これが不思議なもので、いつもならレモンにかじりつくなんて酸っぱくてできないのに、全然酸っぱくない。八朔とか、ちょっと酸っぱい柑橘系の果物を食べているくらいにしか感じない。

やはり、体が必要なものを欲しているということなんだろうか。

最後に頭に氷水を賭けてもらう。全身にかけてもらってもいいんだけど、バイクシューズが濡れると足の裏の皮がふやけてしまい、ランで豆ができるのを避けるために全身は濡らさないように気を付けていた。

補給のジェル、そして会場にあったスイカがうまい。こちらもいくつかほおばり、バナナをほおばったら、お腹がタプタプになった。大丈夫か?

何はともあれ、このエイドステーションでしっかりと補給できた。バイクパート後半、ここから正念場だ。


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人生、曇り時々晴れがいい。

2019年1月8日火曜日

薪ストーブのメリットデメリット(1)薪ストーブって暖かいの?

薪ストーブ。


ゆらめく炎とエアコンとは質の違う暖かさ。

家を新築するとき、または、リフォームするときに自宅に薪ストーブを導入したいと考える方が多いと思います。

一方で、薪の調達方法はどうする?本当に暖かいの?費用はどのくらいかかるの?外出するときに火がついたままで危なくないの?などと疑問や不安に思い、色々と調べている方もたくさんいるのではないでしょうか。

このブログでは、薪ストーブ歴11年の筆者が、これまでの薪ストーブライフを元に、薪ストーブ導入のメリット、デメリット、苦労や楽しさについて赤裸々に語っていきます。

これから薪ストーブを導入しようという人、また、設置したけれど上手に使えていない人にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

記念すべき第一回目の今回は、薪ストーブは本当に暖かいの?です。


結論から言いますと薪ストーブは暖かいです。

よくエアコンや石油ヒーターとは違う暖かさがあると言われていますが、どういうこと?と思われている方も多いと思います。どういう暖かさか?

それは、暖かいことに気づかない暖かさ。言い換えれば、外が寒いことを忘れる暖かさです。

何だかそれこそどういうこと?と言われてしまいそうですが、実際薪ストーブユーザーなら共感できるのではないでしょうか。

我が家では、夜寝る前の室温は大体24度くらいになっています。これは、山形だと5月半ば、もしくは9月下旬の最高気温と同じです。上着を脱いでYシャツ一枚でちょうどいい気温。

この季節に外にいて、皆さん、暖かいって実感していますか?
何かの暖房器具で暖められている・・・この場合は太陽に暖めらえているとか感じますか?意識していないですよね。

そういう気温だから、そういう季節だから、自然とそういう服装になりますよね。
それは、どこに行ってもその気温だからです。

我が家では、冬になると家の中の扉という扉はすべて開け放ちます。家中を1台の薪ストーブで暖めています。家中が暖かいので、外に出るときにびっくりします。あれ、きょうってこんなに寒かったんだって。

エアコンや石油ヒーターは、部屋を暖めているな・・・って感じる暖かさですが、薪ストーブは薪ストーブで部屋を暖めているとは感じない。それくらい家の「空気」だけでなく、「床」や「壁」、「天井」、すべてが暖かくなる。そういう暖かさがあります。

ただ、こうした暖かさを享受するには、一つ、大きな条件があります。

それは、一日中薪ストーブを焚いていること。

少なくとも10時間くらいは薪ストーブを連続して使っていないと、こういう暖かさにはなりません。

いやいや、日中は仕事に出てるからそんなに長い間連続して薪ストーブ使っていられないよ・・・。という方も多いですよね。

次回は、そのあたり、生活リズムに合った薪ストーブの使い方をした場合に、どのくらい暖かいのか―について書いていきます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


人生、曇り時々晴れがいい。

2019年1月6日日曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑬

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑬



前回までのあらすじ―。

ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし―。


バイクパートが50km地点を迎えたあたりから、いきなり来た。

それまで順調すぎるくらいに順調だった道のり。遅いながらも確実にクリアしたスイム。思った以上のペースで走れるバイク。しかし、そのペースがメッキに過ぎないことが突然明らかになった。

呼吸はそれほど辛くないのに足が重い。そして何より、ロングライドで100kmを走ったころのような「どんより」とした疲れが全身を包んでいる。この感覚、バイクのロングライドをした経験がある人ならわかると思うんだけど、特にどこかがきついわけでも足が痛くなったわけでもないのに、ペダルをこいでいられない感じ。

