初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録㉒
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。約1時間をロスしたものの、ようやく回復したが、今度はアンクルバンドが無いことに気づいて・・・。
アンクルバンドが無い―。
これまで、数多くのトライアスロンの大会に出ていて、こんな経験は初めてだ。
何でなくなっていたのか・・・。どこにいったのか・・・。
真っ白になった頭で考える。考える。考える・・・。
・・・あれだ!
バイクからランへのトランジットの時、足首に巻いたキネシオテープ。このテーピングのために、一時アンクルバンドを外した。
たぶんその時、テープの紙と一緒にまとめてトランジッションバッグに入れてしまったんだろう。皆生大会では、トランジットのタイムを測るためのランスタート地点での計測点が無かったことも、走り出した時に気づけなかった理由だ。
しかし、トライアスロンはすべてが自己責任。悪いのは自分だ。
ではどうしよう。
真っ白になった頭で、とりあえず足だけは動かしたまま考える。取りに戻るのはどうか。
いや、すでに10km来ている。これから10km戻ってトランジットまで行き、さらに今走っているところまで再び走りなおすと20km。そこからさらに32km。
残り時間4時間半で?どう考えても無理な相談だ。
となると失格はやむを得ない。悔しいけれど、本当に悔しいけれど、ゴールしてもタイムは出ない。でもこのまま走ってゴールまで行くことはできる。
しかし、大会運営をする人たちにとっては、アンクルバンドは計測器でもあり、下手したらGPSで選手の現在位置を確認しながら、選手の安全を守ろうとしている道具。そうした努力を払って大会を続けている以上、まったく伝えないで走り続けるわけにはいかない。
そのため、次のエイドステーションでマーシャルを探して事情を説明した。さすがにマーシャルの方もびっくり。そんな人見たことないとか・・・。ですよね~。自分でも信じられないもん。
本部に確認を取るということで、しばし待つ。
その後伝えられた返答はその場で失格。その後のレース続行は認めないというもの。やはりというべきか、安全確認ができない状況で走らせるわけにはいかないということか。
このまま、ここで回収のバスを待つように言われるが、この日は最終的に36度の猛暑日になっていた日。DNFの選手が多く、救急車で搬送された人や回収された人が後を絶たず、バスが来るまで2時間くらいかかるという。
2時間も何もしないで待っている気になれず・・・。歩いて戻ってもいいか確認すると、それは大丈夫という話。しかし、レースは終わっているので、ゼッケンは外してほしいと言われた。
当然のことなので、その場でゼッケンを外し、10km先のメイン会場までとぼとぼと歩き始めた。
胸にこみ上げるのは、「何でこんなことになったんだ」という疑問と後悔。あの時、ちゃんとアンクルバンドをつけていれば。きちんと忘れ物チェックをしてから走り出せていていれば。
これまで、ゴールを目指して走ってきた道。ランの折り返しを過ぎれば、ゴールへと続くはずだった道。
そこを、スタート地点に向って進む自分がいる。なんだかんだで10万ものお金をかけて、1000kmも車を走らせて、ようやく来た皆生。時間と金をかけ、仕事を調整し、ようやく参加にこぎつけた初ロング。それが何の結果も出せない結果になった・・・。
これだけの無力感と挫折は、しばらく味わっていなかった。
悶々と考えながら進んでいたら、今度は曲がるべきところをまっすぐ行ってしまい、道を間違えた。携帯もないし、当然地図も持っていない。しかも初めての街。
お客様の見送りに出ていたディーラーの販売員の方に道を聞いて、ようやく、ずっとまっすぐに走っていたと思ったコースが、途中で曲がり角があったことを思い出す。それだけ頭が朦朧としていたことだ。
スタート地点が近づくにつれ、続々とゴールを果たして戻ってくる選手たちとすれ違う。
どの選手の表情も晴れやかだ。一日かけて猛暑の中走り抜けた自分に誇りを感じているようないい顔をしている。
本当は自分もそういう顔をしたかった。
次第に日が傾き始めた午後6時半すぎ。ようやくメイン会場のスタート地点にたどり着いた。バッグの中身をひっくり返してみると、出てきた。アンクルバンドだ。これを忘れてしまったために途中失格―。
たった2か月の準備で初めて挑んだロングの大会。準備不足は承知の上で参加した大会は、ゴールに値する努力を払っていなかったという現実を示される大会だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月29日火曜日
2019年1月28日月曜日
薪ストーブのメリットとデメリット6 薪の値段は高い?
薪ストーブ歴10年の筆者が、雪国山形の住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第6弾。
今回のお題は、薪の値段は高いのか?安いのか?です。
目次
1.薪の値段を語る前に
2.薪の単位
3.薪の使用量
4.薪は高いのか安いのか?
1.薪の値段を語る前に
値段が高いか安いか。
これは、薪に限らずどんなものでもそうですが、その感じ方は「人による」としか言いようがありません。
年収1億円の人は安いと感じるかもしれませんし、年収500万の人は高いと感じるかもしれません。年収に関係なく、薪ストーブに価値を見出している人にとっては安いかもしれませんし、年収が10億円あったとしても薪ストーブに興味がない人にとって見れば、高いかもしれません。
なので、ここで言えることは事実のみです。それを高いと感じるか、安いと感じるかは皆さん次第です。
2.薪の単位
さて、薪の値段を言う前に、まず、薪はどのような単位で販売されているかをご説明します。通常、薪の販売で良く使われる単位は「棚」と「束」です。
このほかに、薪10kgとか20kgとか、重さで販売されているところもありますが、こちらはイメージが付きやすいと思いますので、棚と束について説明します。
このうち、束は70cmの針金で縛った薪の量です。針金で作った円の直径は22cmになります。山形をはじめ、秋に芋煮会をする東北地方では、ホームセンターやスーパーで販売している薪の量がちょうど一束くらいです。
薪の長さや業者さんにもよりますが、大体1束で500円前後で販売されています。
一方、棚は各地で量が違うことがあります。一般的なのは幅1.8m、高さ1.5mの空間に並べた薪の量です。薪の長さは色々ですが、30cmから45cmのものが主流です。
こちらは、筆者が薪ストーブを使い始めた10年前は、30cmの薪で1棚1万5000円でした。税別の所もあれば、税込のところもありました。
しかし、年々薪の価格は高騰していまして、現在では、1万8000円~2万円が相場になっています。
3.薪の使用量
価格がわかったといっても、「じゃあ、冬の間どのくらい使うの?」となりますよね。
薪の使用量については、どのくらいの時間使うかや、使用する期間、使っている薪ストーブの大きさ、家の断熱性能、家の大きさによって大きく異なるので、一概には言えません。
ただ、これから薪ストーブを導入しようと考えている方向けに、筆者の自宅の使用量をご説明します。ここを基準にご自身の自宅や生活スタイルから使用量をシミュレーションしてみてください。
筆者の自宅は、10年以上前に新築で建てまして、生活空間の建坪は40坪です。家の断熱性能は、2008年の竣工で断熱材はグラスウール16k。Q値はきちんと計算できていませんが、大体1.9くらいです。
このうち、ほぼ物置と化している筆者の書斎を除く家中を一台の薪ストーブで暖めています。34坪、68畳分の広さです。さらに、リビングダイニングは勾配天井になっていて、最も高いところは4.6mあります。かなりの大空間です。
このため、真冬日になる日も多い1月下旬から2月にかけては、薪ストーブは常に全力で働いています。
また、使用時間も朝6時に着火、最後に給薪するのは夜の11時~12時ごろです。昔は寝る直前にも朝暖かいようにと薪を入れてから寝ていたのですが、さすがに使用量が半端ないので最近は自粛しています。
使用する期間は、10月中旬から4月下旬まで。約6か月間です。
室温はストーブの置いてあるリビングで大体24度。リビングから最も遠い寝室で18度くらいです。これが、朝起きたときにはリビングで16度~18度、寝室で10度から12度くらいになっています。
こうした条件で朝から晩まで薪ストーブを使用していて、最初の頃は1シーズンに15棚くらい使っていました。それがだんだん薪の効率的な燃やし方や、一度暖めた部屋の温度を保つ方法などを学んできて、現在は12棚くらいです。
なお、我が家で使用している薪は35cmです。
今年から、妻が日中働きに出るようになったので(午前中のみのパート)、午前中燃やさなかった場合の量については、今シーズン終わってからご報告します。
4.薪は高いのか安いのか?
