初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑱
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
当初見込んでいたペースでは全然走れず、予定の1時間遅れでバイクフィニッシュした。しかも、遅れと暑さはトランジットで致命的なミスを誘発した―。
当初予定よりも1時間遅れでバイクフィニッシュ。それでもバイクでは結構順位を上げていた。スイムを上がった時点では、後ろに20人くらいしかいなかったが、バイクパートで100人以上を抜くことができ、700位台まで到達(低レベルの話だけど・・・)。
広いトランジットエリアながら、迷うことなく自分のバイクラックを見つけることができた。バイクをラックにかけヘルメットを脱ぐ。バイクシューズからランシューズに履き替えて着替え用のテントへ。
なんといっても初めてのフルマラソン。頭をよぎるのは初めて出場したハーフで、18kmを過ぎた時点で左の膝が痛くなり、残り3kmを30分以上かけてゴールした苦い記憶。
そうならないように、キネシオテープで厳重にテーピングを施すことにしていた。
テープを貼るのは、足裏の豆対策とアーチを確保するための1枚。ちょうど土踏まずの位置に左右1枚ずつ貼る。次いでかかとからアキレス腱、ふくらはぎに伸びるように1枚。さらにアーチをしっかりとさせるために、8の字を描くように足の裏からアキレス腱の上、ふくらはぎにかけて貼った。アンクルバンドが邪魔になるので一度外す。
このほか、膝の痛みを予防するために、大腿四頭筋の内側と外側から、膝の皿に沿ってふくらはぎに到達するように2枚。足の表と裏のバランスを取るために、ひざ裏からおしりにかけて、大体二頭筋に1枚。
合わせて片足6枚ずつテーピングを施した。
テープは前日にキチンと長さをそろえて切っておいたもの。ただ、暑さで朦朧としてしまい、間違ったところに貼ってしまってはいけないと、テープにそれぞれ右の1枚目はr-1、2枚目はr-2などと番号をふっていった。
これが正解だった。普段なら、長さを見ただけで絶対に間違えないテーピング。なのに、どれがどこに貼るものだったのか、まったくわからない。なんだか、酒に酔っているのに自分は素面だと思い込んでいるような状態。正直、ここまで頭が働かなくなるとは思っていなかった。
真夏の大会で、8時間以上ぶっ続けで動き続けるとこうなるということも非常に大きな発見。これからロングの大会に初めて出ようという人は、こういう状況も想定して準備をすることをお勧めします。
番号に沿って1枚1枚丁寧に張っていく。しかも、汗で取れてしまわないよう、しっかりと粘着スプレーを吹きつけながら作業した。僕は汗を大量にかく上、足が(足だけでなく全身が)毛深い方なので、テープが簡単にはがれてしまう。そこで、山形のスポーツ用品店の店頭ではなかなか売っていない粘着テープをアマゾンで購入し、持ってきていたのだ。
約10分かけてテーピング終了。念押しのためロングタイツもはく。これでほぼほぼはがれる心配はないだろう。最後にニプレス替わりに乳首にも5センチほどに切ったテープを貼りつける。
おっさんの乳首なんて汚い話ですみません。でも、女性と違って男性はブラをしているわけでないので、結構すれるんです。オリンピックディスタンスの10kmのランでも、何のケアもしていないとゴールの時に血だらけになっていたこともあるくらい。ワセリンをしっかり塗ってはいるものの、それだけでは心配で、張り付けた。
そしてもう一つの懸念が腰の痛み。これに備えるため、腰のサポーターも巻く。サポーターも汗でこすれたりしないよう、インナーウェアを着た上でという念の入れよう。
ずいぶんな重装備になってしまった。それもこれもすべて、初めての距離に対する不安や恐怖を追い払おうとして行ったもの。こうした準備自体は間違ってはいないことなんだけど、結果としてはこの作業が最悪の事態を引き起こすことになった。
全ての準備を終え、着替えテントの中に散乱していたキネシオののり紙やらバイクパンツやらを袋にいっしょくたにしまう。その時、薄い横幕ごしに隣の女子用テントから、「あと6時間もあるからゴールは楽勝よ」なんて声が聞こえてきた。どうやら同じくらいのタイムでランに移行しようとする選手らしい。「皆生のランはアップダウンがほとんどないからもう大丈夫よ」なんて声も聞こえる。
どうやら過去にも皆生の大会に出場していた人らしい。
そして、そうした経験に裏打ちされた人の言葉に、正直ほっとする。6時間あれば、普通は完走できると考える。ハーフは1時間50分くらいなのだから、2時間かかったとしても21kmを4時間。ずーっと歩いてもゴールできるペースだ。そう。大丈夫。大丈夫なはずなんだ。ずっと言い聞かせていたが、それでも経験のないことが本当にできるのか、不安が先に立ってしまう。
そうした不安が少しだけ軽くなり、長くも短いランパートへの一歩を踏み出した―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
0 件のコメント:
コメントを投稿