ほんの数分前までは、ボランティアの皆さん全員に返事をしていたのに、急にそれが億劫になる。声が出ない―。

スタートから約4時間。今にして思うと、これがレース前に蓄えたエネルギーが切れたタイミングだったんだと思う。

もちろん、バイクパートに入ってからはきちんと補給をしていた。先輩選手のブログで、レース中、1時間に吸収できる糖質の量は40gが限界ー。と書かれてあったので、1時間に280kcalのエネルギー補給を計算し、30分おきにジェルを1つ口にしていた。

でも、この時の状況というのは、例えばの話、体内に100リットル分のエネルギーを蓄えていて、1分間当たり2リットルずつ消費していた時に、毎分1リットル分だけ補給をしていたら、100分後に体内に蓄積されているエネルギーがゼロになった・・・というようなものだと思う。

だから、これまで同様エネルギーの無駄遣いをしていると、もう貯金がすっからかんになっているので、同じことはできませんよー。とカラダに言われているような状況だ。

したがって、ここから先は1分間に1リットルの消費エネルギーのペースで行くか(ペースを落として補給と消費量の均衡を図る)、脂肪を燃焼させて1分間に1リットルのエネルギーを絞り出し、同じペースで行くかしかない。

けれど、これまでのレース中は糖質を主のエネルギーにしていたので、脂肪燃焼サイクルにうまく入れていなかったため、こうした苦しい状況になってしまったんだと思う。

たぶん、ロングのレースに出るような人たちは、普段の練習から脂肪燃焼サイクルがうまく回るような練習をしていたんだろうけれど、たった2か月半の付け焼刃だとそうはいかなかったわけです。

このあたりが、ロングのレースの本当に大変なところ。オリンピックディスタンスのレースや、ハーフマラソンのレースだとこういう状況に来る前にゴールできてしまうので、見えていなかった。

そして、こうした状況に追い打ちをかけるように、ここからコースの最高到達点に至る長い上りが始まった。

それまで25km前後のペースで走っていた時には感じなかった暑さが、時速10km前後になると途端にまとわりついてくる。地面からの照り返しが強烈だ。背中を直火であぶられている上に、下から蒸気で蒸しあげられているような感じ。

午前10時の気温は32度。上り坂に入る前に2本のボトルに満タンにしていた水は、すでに1本は空になり、もう一本も半分くらいしか残っていない。初めての参加なのでこの先どこまで上りが続くのかが分からず、水を十分に飲めていない。最初の方で体を冷やすのに使いすぎたみたいだ。

途中、気持ちが悪くなってくる。少しだけど吐き気もしてきた。熱中症になりかけているサインだ。やばい。水を飲む。でももうちゃぷちゃぷという音がボトルの底の方でするだけ、ほとんど飲んでしまった。

次のエイドステーションはいつなんだろう。ああ、前を走っている人たちが皆バイクを降りて歩いている。木陰で倒れこんでいる人もいる。ああ、木陰というか日陰が欲しい。でも道路の上には全く木陰が無い。山道なので民家もないし、そのために水を分けてもらうこともできない。

ああ、歩こうかな。これは厳しいかもしれない。水もついになくなってしまった。仕方ない、ちょっと早いけどジェルを飲んで水分を補給しよう。
うげっ。口の中がねばねばする。つばも出てこない。そういえば、汗かいてるはずなのに背中とかサラッさらに乾いてる。

ああ、本当にもう限界だ。本当にやばいぞ。あれ、救急車が止まっている。ああ、駄目だったんだな。僕もそうならないようにしないと。迷惑かけられないからな。次の交差点曲がってもまだ上り続いていたら一旦歩こう・・・。

朦朧とする頭で、こんなことを考えながら、なぜか立ち止まらずにペダルをこぎ続けた。

ーそんな時、ボランティアの声が聞こえた。

「あと200m上ったら下りだぞ」

天の声だ―。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

人生、曇り時々晴れがいい。

2019年1月5日土曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑫

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑫


前回までのあらすじ―。

ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。


バイクがスタートした。バイクスタート時点で限りなく900位に近い順位だったので、これ以上落ちることはほぼない状況。最後尾から何人まくれるか―。とりあえず、100人は抜くことを目標に走り出す。

スタート直後は、直角コーナーが連続する住宅地の生活道路。そこから川沿いの土手にを走る。スイム終了時点では、体力的な厳しさはどこにもなく、また、風があたるので暑さもそれほどは感じない。

しかし、後に気象庁のデータを調べたところ、午前8時半過ぎには気温30度を超えていた。4000人いるというボランティア(選手の4倍以上の数の方がボランティアとしてレースに参加していた。衝撃の人数!)の方々が、交差点ごとに立っていてくれた。トップ選手が通過して30分以上経過していることもあり、だれてしまっている方もいらっしゃったが、この炎天下に早朝からスタンバイしているんだから仕方ないだろうと思う。