1シーズンに使用している薪の価格は、例えば12棚で現在の相場の平均1万9000円で計算すると、22万8000円です。
6か月間使うので、月の平均を出すと月3万8000円になります。
とはいえ、筆者は薪のほとんどを自分で作っているので、ほとんど出費はありません。
この価格、高いでしょうか?安いでしょうか?
たぶん、1日18時間エアコンで全館暖房した場合、電気代はもっとかかかもしれません。また、石油ストーブを使用して家中を同じ条件で暖めた場合、灯油の使用量は1シーズン2000Lくらいでしょうか。今の灯油の価格なら薪の方が高いかもしれません。
また、筆者は薪ストーブだけを使用していますが、薪ストーブと石油ストーブの併用、エアコンとの併用で薪の使用量を減らすことは十分に可能です。
平均的なサラリーマンである筆者の給料では、1シーズンに使う薪をすべて買ったとすると、薪は高いです。自分で作っているから何とかやれていますが・・・。ただ、他の暖房と比べて「割高ではない」と感じています。
皆さんはどう感じるでしょうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
今回のお題は、薪の値段は高いのか?安いのか?です。
目次
1.薪の値段を語る前に
2.薪の単位
3.薪の使用量
4.薪は高いのか安いのか?
1.薪の値段を語る前に
値段が高いか安いか。
これは、薪に限らずどんなものでもそうですが、その感じ方は「人による」としか言いようがありません。
年収1億円の人は安いと感じるかもしれませんし、年収500万の人は高いと感じるかもしれません。年収に関係なく、薪ストーブに価値を見出している人にとっては安いかもしれませんし、年収が10億円あったとしても薪ストーブに興味がない人にとって見れば、高いかもしれません。
なので、ここで言えることは事実のみです。それを高いと感じるか、安いと感じるかは皆さん次第です。
2.薪の単位
さて、薪の値段を言う前に、まず、薪はどのような単位で販売されているかをご説明します。通常、薪の販売で良く使われる単位は「棚」と「束」です。
このほかに、薪10kgとか20kgとか、重さで販売されているところもありますが、こちらはイメージが付きやすいと思いますので、棚と束について説明します。
このうち、束は70cmの針金で縛った薪の量です。針金で作った円の直径は22cmになります。山形をはじめ、秋に芋煮会をする東北地方では、ホームセンターやスーパーで販売している薪の量がちょうど一束くらいです。
薪の長さや業者さんにもよりますが、大体1束で500円前後で販売されています。
一方、棚は各地で量が違うことがあります。一般的なのは幅1.8m、高さ1.5mの空間に並べた薪の量です。薪の長さは色々ですが、30cmから45cmのものが主流です。
こちらは、筆者が薪ストーブを使い始めた10年前は、30cmの薪で1棚1万5000円でした。税別の所もあれば、税込のところもありました。
しかし、年々薪の価格は高騰していまして、現在では、1万8000円~2万円が相場になっています。
3.薪の使用量
価格がわかったといっても、「じゃあ、冬の間どのくらい使うの?」となりますよね。
薪の使用量については、どのくらいの時間使うかや、使用する期間、使っている薪ストーブの大きさ、家の断熱性能、家の大きさによって大きく異なるので、一概には言えません。
ただ、これから薪ストーブを導入しようと考えている方向けに、筆者の自宅の使用量をご説明します。ここを基準にご自身の自宅や生活スタイルから使用量をシミュレーションしてみてください。
筆者の自宅は、10年以上前に新築で建てまして、生活空間の建坪は40坪です。家の断熱性能は、2008年の竣工で断熱材はグラスウール16k。Q値はきちんと計算できていませんが、大体1.9くらいです。
このうち、ほぼ物置と化している筆者の書斎を除く家中を一台の薪ストーブで暖めています。34坪、68畳分の広さです。さらに、リビングダイニングは勾配天井になっていて、最も高いところは4.6mあります。かなりの大空間です。
このため、真冬日になる日も多い1月下旬から2月にかけては、薪ストーブは常に全力で働いています。
また、使用時間も朝6時に着火、最後に給薪するのは夜の11時~12時ごろです。昔は寝る直前にも朝暖かいようにと薪を入れてから寝ていたのですが、さすがに使用量が半端ないので最近は自粛しています。
使用する期間は、10月中旬から4月下旬まで。約6か月間です。
室温はストーブの置いてあるリビングで大体24度。リビングから最も遠い寝室で18度くらいです。これが、朝起きたときにはリビングで16度~18度、寝室で10度から12度くらいになっています。
こうした条件で朝から晩まで薪ストーブを使用していて、最初の頃は1シーズンに15棚くらい使っていました。それがだんだん薪の効率的な燃やし方や、一度暖めた部屋の温度を保つ方法などを学んできて、現在は12棚くらいです。
なお、我が家で使用している薪は35cmです。
今年から、妻が日中働きに出るようになったので(午前中のみのパート)、午前中燃やさなかった場合の量については、今シーズン終わってからご報告します。
4.薪は高いのか安いのか?
1シーズンに使用している薪の価格は、例えば12棚で現在の相場の平均1万9000円で計算すると、22万8000円です。
6か月間使うので、月の平均を出すと月3万8000円になります。
とはいえ、筆者は薪のほとんどを自分で作っているので、ほとんど出費はありません。
この価格、高いでしょうか?安いでしょうか?