それでも、ほとんどの方が腹の底から大きな声で「頑張れー!」と声援を送ってくれる。心に沁みる。

ホント、皆さんがこんなに一生懸命に大会を作り上げてくださっているのに、僕なんかたった2か月ちょっとしか練習してなくて出場しちゃってごめんなさい。

何だか、そういう思いが先に来てしまって、一人ひとりに「ありがとう!」「暑い中ありがとう!」「水分とってね」などと、返事をしていった。
正直、30秒おきにボランティアの方から声をかけられるような状態なので、こちらもずっと声を出しっぱなし。でも全然辛くない。むしろ、そうやって声を出している方が、こちらも力が湧いてくるような気がする。

スタートから30分はほとんどそんな感じで声を出しながら走り続けた。

バイクの予定スピードは、時速25km。コース長が140kmなので、5時間で125km。大体5時間半でフィニッシュしたい。スイムを1時間半であがっているので、バイク終了時点で7時間。残りの7時間半をランにあてればどんなに最後歩いたとしてもゴールはできる計算だ。とらぬ狸の皮算用なのは十分承知しているが、決して無理なペースではないはず。

走り出して30分。サイクルメーターの数字はアベレージ28kmを差している。長距離のレースになるのでできるだけ最初は抑えているはずなのに想定よりも結構速い。

正確に言うと、25km位のペースで走っている感覚なのに、28kmが出ている。28kmのペースで走っていて28kmならいいんだけど、そうでない。

これは、レース直前に8000円という大金をはたいて(!)、タイヤを8年ぶり(!)に新しくした効果なのか、アドレナリンが出まくっていて思っている以上の力が出てしまっているのか・・・。きっとその両方だ。

なんにせよ、スピードが出ていることはいいことなので、とりあえずそれ以上抑えることもせず、逆に調子に乗ってペースアップすることもしないで、一定のケイデンスでペダルを回していく。ギアはなるべく軽く。フロントはインナー。リアも軽い方から4枚目から5枚目。ケイデンスは90~95を目安に。

そういえば、大学で初めてロードバイクに乗ったころは、110回転くらいを腰を浮かさずに回す練習をしていた。それってどういう意味があったんだろう。結果として110回転以下で回すことがなくなっていたな・・・。

この皆生大会、ほかのレースと大きく異なることが一つある。それがコースの交通規制が敷かれていないということ。通常ならば、バイクとランのコースは完全に封鎖され、信号もない状態になっているが、皆生大会の場合は、赤信号の場合は青になるまで止まらなければならないし、コースの途中には地下道を歩いて通らなければならないところもある。

そうした、ほかの大会とは違った面も楽しみながら、多くの人に支えられていることを心の底から実感するコースを走り抜けていく。今までトライアスロンでは、20以上の大会に出場してきたけれど、ここまで多くのボランティア、そして沿道の人たちが声援を送ってくれる大会は初めてだった。

そういう形で最初の1時間は順調に進んでいった。信号のある交差点にもほとんど出会うことが無く、交通規制なんてなくても全然問題ないじゃない・・・なんて考えていた。


これが甘い考えだったのは、50kmを過ぎたころからの思い知ることになるのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

人生、曇り時々晴れがいい。

2019年1月4日金曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑪

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑪


スイム後半がスタートした。

今回は、進路右側に最短距離のコースロープがある。ここは、息継ぎをするたびに確認できるので、ヘッドアップの必要がない。しかも、ジグザグに泳ぐ心配がないので、後半の方がタイムが期待できる。

まずは沖合に向けて泳いでいく。100mほど泳いだ後に右に曲がり、ここから1000m以上の直線コースだ。体力的にはまだまだ問題ない。回りにはほとんど選手がいないのは相変わらず。マーシャルのライフセイバーさんの方が多いくらいだ。

さて、長い直線を泳ぐ場合、プールと違ってゴールが全く見えないので、場合によっては心が折れそうになる。今回、その対策として僕がとったのは、腕をかく数を数える方法だった。

プールだと、25m泳ぐのに大体10かき~12かきかかる。最初の5mは壁をキックしたときに進むから、実質10mで10~12回腕を動かしていることになる。1かき≒2m(この場合の1かきは、右手と左手の両方を動かしたときを1かきと数えています)。
そうすると、約1500m進むのには、計算上は750回。
ということで、直線に入ってから、750まで腕を回した回数をずっと数えていた。

先のことは考えず、ひたすら数を数えることだけに集中する。眠れない時に羊が一匹、羊が二匹・・・とか数えるのと同じだ。

ちなみに、子供のころ羊が一匹、羊が二匹と数えてなんで眠くなるのか疑問だったが、大人になって謎が解けた。羊は英語だとsheep。シ~プ。シ~プと唱えるのは、羊が・・・と唱えるのとは全然違って呼吸とちょうど合う。ホントのところは知らないが、自分の中ではこれが正解だと思っている。

脇道にそれた。

スイム後半はひたすら単純作業を繰り返し進んでいく。時々、今が400回台なのか、500回台なのか判然としなくなったりしながらも、とにかく数を数えることだけ考える。後どれくらいでゴールかな?とか、何分だろう?とか、ペースはいいか?なんてことを考えるのは上級者になってから。

僕のような永遠の初心者は、いかに「体」と「心」を疲れさせずに淡々と作業を進められるかが重要になる。

これは、仕事にも通じる考えだと思う。仕事をしていると、つい短期的な成果を求めてしまう。けれど、皆生のスイムに関しては、スタートから3000m先にしか、ゴールという成果はない。

100mも2900mも、どちらも途中経過であり、そこでやめてしまったら、結果はDNFでしかなく、成果はゼロだ。
そう、皆生のスイムの成果はゼロか100かしかないのだ。このことを理解していないと、ああ、1000mいったとか、まだ1200m残っているとか、不毛なことを考えてしまう。そうするとモチベーションに上がり下がりが発生し、パフォーマンスも上下してしまう。

成果がでるまで(=ゴールするまで)続けることが、成果を出す唯一の方法なのであれば、どうすればそれを最も効率よく達成できるかに注力するべきだ。

その方法が、僕にとっては回数を数えるという作業だった。実は僕は単純作業が大好きで、単純作業を続けることにストレスがほとんど生じない。合わせて、同じペースで同じ動きを繰り返していくと、体の動きがだんだんと最適化されてくる(疲れによるフォームの乱れを考えなければ)ので、最も効率が良い。

そのため、ひたすら腕をかく回数を数えることに集中した―。



500回を超え、600回を超え、700回を数える。

700回になったところで初めてヘッドアップしたら、50mほど先に最後のコーナーになるブイが見えた。ドンピシャ!

でもここでペースを変えるとよくない。だって最後にはまた200mほど岸に向って泳がなければならない。そこで、またここから200数えることに集中する。

最初の40くらいで最後のコーナーを曲がり終える。そこからまた100回を数え、150回を数える。だんだん海底が浅くなってくる。

さらに進む。そろそろ立てそうな感じがするが、これまでの経験上こう思ってからしばらくしないと足がつかないことは知っていたので、ひたすら手を動かす。足をつくのは手が海底の砂に触ってからだ。

ひとかきひとかき、少しずつながら確実にゴールに向かっている。

そしてついに、右手が海底の砂をとらえた。念のため、もう一回だけ腕を動かしてから立ち上がる。すぐに時計を見ると1時間25分。
後半は38分で回ってきた。前半の47分に比べ10分近く早いタイム。やはり、前半はかなり余計な距離を泳いでいた模様。

水中で重力を感じていなかった体が重い。どたどたという感じで足を進めトランジットエリアに急ぐ。途中シャワーがあって海水を流せたので、ここで一緒にウェットスーツも脱いでしまう。

トランジットエリアでバイク用の荷物が入ったバックをつかみ、更衣室になっているテントへ。素っ裸になりバイクパンツをはいてバイクウェアを着る。ちゃんと靴下もはく。これ、長時間のバイクの場合結構重要で、足の裏に豆ができるのを防いでくれる。

さらに、背中のポケットにジェルを5つ装備。そして来ていたウェットスーツを袋に入れてようやくトランジットエリアを飛び出し、バイクパートに移る。

3種目の中で、比較的得意なバイク。これで順位を上げてやる。
しかし、炎天下でのバイクは想像を超える展開を見せるのだった―。


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人生、曇り時々晴れがいい。

2019年1月3日木曜日

皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑩

初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑩


午前7時。
スイムスタートの時間。

スタート地点には900人の選手たちが並ぶ。これまで出てきたオリンピックディスタンスのレースでは、多くても400人程度だったので、これだけの人数が一斉に泳ぎ出すのは初めての経験。

正直、壮観だった。主催者のコールに合わせて皆が一斉に鬨の声を上げる。主催者からは現在の気温が28度。この日は35度以上に上がる予報なので、熱中症に気を付けるようにと言われるが、あとで気象庁の記録を見たらアメダス観測点での気温は26.8度だった。どうやら、会場は観測地点より2度ほど高い模様。