たぶん、1日18時間エアコンで全館暖房した場合、電気代はもっとかかかもしれません。また、石油ストーブを使用して家中を同じ条件で暖めた場合、灯油の使用量は1シーズン2000Lくらいでしょうか。今の灯油の価格なら薪の方が高いかもしれません。
また、筆者は薪ストーブだけを使用していますが、薪ストーブと石油ストーブの併用、エアコンとの併用で薪の使用量を減らすことは十分に可能です。
平均的なサラリーマンである筆者の給料では、1シーズンに使う薪をすべて買ったとすると、薪は高いです。自分で作っているから何とかやれていますが・・・。ただ、他の暖房と比べて「割高ではない」と感じています。
皆さんはどう感じるでしょうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月25日金曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~㉑
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録㉑
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。エイドステーションで20分以上休憩を取り、ようやくレースを再開した。
ようやく再開したラン。
しかし、最初は体がどうなるかわからないので、まずは歩いた。200mほど歩く。そこで少しだけジョギングしてみる。1、2、3、4・・・。歩数を数えながら。100mほど走ったらまた歩く。体がどう反応するのか、心拍に以上はないか。
そうしたペースで10分ほどかけて、1kmを進んだ。この時点では体調に変化はない。よくもならないけど、悪くもならない。
そこで、もう少し走る距離を長くしてみる。200m走って、100m歩くペースに変更。少しだけペースも上がって次の1kmを9分で通過する。
この時点でも特に変化はない。ゆっくりなら走っても大丈夫そうだ。
休んでいたエイドを出てから20分ほどたって、ようやくずっと走り続けることにする。
でも、急激にはペースは上げない。ゆっくり、ゆっくり。走っているといっても、歩いていない程度のペースで進んでいく。次の1kmを8分ほどで通過。
そして、次のエイドに到着した。
スポーツドリンクを飲み、スイカを食べる。レモンはほおばるが塩はつけない。期待はせずに「氷をもらえますか?」と聞いたら、なんとここのエイドには大量にあった。それをビニール袋にもらって、首の後ろを冷やす。強烈に冷たい。
約1分そこで首を冷やした後、その氷を背中に流し込む。アウターの上から補給食を入れたベルトをしているので、氷は背中で止まっている。背中側と言ってもお腹まわりを冷やすのにはためらいがあったが、少しでも氷を体に触れさせたい。
最後に頭に氷水をかけてもらう。これは・・・すごい。一気に目が覚めた気がした。
3分あまり過ごした後、再び走り出す。さっきまでとペースは変えず。1km8分のペース。ゆっくりゆっくり。次の1kmは自然とペースが上がって7分30秒で通過。さらに次の1kmを7分ペースで進んでいたところで、次のエイドに到着した。
まだまだ頭には霞がかかっているような感じがあるが、心臓がバクバクするようなことはない。たぶん、もう大丈夫なんだろう。
エイドでの補給の仕方をルーティン化するべく、スポーツドリンクを一杯一気飲みした後、スイカ、レモンをほおばる。1個だけ塩をつける。そして頭に氷水。
ここでは1分ほどですぐに走り出した。ここからの1kmは7分丁度のペース。これならゴールまで行けるはずだ。
3時半にランをスタートして具合が悪くなったのが3時50分ごろ。4時過ぎにエイドについて20分を浪費。4時半から再び走り始め、次のエイドに着いたのが午後5時。この時点で6kmちょっと。残り36km。次のエイドに着いたのは午後5時20分過ぎ。残り33km。当初よりは厳しくなったが、1km7分のペースを保てば十分ゴールできる。
とにかく1km7分のペースを守ろう。そう思いながら走っていると少しずつ、頭の中の霞が取れてきた。回りが見えるようになってくる。信号待ちがあり、歩道橋を上って降りて、進路右側の歩道を走っていたのが左側の歩道を走ることになり・・・。前からは折り返してきた選手がやってきてすれ違う。ボロボロの自分とは全く違うハイペースだ。来年はこんなペースで走りたいなと思いながら、お互いに「ガンバ!」と声をかける。
特にペースは上げていないが、徐々に回復したおかげで元々の想定ペースに近づいていく。次の1kmを6分40秒で通過。このままいけば、1km6分のペースに戻れるかもしれない。
前向きな気持ちになったこの時、ふと足元を見た。そこで・・・気づいてしまった。
「あるべきものが無い!」
そう、左足につけていたアンクルベルトが見当たらない。これが無いとゴールできない!
頭が真っ白になった・・・。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。エイドステーションで20分以上休憩を取り、ようやくレースを再開した。
ようやく再開したラン。
しかし、最初は体がどうなるかわからないので、まずは歩いた。200mほど歩く。そこで少しだけジョギングしてみる。1、2、3、4・・・。歩数を数えながら。100mほど走ったらまた歩く。体がどう反応するのか、心拍に以上はないか。
そうしたペースで10分ほどかけて、1kmを進んだ。この時点では体調に変化はない。よくもならないけど、悪くもならない。
そこで、もう少し走る距離を長くしてみる。200m走って、100m歩くペースに変更。少しだけペースも上がって次の1kmを9分で通過する。
この時点でも特に変化はない。ゆっくりなら走っても大丈夫そうだ。
休んでいたエイドを出てから20分ほどたって、ようやくずっと走り続けることにする。
でも、急激にはペースは上げない。ゆっくり、ゆっくり。走っているといっても、歩いていない程度のペースで進んでいく。次の1kmを8分ほどで通過。
そして、次のエイドに到着した。
スポーツドリンクを飲み、スイカを食べる。レモンはほおばるが塩はつけない。期待はせずに「氷をもらえますか?」と聞いたら、なんとここのエイドには大量にあった。それをビニール袋にもらって、首の後ろを冷やす。強烈に冷たい。
約1分そこで首を冷やした後、その氷を背中に流し込む。アウターの上から補給食を入れたベルトをしているので、氷は背中で止まっている。背中側と言ってもお腹まわりを冷やすのにはためらいがあったが、少しでも氷を体に触れさせたい。
最後に頭に氷水をかけてもらう。これは・・・すごい。一気に目が覚めた気がした。
3分あまり過ごした後、再び走り出す。さっきまでとペースは変えず。1km8分のペース。ゆっくりゆっくり。次の1kmは自然とペースが上がって7分30秒で通過。さらに次の1kmを7分ペースで進んでいたところで、次のエイドに到着した。
まだまだ頭には霞がかかっているような感じがあるが、心臓がバクバクするようなことはない。たぶん、もう大丈夫なんだろう。
エイドでの補給の仕方をルーティン化するべく、スポーツドリンクを一杯一気飲みした後、スイカ、レモンをほおばる。1個だけ塩をつける。そして頭に氷水。
ここでは1分ほどですぐに走り出した。ここからの1kmは7分丁度のペース。これならゴールまで行けるはずだ。
3時半にランをスタートして具合が悪くなったのが3時50分ごろ。4時過ぎにエイドについて20分を浪費。4時半から再び走り始め、次のエイドに着いたのが午後5時。この時点で6kmちょっと。残り36km。次のエイドに着いたのは午後5時20分過ぎ。残り33km。当初よりは厳しくなったが、1km7分のペースを保てば十分ゴールできる。
とにかく1km7分のペースを守ろう。そう思いながら走っていると少しずつ、頭の中の霞が取れてきた。回りが見えるようになってくる。信号待ちがあり、歩道橋を上って降りて、進路右側の歩道を走っていたのが左側の歩道を走ることになり・・・。前からは折り返してきた選手がやってきてすれ違う。ボロボロの自分とは全く違うハイペースだ。来年はこんなペースで走りたいなと思いながら、お互いに「ガンバ!」と声をかける。
特にペースは上げていないが、徐々に回復したおかげで元々の想定ペースに近づいていく。次の1kmを6分40秒で通過。このままいけば、1km6分のペースに戻れるかもしれない。
前向きな気持ちになったこの時、ふと足元を見た。そこで・・・気づいてしまった。
「あるべきものが無い!」
そう、左足につけていたアンクルベルトが見当たらない。これが無いとゴールできない!