レースでは、前の方はバトルがきついと聞いていたのでで、後方に待機する。だが、この作戦は良い面も悪い面もあった。

元々、オリンピックディスタンスの1500mですら40分くらいかかる泳力しかない。50mを1分20秒(25mを40秒)で泳ぐペースだ。実はひそかにスイムでの足切りを恐れていたくらい。そして、このレベルの泳力で大会に出る人はほとんどいなかった。

後方からスタートすると、最初の5分ほどは若干のバトルがあるものの、すぐに誰とも接触しなくなった。おかしい、900人が泳いでいるはずなのに、何があった?
ヘッドアップして回りを見回すと、周りには選手がほとんどいなかった。

おいて行かれたのだ。

そもそも、回りとバトルできるほどの泳力が無かったのだ。バトルは回りと同じくらいの泳力があって初めてできる・・・というか起きてしまうもの。泳力が低い人が後ろからスタートすれば、だれともバトることなく一人ぼっちになるに決まっている。

それは、自分のペースで泳ぐことができる反面、前の選手について行って、スリップストリームに乗ることができないことを意味する。
多くの人が泳ぐことでできる流れに乗れれば、自分の力以上のペースで泳ぐことができる。それを狙っていたのに。

結局、3kmのスイムの間中、自分一人の力だけで泳ぐことになった。

皆生大会に限らず、ロングの大会に出ようと考えている方、スイムで他の選手とバトルする(=流れに乗ってスピードアップする)には、50mを1分10秒(25mを35秒以内)の泳力が最低でも必要だったみたい。

上記ペースの僕ですら、プールで200m×5本とか練習すると、50mを1分5秒くらいでは泳いでいる(200mを4分20秒くらい)。ということは、プールでは50m1分以内で200m以上泳ぎ続ける泳力が必要になるようだ。50mを1分だと、1500mは30分。プールで30分前後で1500mを泳げる人以上の人たちしかいないのがロングの大会なのか―。

なんてことを考えながら泳いでいたら、右側にコースロープが見えてきた。おかしい。
皆生大会のコースは、最初の200mほどを沖に向かって泳いだ後は、左に転回。そのまま中間地点で一度上がるまで、砂浜に平行に泳ぐ。折り返した後は、コースロープの外側を戻ってくるカタチだ。


コースロープは、砂浜側の進路左側と、復路との境となる進路右側の二本が平行に張られていて、コースの幅は100m近くある。本来、左側のコースロープ近くを泳ぐのが最短距離を行くセオリー。右側を行くということは、陸上のトラックでいえばオープンレーンで8レーンばかり走っているのと同じ、距離のロスがあるということだ。

実は、泳力のほかにもう一つ、僕には弱点がある。それは、ヘッドアップが苦手ということだ。これ、皆さん練習してますよね。きっと。僕も練習はしているのですが、どうしても苦手で、うまくできない。というかペースが崩れるのでやりたくない。さらに言うと、息継ぎが右側でしかできない―。

ちーん。というSE(サウンドエフェクト)が聞こえてきそうなほど、詰んでいる状態。ホント、良くこれでロングに出ようなんて思ったもので・・・。

オリンピックディスタンスのレースだと、コース幅がそこまで広くなく、また、内側のコースロープが右側にあることが多いので(そういうコースのレースばかり出ていたということもある)、早々にコースロープに張り付き、コースロープに沿って最短距離を泳いでいた。多少のバトルがあっても、そこまで人が多いわけではないので致命的なことにもならなかった。

だが、今回はコース幅がかなり広い。また、往路で右側のコースロープ付近を泳ごうとすると、ショートカットを警戒してなのか、マーシャルの方から注意され、内側を泳ぐように促される。そのたびに、進路左側に泳いでいくが、今度は左側のコースロープまで斜めに泳いでしまい、今度は右に進路を切って・・・。

結局ジグザグに泳いでしまい、本来の距離より何百メートルか長く泳いでようやく、ようやく中間地点にまでたどり着いた。

一度砂浜に上がった時点で7時47分。気温は上がり、水温も高い。このペースならば足切り前にスイムアップは可能だが、後ろを見ると3、4人しか泳いでいなかった。

しかし、後半はコースロープが進路右側に来る。しかも、それが最短距離だ。後半はヘッドアップを一度もしなくてもゴールまで行ける。ペースアップもできるだろう。

レース冒頭からいきなりきつい状況になったが、希望が無いわけじゃない。何より今日の目標はゴールまでたどり着くこと。どんなにかっこ悪くても、どんなに無様でもいいからこの体をゴールまで持っていく。

希望を持ってスイム後半に挑んだのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

人生、曇り時々晴れがいい。