頭が真っ白になった・・・。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月24日木曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑳
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑳
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
順調な滑り出しを迎えたラン。しかし、スタートからたった2kmでレース中最大のトラブルが発生する。フラフラになりながら、ようやくエイドにたどり着いたが・・・。
ようやくエイドステーションにたどり着いた。すごいハイテンションのボランティアの女子高校生が、「私苗字一緒なんですよ!遠くから来たんですね!頑張って!」と話しかけてくれる。
どうやら、ゼッケンから選手の名前を調べ、一人ひとりに声をかけているみたい。とっても素敵な対応。そして、今思い出しても心が暖かくなる声だった。
・・・それなのに、その時の僕は同じテンションで返答できる余裕もなく「水、水、ください。それと氷。ごめん、具合悪くてお話できない・・・」とぼそぼそと返すだけだった。今思い出しても心が冷たくなる。
それでも、「はい、どうぞ!」と言ってお水を差しだしてくれ、さらに、「氷だって。みんな、氷どこにある?」とまわりに聞いてくれる。そして、その声を受けたほかの高校生たちも一斉に探してくれる。なんて素敵なボランティア、運営なんだ―。
しかし、残念なお知らせが。これまで訪れた多くの選手に配ったため、氷はもうないという。板氷で冷やしていた水もすでに氷が解けて若干冷たい程度だった。
仕方がないが、とりあえずできることをする。電解質の多いスポーツドリンクをプラスチックカップ2杯ほど一気飲み。これがいいかはわからないが、体は水分を求めていた。
そしてビニール袋に一番冷たい水を入れてもらい、エイドステーションの奥の日陰に。ここで座り込み、首の後ろにビニールに入った水を置いて体を冷やす。ついでにその水をいくつか垂らして体にかけた。
こんなくらいではまだ全然だが、今度は大人のボランティアの方が話しかけてくれた。症状を伝えるとやはり熱中症と判断したのか、同じように冷たい水をビニールに入れたものを二つ作ってくれた。これを両脇の下に挟んでしばらくじっとする。
まだまだ心臓のバクバクが止まらない。併せてこのままではゴールできないんじゃないかとの不安が大きくなる。どうしよう。どうしよう。体は動かないが内心はいてもたってもいられなかった。
そうしているうちに、男性のボランティアが氷を見つけたと言って持ってきてくれた。どこかの容器の底に少しだけ残っていたらしい。探してくれた気持ちがありがたい。
早速その氷をビニールに入れて両脇に挟む。先ほどまでの水とは全く違って冷たい。すごく冷たい。当たり前だけど・・・。
そうしてしばらく動かずにいた。5分ほどは何もできずにじっとする。すると少しだけ話ができるようには回復してきた。ボランティアの方と話をする。リタイアするか聞かれるが、もう少し回復させて何とか先に進みたいと告げる。
ボランティアの男性からは、残り2時間の段階で折り返しポイントを通過できないと回収されると伝えられる。今の時間は午後4時20分。午後7時までに17km先の折り返しポイントに行かないといけない。しかもその後はハーフのベストに近いペースで走らないとゴールにたどり着けない計算だ。
さすがにそれは無理なので、何とかもっと早く行けるか考える。まず思いつくのは、準備のために着込みすぎていたこと。上半身はインナー+腰サポーター+アウターを着ている。これでは放熱がうまくいかない。そのため、インナーは脱いで捨てることにした。
さらに5分氷をあててじっとする。
すると、またもう少し回復してきた。
着替えくらいはできる元気が出てきたので、インナーを脱いで走りだす準備をする。汗と水で濡れたおっさんの下着なんて汚くてごめんなさいと謝りながら、ごみ用のビニール袋に捨てさせてもらった。
1枚脱ぐとやはり涼しい。ここでさらに氷が追加された。またどこかから探してもらったみたい。本当に、本当にありがたい。
この氷を首の後ろに置いてさらに5分・・・。
ようやく、歩くことくらいならできるんじゃないかというくらいに回復してきたみたいだ。エイドステーションに来てから約20分が経過した。本当はもっと回復するまで休むべきなんだろうが、ゴールできないことが不安なので先に進むことにする。
途中で倒れることだけはできないので、自分の体の具合を確かめながら、決して無理をしないことに意識を集中させないといけない。
先ほどもらった氷は首の後ろに置いたまま、最後にスポーツドリンクを一杯飲み、さらに水を頭にかけてもらい、エイドステーションから一歩踏み出した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
順調な滑り出しを迎えたラン。しかし、スタートからたった2kmでレース中最大のトラブルが発生する。フラフラになりながら、ようやくエイドにたどり着いたが・・・。
ようやくエイドステーションにたどり着いた。すごいハイテンションのボランティアの女子高校生が、「私苗字一緒なんですよ!遠くから来たんですね!頑張って!」と話しかけてくれる。
どうやら、ゼッケンから選手の名前を調べ、一人ひとりに声をかけているみたい。とっても素敵な対応。そして、今思い出しても心が暖かくなる声だった。
・・・それなのに、その時の僕は同じテンションで返答できる余裕もなく「水、水、ください。それと氷。ごめん、具合悪くてお話できない・・・」とぼそぼそと返すだけだった。今思い出しても心が冷たくなる。
それでも、「はい、どうぞ!」と言ってお水を差しだしてくれ、さらに、「氷だって。みんな、氷どこにある?」とまわりに聞いてくれる。そして、その声を受けたほかの高校生たちも一斉に探してくれる。なんて素敵なボランティア、運営なんだ―。
しかし、残念なお知らせが。これまで訪れた多くの選手に配ったため、氷はもうないという。板氷で冷やしていた水もすでに氷が解けて若干冷たい程度だった。
仕方がないが、とりあえずできることをする。電解質の多いスポーツドリンクをプラスチックカップ2杯ほど一気飲み。これがいいかはわからないが、体は水分を求めていた。
そしてビニール袋に一番冷たい水を入れてもらい、エイドステーションの奥の日陰に。ここで座り込み、首の後ろにビニールに入った水を置いて体を冷やす。ついでにその水をいくつか垂らして体にかけた。
こんなくらいではまだ全然だが、今度は大人のボランティアの方が話しかけてくれた。症状を伝えるとやはり熱中症と判断したのか、同じように冷たい水をビニールに入れたものを二つ作ってくれた。これを両脇の下に挟んでしばらくじっとする。
まだまだ心臓のバクバクが止まらない。併せてこのままではゴールできないんじゃないかとの不安が大きくなる。どうしよう。どうしよう。体は動かないが内心はいてもたってもいられなかった。
そうしているうちに、男性のボランティアが氷を見つけたと言って持ってきてくれた。どこかの容器の底に少しだけ残っていたらしい。探してくれた気持ちがありがたい。
早速その氷をビニールに入れて両脇に挟む。先ほどまでの水とは全く違って冷たい。すごく冷たい。当たり前だけど・・・。
そうしてしばらく動かずにいた。5分ほどは何もできずにじっとする。すると少しだけ話ができるようには回復してきた。ボランティアの方と話をする。リタイアするか聞かれるが、もう少し回復させて何とか先に進みたいと告げる。
ボランティアの男性からは、残り2時間の段階で折り返しポイントを通過できないと回収されると伝えられる。今の時間は午後4時20分。午後7時までに17km先の折り返しポイントに行かないといけない。しかもその後はハーフのベストに近いペースで走らないとゴールにたどり着けない計算だ。
さすがにそれは無理なので、何とかもっと早く行けるか考える。まず思いつくのは、準備のために着込みすぎていたこと。上半身はインナー+腰サポーター+アウターを着ている。これでは放熱がうまくいかない。そのため、インナーは脱いで捨てることにした。
さらに5分氷をあててじっとする。
すると、またもう少し回復してきた。
着替えくらいはできる元気が出てきたので、インナーを脱いで走りだす準備をする。汗と水で濡れたおっさんの下着なんて汚くてごめんなさいと謝りながら、ごみ用のビニール袋に捨てさせてもらった。
1枚脱ぐとやはり涼しい。ここでさらに氷が追加された。またどこかから探してもらったみたい。本当に、本当にありがたい。
この氷を首の後ろに置いてさらに5分・・・。
ようやく、歩くことくらいならできるんじゃないかというくらいに回復してきたみたいだ。エイドステーションに来てから約20分が経過した。本当はもっと回復するまで休むべきなんだろうが、ゴールできないことが不安なので先に進むことにする。
途中で倒れることだけはできないので、自分の体の具合を確かめながら、決して無理をしないことに意識を集中させないといけない。
先ほどもらった氷は首の後ろに置いたまま、最後にスポーツドリンクを一杯飲み、さらに水を頭にかけてもらい、エイドステーションから一歩踏み出した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月23日水曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑲
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑲
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
予定の1時間遅れでバイクフィニッシュするも、残り6時間余り。最後のランパートが始まった。
皆生大会のトランジットには、タイム計測のチェックポイントが無い。このため、バイクのタイムは、バイクを終えてトランジットに入ったタイミングで計測。トランジットも含め、ゴールまでの時間がランパートのタイムとなる。
このため、トランジットを抜けてランコースに入る時には、何もチェックされず。ただ、トランジットを抜けたところには、ランコース最初のエイドステーションがあった。
これは助かる!バイクパートの最後をほとんど給水できず、さらに10分以上トランジットでランの準備をしてしまった。30分ほどは水分摂取ができていない時間帯が発生したことになる。
ここではボトルではなく、プラスチックのカップに飲み物が入っている。コーラとスポーツドリンクを一気飲みする。さらに水を頭にかけて、塩をつけたレモンをほおばる。1つ。2つ・・・。
しかし、皆が塩レモンを食べているため、塩が濡れて固まってしまい、ほとんど取れない。それを見かねたボランティアの方が、新たに塩を追加してくれた。これをたっぷりとってレモンと一緒に最後に一つを口に運んだ。
後から考えると、これがいけなかった・・・。
エイドステーションを抜けて走り出す。あれ、体が軽い。
実際には8時間以上経過しているので疲れているんだけれど、思っていたより体が軽い。
通常、バイクパートからランパートに移ると、自分の体じゃないみたいに重く感じるもので、その感覚をなくすためにもクロストレーニングをしているんだけど、本当に軽かった。
たぶん、トランジットに時間がかかっていたので多少なりとも疲れが取れたこと、また、キネシオテープを貼りまくった効果が出ていたんだと思う。
これならいけるんじゃない?すごく前向きな気持ちになりながらも、慎重に慎重にと言い聞かせ、とりあえず最初の1kmはキロ7分で通過。海岸沿いから町場の方に曲がって大通りに向う。2km通過もキロ7分ペース。
特につらくない。これならいけそう。徐々にペースを上げていこうと思ったその時、それは突然来た―。
急に気持ちが悪くなる。吐き気がする。何より喉が渇いた。
なんでだ?ついさっき飲んだばっかりじゃないか。
しかし、心臓の音が急に大きく聞こえるようになる。早鐘のようにバクバクバクバクと言っている。とてもじゃないけど走っていられない。
なんだ?なんだ?なんだ?
急激な体の変化にパニックになる。さっき抜いて行った女性ランナーから抜き返される。
それでも体に力が入らない。
真っ白になった頭で最初に思い浮かんだのが、熱中症。
自分は今まで熱中症になった経験がないので、話に聞いた情報しかないが、どうやら間違いなさそう。とにかく喉が渇いた―。
交差点に立っているボランティアの方に次のエイドはどこにあるかを聞く。
あと1kmほど先だという。
遠い。
今の自分にとっては100m先でも遠いのに、1km。歩いたら10分以上かかる。
どうする?
でもここで座り込んでも何もできない。熱中症ならエイドで体を冷やさないと大変なことになるかもしれない。
仕方ない。とにかく歩く。一歩一歩足を進める。まさか、さっきまであれほど好調に進んでいたのに。ああ、とにかく喉が渇いた。
ひたすら、喉の渇きに耐え、バクバクいう心臓の音に不安を募らせながら歩いた。
今はタイムを気にする時ではない。何とかエイドステーションまでたどり着いて立て直さないといけない。
原因を考える―。考える・・・考える・・・塩だ。
ランパートに入った時に舐めた塩。レモンと一緒に大量に摂取してしまった塩。これが対内の塩分濃度を急激に狂わせたのに違いない。
それまで、バイクパートでは、大量の汗をかいて、その汗が走っているときの風で乾かされることで体温が下がっていた。そのため、36度を超える灼熱のレースでも熱中症にならずにすんでいた。
しかし、ランでは時速10kmも出るか出ないかのペースでしか走れない。そのため、熱の発散がうまくいかなくなった。
さらに、塩をなめすぎたため、体内の塩分濃度が上昇。当然体は均衡を保とうとして、体内の水分量の減少を抑えようとする。つまり、汗をかかなくなる。
良く、塩分の取りすぎはむくみにつながるという話を聞くと思う。これは、高くなった塩分濃度を何とか平準化しようと体が水分を貯めようとするからだ。
汗が出ない。さらに風に当たらない。こうした二つの原因から、体温が急激に上昇―。
その結果の熱中症症状だ。
この分析はほぼ正しいと思う。
レース後、循環器と高血圧を専門にしている医者の友人に、当時の状況と分析を伝えたところ、概ね同じ意見だった。
分析はできたが、対策は取れていない。
喉が乾いているということは、体内の水分量が足りていないということ。何か飲んで塩分濃度を下げ、汗が出るようにする。そして体温を下げる。
とにかく、体温を下げないことには何も始まらない。そのためには、エイドステーションに何とかしてたどり着かないと。
遠くにボランティアの人が何人か集まっているのが見えてきた。あれがエイドステーションか・・・。
見えているのになんだかよく見えない。まっすぐ歩いているはずなのに、進路右側にある家の壁にぶつかりそうになる。
あと200m。あと100m。
まさにふらふらの状態で、何とか何とか、エイドにたどり着いた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
予定の1時間遅れでバイクフィニッシュするも、残り6時間余り。最後のランパートが始まった。
皆生大会のトランジットには、タイム計測のチェックポイントが無い。このため、バイクのタイムは、バイクを終えてトランジットに入ったタイミングで計測。トランジットも含め、ゴールまでの時間がランパートのタイムとなる。
このため、トランジットを抜けてランコースに入る時には、何もチェックされず。ただ、トランジットを抜けたところには、ランコース最初のエイドステーションがあった。
これは助かる!バイクパートの最後をほとんど給水できず、さらに10分以上トランジットでランの準備をしてしまった。30分ほどは水分摂取ができていない時間帯が発生したことになる。
ここではボトルではなく、プラスチックのカップに飲み物が入っている。コーラとスポーツドリンクを一気飲みする。さらに水を頭にかけて、塩をつけたレモンをほおばる。1つ。2つ・・・。
しかし、皆が塩レモンを食べているため、塩が濡れて固まってしまい、ほとんど取れない。それを見かねたボランティアの方が、新たに塩を追加してくれた。これをたっぷりとってレモンと一緒に最後に一つを口に運んだ。
後から考えると、これがいけなかった・・・。
エイドステーションを抜けて走り出す。あれ、体が軽い。
実際には8時間以上経過しているので疲れているんだけれど、思っていたより体が軽い。
通常、バイクパートからランパートに移ると、自分の体じゃないみたいに重く感じるもので、その感覚をなくすためにもクロストレーニングをしているんだけど、本当に軽かった。
たぶん、トランジットに時間がかかっていたので多少なりとも疲れが取れたこと、また、キネシオテープを貼りまくった効果が出ていたんだと思う。
これならいけるんじゃない?すごく前向きな気持ちになりながらも、慎重に慎重にと言い聞かせ、とりあえず最初の1kmはキロ7分で通過。海岸沿いから町場の方に曲がって大通りに向う。2km通過もキロ7分ペース。
特につらくない。これならいけそう。徐々にペースを上げていこうと思ったその時、それは突然来た―。
急に気持ちが悪くなる。吐き気がする。何より喉が渇いた。
なんでだ?ついさっき飲んだばっかりじゃないか。
しかし、心臓の音が急に大きく聞こえるようになる。早鐘のようにバクバクバクバクと言っている。とてもじゃないけど走っていられない。
なんだ?なんだ?なんだ?
急激な体の変化にパニックになる。さっき抜いて行った女性ランナーから抜き返される。
それでも体に力が入らない。
真っ白になった頭で最初に思い浮かんだのが、熱中症。
自分は今まで熱中症になった経験がないので、話に聞いた情報しかないが、どうやら間違いなさそう。とにかく喉が渇いた―。
交差点に立っているボランティアの方に次のエイドはどこにあるかを聞く。
あと1kmほど先だという。
遠い。
今の自分にとっては100m先でも遠いのに、1km。歩いたら10分以上かかる。
どうする?
でもここで座り込んでも何もできない。熱中症ならエイドで体を冷やさないと大変なことになるかもしれない。
仕方ない。とにかく歩く。一歩一歩足を進める。まさか、さっきまであれほど好調に進んでいたのに。ああ、とにかく喉が渇いた。
ひたすら、喉の渇きに耐え、バクバクいう心臓の音に不安を募らせながら歩いた。
今はタイムを気にする時ではない。何とかエイドステーションまでたどり着いて立て直さないといけない。
原因を考える―。考える・・・考える・・・塩だ。
ランパートに入った時に舐めた塩。レモンと一緒に大量に摂取してしまった塩。これが対内の塩分濃度を急激に狂わせたのに違いない。
それまで、バイクパートでは、大量の汗をかいて、その汗が走っているときの風で乾かされることで体温が下がっていた。そのため、36度を超える灼熱のレースでも熱中症にならずにすんでいた。
しかし、ランでは時速10kmも出るか出ないかのペースでしか走れない。そのため、熱の発散がうまくいかなくなった。
さらに、塩をなめすぎたため、体内の塩分濃度が上昇。当然体は均衡を保とうとして、体内の水分量の減少を抑えようとする。つまり、汗をかかなくなる。
良く、塩分の取りすぎはむくみにつながるという話を聞くと思う。これは、高くなった塩分濃度を何とか平準化しようと体が水分を貯めようとするからだ。
汗が出ない。さらに風に当たらない。こうした二つの原因から、体温が急激に上昇―。
その結果の熱中症症状だ。
この分析はほぼ正しいと思う。
レース後、循環器と高血圧を専門にしている医者の友人に、当時の状況と分析を伝えたところ、概ね同じ意見だった。
分析はできたが、対策は取れていない。
喉が乾いているということは、体内の水分量が足りていないということ。何か飲んで塩分濃度を下げ、汗が出るようにする。そして体温を下げる。
とにかく、体温を下げないことには何も始まらない。そのためには、エイドステーションに何とかしてたどり着かないと。
遠くにボランティアの人が何人か集まっているのが見えてきた。あれがエイドステーションか・・・。
見えているのになんだかよく見えない。まっすぐ歩いているはずなのに、進路右側にある家の壁にぶつかりそうになる。
あと200m。あと100m。
まさにふらふらの状態で、何とか何とか、エイドにたどり着いた。
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2019年1月21日月曜日
薪ストーブのメリットとデメリット5
薪ストーブ歴10年の筆者が、住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第5弾。
今回は、上手な薪の燃やし方についてです。
目次。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
2.薪の燃焼について知ろう。
3.空気の通り道を意識しよう。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
上手な薪の燃やし方を知る前に、まずは、自宅の薪の燃やし方が良いか悪いかを知りましょう。筆者はこれまで薪ストーブを使用しているお宅を数多く見てきましたが、薪ストーブ歴20年とかいう超ベテランの方でも、きちんと薪が燃えていない家は結構あってびっくりします。
今現在も薪ストーブを使っているという方はもちろん、薪ストーブを導入したいと考えていて、現在検討中の方も是非薪の上手な燃やし方を一緒に学んでいきましょう。
さて、現在薪ストーブを使っている方で、薪の燃やし方が上手なのか下手なのかを知る方法は簡単です。
ガラスが全くなく、全方位鋳物でできている30年以上前の古い薪ストーブならいざ知らず、現代の薪ストーブには炎を見るための耐熱ガラスがついています。きちんとしたメーカーの純正品(10万円以上の薪ストーブ)はもちろん、ホームセンターで1万~3万円くらいで売っている、二次燃焼機能がついていないストーブでもついています。
このガラスが真っ黒になっていて、炎がなかなか見えないという方、アウトです。さらに、1日使っただけでガラスが真っ黒になるという方は、煙突から出る可燃性ガスの臭いで近所の方とトラブルになる可能性が非常に高くなりますし、煙道火災の危険性も極めて高くなりますので、ぜひ注意してください。
2.薪の燃焼について知ろう。
では、どのように燃やしたら、薪はきちんと燃えてくれるのでしょうか。それをマスターするためには、まず薪が燃える仕組み、薪の燃焼について知る必要があります。
前回と一部重複しますが、薪は熱が加わるとまず薪の中の水分が蒸発します。乾燥が十分でない薪は、この時点でシューシューと音がします。さらに熱が加えられると、薪の中から可燃性ガスが噴出してきます。大量の煙が出るのはこの段階です。
新しい薪を入れた後、5分くらいした時に薪をよく見てください。薪の断面からガスバーナーのように、炎が噴き出しているところが見つけられるはずです。
この可燃性ガスは、非常に臭いです。山形弁?で「いぶ臭い」とも言いますが、何とも言えない臭いがします。キャンプファイヤーの炎を水をかけて消した後の臭いとか、火事の現場でよく嗅ぐ臭いです。
その後、水分や可燃性ガスが抜けたあとの薪は次第に燠になっていきます。いわゆる炭の状態ですね。この段階になると煙突からほとんど煙は出ません。最も効率よく燃えているのがこの状態です。
3.空気の通り道を意識しよう。
では、どのようにして燃やせばうまく燠ができて効率よく燃焼できるのでしょうか。下記に我が家の着火~安定燃焼までの流れを記します。
まず、着火ですが、我が家はベスタ―という着火剤を使っています。新聞紙を使っていた時代もあったのですが、こちらの方が灰が煙突から飛ぶこともないですし、何より安価です。これを2~3センチにちぎってケチケチと使っています。
この上に木端を置きます。よく使うのは薪を割った時に出る木端です。さらにその上に剪定した枝を長さをそろえて切っておいたものを5本~10本ほど並べます。この本数は、次に置く薪の太さが細ければ少なく、太ければ多くです。
その上に置く薪はバッテンで置くのが重要なポイントです。直角にクロスさせて置きます。それも手前側にハの字のすそ広がりが来るようにして、奥の方4分の1の長さのあたりで薪がクロスするように置きます。さらに、それぞれにクロスするように、ストーブの中が薪でいっぱいになってもう置けない・・・というまでひたすら薪を詰め込みます。
最初に組み上げる段階で、ここまでたくさん薪を入れない人がたくさんいます。太薪を2本くらいしか入れないとか。この場合、最初の太薪がきちんと燃焼してくれません。なぜか。それは、炉内の温度が上がらないからです。たくさんの薪を入れると、早い段階から炉内の温度が高温になります。そうすると、可燃性ガスにきちんと火が付きます。ボーボー燃えている状態ですね。可燃性ガスは、可燃性とか言うくせに温度が低いと全然燃えてくれません。一定以上の温度が必要となります。
燃えないガスはどうなるかというと、煙突から外に逃げてしまいます。せっかく薪を燃料に炎という形で熱を取り出そうとしているのに、温度が低いせいで逃がすのは勿体ないです。さらに、このガスは臭いので、うまく燃えないまま煙突から出し続けると、ご近所さんの心象に非常に悪くなります。外で洗濯物乾かしていたら、洗濯物に確実に臭いが移りますしね。
さて、薪をクロスさせて置いていくのは、空気の通り道を作るためです。火は酸素が足りないと燃えてくれません。同じ向きに薪を並べてしまうと、薪と薪の間を空気が通らなくなってしまうので、うまく燃えません。そのためにクロスにして空気の通り道を確保してあげます。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
最初に炉内にたくさんの薪を置くこと、それもそれぞれをクロスさせるように並べることが、効率的な燃焼の第一のポイントです。着火直後は必ず煙が出ます。煙には可燃性ガスが含まれるので臭いがします。
メーカー品の薪ストーブについている二次燃焼機能や触媒は、この煙を二次燃焼によって再度燃焼させて効率よく熱を生み出すと共に、煙を出さないことを目的につけられています。
しかし、そうした機能は「炉内が高温」にならないと本来の性能を発揮できません。炉内が高温になるには、最初にたくさんの薪を燃やす必要があります。
こうした燃やし方をすることで、正面のガラスはいつもきれいなままに保たれますし、ご近所さんとのトラブルも未然に防げます。
ちなみに、我が家のガラスは1シーズン一度も拭かなくても大丈夫です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
今回は、上手な薪の燃やし方についてです。
目次。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
2.薪の燃焼について知ろう。
3.空気の通り道を意識しよう。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
上手な薪の燃やし方を知る前に、まずは、自宅の薪の燃やし方が良いか悪いかを知りましょう。筆者はこれまで薪ストーブを使用しているお宅を数多く見てきましたが、薪ストーブ歴20年とかいう超ベテランの方でも、きちんと薪が燃えていない家は結構あってびっくりします。
今現在も薪ストーブを使っているという方はもちろん、薪ストーブを導入したいと考えていて、現在検討中の方も是非薪の上手な燃やし方を一緒に学んでいきましょう。
さて、現在薪ストーブを使っている方で、薪の燃やし方が上手なのか下手なのかを知る方法は簡単です。
ガラスが全くなく、全方位鋳物でできている30年以上前の古い薪ストーブならいざ知らず、現代の薪ストーブには炎を見るための耐熱ガラスがついています。きちんとしたメーカーの純正品(10万円以上の薪ストーブ)はもちろん、ホームセンターで1万~3万円くらいで売っている、二次燃焼機能がついていないストーブでもついています。
このガラスが真っ黒になっていて、炎がなかなか見えないという方、アウトです。さらに、1日使っただけでガラスが真っ黒になるという方は、煙突から出る可燃性ガスの臭いで近所の方とトラブルになる可能性が非常に高くなりますし、煙道火災の危険性も極めて高くなりますので、ぜひ注意してください。
2.薪の燃焼について知ろう。
では、どのように燃やしたら、薪はきちんと燃えてくれるのでしょうか。それをマスターするためには、まず薪が燃える仕組み、薪の燃焼について知る必要があります。
前回と一部重複しますが、薪は熱が加わるとまず薪の中の水分が蒸発します。乾燥が十分でない薪は、この時点でシューシューと音がします。さらに熱が加えられると、薪の中から可燃性ガスが噴出してきます。大量の煙が出るのはこの段階です。
新しい薪を入れた後、5分くらいした時に薪をよく見てください。薪の断面からガスバーナーのように、炎が噴き出しているところが見つけられるはずです。
この可燃性ガスは、非常に臭いです。山形弁?で「いぶ臭い」とも言いますが、何とも言えない臭いがします。キャンプファイヤーの炎を水をかけて消した後の臭いとか、火事の現場でよく嗅ぐ臭いです。
その後、水分や可燃性ガスが抜けたあとの薪は次第に燠になっていきます。いわゆる炭の状態ですね。この段階になると煙突からほとんど煙は出ません。最も効率よく燃えているのがこの状態です。
3.空気の通り道を意識しよう。
では、どのようにして燃やせばうまく燠ができて効率よく燃焼できるのでしょうか。下記に我が家の着火~安定燃焼までの流れを記します。
まず、着火ですが、我が家はベスタ―という着火剤を使っています。新聞紙を使っていた時代もあったのですが、こちらの方が灰が煙突から飛ぶこともないですし、何より安価です。これを2~3センチにちぎってケチケチと使っています。
この上に木端を置きます。よく使うのは薪を割った時に出る木端です。さらにその上に剪定した枝を長さをそろえて切っておいたものを5本~10本ほど並べます。この本数は、次に置く薪の太さが細ければ少なく、太ければ多くです。
その上に置く薪はバッテンで置くのが重要なポイントです。直角にクロスさせて置きます。それも手前側にハの字のすそ広がりが来るようにして、奥の方4分の1の長さのあたりで薪がクロスするように置きます。さらに、それぞれにクロスするように、ストーブの中が薪でいっぱいになってもう置けない・・・というまでひたすら薪を詰め込みます。
最初に組み上げる段階で、ここまでたくさん薪を入れない人がたくさんいます。太薪を2本くらいしか入れないとか。この場合、最初の太薪がきちんと燃焼してくれません。なぜか。それは、炉内の温度が上がらないからです。たくさんの薪を入れると、早い段階から炉内の温度が高温になります。そうすると、可燃性ガスにきちんと火が付きます。ボーボー燃えている状態ですね。可燃性ガスは、可燃性とか言うくせに温度が低いと全然燃えてくれません。一定以上の温度が必要となります。
燃えないガスはどうなるかというと、煙突から外に逃げてしまいます。せっかく薪を燃料に炎という形で熱を取り出そうとしているのに、温度が低いせいで逃がすのは勿体ないです。さらに、このガスは臭いので、うまく燃えないまま煙突から出し続けると、ご近所さんの心象に非常に悪くなります。外で洗濯物乾かしていたら、洗濯物に確実に臭いが移りますしね。
さて、薪をクロスさせて置いていくのは、空気の通り道を作るためです。火は酸素が足りないと燃えてくれません。同じ向きに薪を並べてしまうと、薪と薪の間を空気が通らなくなってしまうので、うまく燃えません。そのためにクロスにして空気の通り道を確保してあげます。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
最初に炉内にたくさんの薪を置くこと、それもそれぞれをクロスさせるように並べることが、効率的な燃焼の第一のポイントです。着火直後は必ず煙が出ます。煙には可燃性ガスが含まれるので臭いがします。
メーカー品の薪ストーブについている二次燃焼機能や触媒は、この煙を二次燃焼によって再度燃焼させて効率よく熱を生み出すと共に、煙を出さないことを目的につけられています。
しかし、そうした機能は「炉内が高温」にならないと本来の性能を発揮できません。炉内が高温になるには、最初にたくさんの薪を燃やす必要があります。
こうした燃やし方をすることで、正面のガラスはいつもきれいなままに保たれますし、ご近所さんとのトラブルも未然に防げます。
ちなみに、我が家のガラスは1シーズン一度も拭かなくても大丈夫です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月20日日曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑱
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑱
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
当初見込んでいたペースでは全然走れず、予定の1時間遅れでバイクフィニッシュした。しかも、遅れと暑さはトランジットで致命的なミスを誘発した―。
当初予定よりも1時間遅れでバイクフィニッシュ。それでもバイクでは結構順位を上げていた。スイムを上がった時点では、後ろに20人くらいしかいなかったが、バイクパートで100人以上を抜くことができ、700位台まで到達(低レベルの話だけど・・・)。
広いトランジットエリアながら、迷うことなく自分のバイクラックを見つけることができた。バイクをラックにかけヘルメットを脱ぐ。バイクシューズからランシューズに履き替えて着替え用のテントへ。
なんといっても初めてのフルマラソン。頭をよぎるのは初めて出場したハーフで、18kmを過ぎた時点で左の膝が痛くなり、残り3kmを30分以上かけてゴールした苦い記憶。
そうならないように、キネシオテープで厳重にテーピングを施すことにしていた。
テープを貼るのは、足裏の豆対策とアーチを確保するための1枚。ちょうど土踏まずの位置に左右1枚ずつ貼る。次いでかかとからアキレス腱、ふくらはぎに伸びるように1枚。さらにアーチをしっかりとさせるために、8の字を描くように足の裏からアキレス腱の上、ふくらはぎにかけて貼った。アンクルバンドが邪魔になるので一度外す。
このほか、膝の痛みを予防するために、大腿四頭筋の内側と外側から、膝の皿に沿ってふくらはぎに到達するように2枚。足の表と裏のバランスを取るために、ひざ裏からおしりにかけて、大体二頭筋に1枚。
合わせて片足6枚ずつテーピングを施した。
テープは前日にキチンと長さをそろえて切っておいたもの。ただ、暑さで朦朧としてしまい、間違ったところに貼ってしまってはいけないと、テープにそれぞれ右の1枚目はr-1、2枚目はr-2などと番号をふっていった。
これが正解だった。普段なら、長さを見ただけで絶対に間違えないテーピング。なのに、どれがどこに貼るものだったのか、まったくわからない。なんだか、酒に酔っているのに自分は素面だと思い込んでいるような状態。正直、ここまで頭が働かなくなるとは思っていなかった。
真夏の大会で、8時間以上ぶっ続けで動き続けるとこうなるということも非常に大きな発見。これからロングの大会に初めて出ようという人は、こういう状況も想定して準備をすることをお勧めします。
番号に沿って1枚1枚丁寧に張っていく。しかも、汗で取れてしまわないよう、しっかりと粘着スプレーを吹きつけながら作業した。僕は汗を大量にかく上、足が(足だけでなく全身が)毛深い方なので、テープが簡単にはがれてしまう。そこで、山形のスポーツ用品店の店頭ではなかなか売っていない粘着テープをアマゾンで購入し、持ってきていたのだ。
約10分かけてテーピング終了。念押しのためロングタイツもはく。これでほぼほぼはがれる心配はないだろう。最後にニプレス替わりに乳首にも5センチほどに切ったテープを貼りつける。
おっさんの乳首なんて汚い話ですみません。でも、女性と違って男性はブラをしているわけでないので、結構すれるんです。オリンピックディスタンスの10kmのランでも、何のケアもしていないとゴールの時に血だらけになっていたこともあるくらい。ワセリンをしっかり塗ってはいるものの、それだけでは心配で、張り付けた。
そしてもう一つの懸念が腰の痛み。これに備えるため、腰のサポーターも巻く。サポーターも汗でこすれたりしないよう、インナーウェアを着た上でという念の入れよう。
ずいぶんな重装備になってしまった。それもこれもすべて、初めての距離に対する不安や恐怖を追い払おうとして行ったもの。こうした準備自体は間違ってはいないことなんだけど、結果としてはこの作業が最悪の事態を引き起こすことになった。
全ての準備を終え、着替えテントの中に散乱していたキネシオののり紙やらバイクパンツやらを袋にいっしょくたにしまう。その時、薄い横幕ごしに隣の女子用テントから、「あと6時間もあるからゴールは楽勝よ」なんて声が聞こえてきた。どうやら同じくらいのタイムでランに移行しようとする選手らしい。「皆生のランはアップダウンがほとんどないからもう大丈夫よ」なんて声も聞こえる。
どうやら過去にも皆生の大会に出場していた人らしい。
そして、そうした経験に裏打ちされた人の言葉に、正直ほっとする。6時間あれば、普通は完走できると考える。ハーフは1時間50分くらいなのだから、2時間かかったとしても21kmを4時間。ずーっと歩いてもゴールできるペースだ。そう。大丈夫。大丈夫なはずなんだ。ずっと言い聞かせていたが、それでも経験のないことが本当にできるのか、不安が先に立ってしまう。
そうした不安が少しだけ軽くなり、長くも短いランパートへの一歩を踏み出した―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
当初見込んでいたペースでは全然走れず、予定の1時間遅れでバイクフィニッシュした。しかも、遅れと暑さはトランジットで致命的なミスを誘発した―。
当初予定よりも1時間遅れでバイクフィニッシュ。それでもバイクでは結構順位を上げていた。スイムを上がった時点では、後ろに20人くらいしかいなかったが、バイクパートで100人以上を抜くことができ、700位台まで到達(低レベルの話だけど・・・)。
広いトランジットエリアながら、迷うことなく自分のバイクラックを見つけることができた。バイクをラックにかけヘルメットを脱ぐ。バイクシューズからランシューズに履き替えて着替え用のテントへ。
なんといっても初めてのフルマラソン。頭をよぎるのは初めて出場したハーフで、18kmを過ぎた時点で左の膝が痛くなり、残り3kmを30分以上かけてゴールした苦い記憶。
そうならないように、キネシオテープで厳重にテーピングを施すことにしていた。
テープを貼るのは、足裏の豆対策とアーチを確保するための1枚。ちょうど土踏まずの位置に左右1枚ずつ貼る。次いでかかとからアキレス腱、ふくらはぎに伸びるように1枚。さらにアーチをしっかりとさせるために、8の字を描くように足の裏からアキレス腱の上、ふくらはぎにかけて貼った。アンクルバンドが邪魔になるので一度外す。
このほか、膝の痛みを予防するために、大腿四頭筋の内側と外側から、膝の皿に沿ってふくらはぎに到達するように2枚。足の表と裏のバランスを取るために、ひざ裏からおしりにかけて、大体二頭筋に1枚。
合わせて片足6枚ずつテーピングを施した。
テープは前日にキチンと長さをそろえて切っておいたもの。ただ、暑さで朦朧としてしまい、間違ったところに貼ってしまってはいけないと、テープにそれぞれ右の1枚目はr-1、2枚目はr-2などと番号をふっていった。
これが正解だった。普段なら、長さを見ただけで絶対に間違えないテーピング。なのに、どれがどこに貼るものだったのか、まったくわからない。なんだか、酒に酔っているのに自分は素面だと思い込んでいるような状態。正直、ここまで頭が働かなくなるとは思っていなかった。
真夏の大会で、8時間以上ぶっ続けで動き続けるとこうなるということも非常に大きな発見。これからロングの大会に初めて出ようという人は、こういう状況も想定して準備をすることをお勧めします。
番号に沿って1枚1枚丁寧に張っていく。しかも、汗で取れてしまわないよう、しっかりと粘着スプレーを吹きつけながら作業した。僕は汗を大量にかく上、足が(足だけでなく全身が)毛深い方なので、テープが簡単にはがれてしまう。そこで、山形のスポーツ用品店の店頭ではなかなか売っていない粘着テープをアマゾンで購入し、持ってきていたのだ。
約10分かけてテーピング終了。念押しのためロングタイツもはく。これでほぼほぼはがれる心配はないだろう。最後にニプレス替わりに乳首にも5センチほどに切ったテープを貼りつける。
おっさんの乳首なんて汚い話ですみません。でも、女性と違って男性はブラをしているわけでないので、結構すれるんです。オリンピックディスタンスの10kmのランでも、何のケアもしていないとゴールの時に血だらけになっていたこともあるくらい。ワセリンをしっかり塗ってはいるものの、それだけでは心配で、張り付けた。
そしてもう一つの懸念が腰の痛み。これに備えるため、腰のサポーターも巻く。サポーターも汗でこすれたりしないよう、インナーウェアを着た上でという念の入れよう。
ずいぶんな重装備になってしまった。それもこれもすべて、初めての距離に対する不安や恐怖を追い払おうとして行ったもの。こうした準備自体は間違ってはいないことなんだけど、結果としてはこの作業が最悪の事態を引き起こすことになった。
全ての準備を終え、着替えテントの中に散乱していたキネシオののり紙やらバイクパンツやらを袋にいっしょくたにしまう。その時、薄い横幕ごしに隣の女子用テントから、「あと6時間もあるからゴールは楽勝よ」なんて声が聞こえてきた。どうやら同じくらいのタイムでランに移行しようとする選手らしい。「皆生のランはアップダウンがほとんどないからもう大丈夫よ」なんて声も聞こえる。
どうやら過去にも皆生の大会に出場していた人らしい。
そして、そうした経験に裏打ちされた人の言葉に、正直ほっとする。6時間あれば、普通は完走できると考える。ハーフは1時間50分くらいなのだから、2時間かかったとしても21kmを4時間。ずーっと歩いてもゴールできるペースだ。そう。大丈夫。大丈夫なはずなんだ。ずっと言い聞かせていたが、それでも経験のないことが本当にできるのか、不安が先に立ってしまう。
そうした不安が少しだけ軽くなり、長くも短いランパートへの一歩を踏み出した―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
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