初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑳
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
順調な滑り出しを迎えたラン。しかし、スタートからたった2kmでレース中最大のトラブルが発生する。フラフラになりながら、ようやくエイドにたどり着いたが・・・。
ようやくエイドステーションにたどり着いた。すごいハイテンションのボランティアの女子高校生が、「私苗字一緒なんですよ!遠くから来たんですね!頑張って!」と話しかけてくれる。
どうやら、ゼッケンから選手の名前を調べ、一人ひとりに声をかけているみたい。とっても素敵な対応。そして、今思い出しても心が暖かくなる声だった。
・・・それなのに、その時の僕は同じテンションで返答できる余裕もなく「水、水、ください。それと氷。ごめん、具合悪くてお話できない・・・」とぼそぼそと返すだけだった。今思い出しても心が冷たくなる。
それでも、「はい、どうぞ!」と言ってお水を差しだしてくれ、さらに、「氷だって。みんな、氷どこにある?」とまわりに聞いてくれる。そして、その声を受けたほかの高校生たちも一斉に探してくれる。なんて素敵なボランティア、運営なんだ―。
しかし、残念なお知らせが。これまで訪れた多くの選手に配ったため、氷はもうないという。板氷で冷やしていた水もすでに氷が解けて若干冷たい程度だった。
仕方がないが、とりあえずできることをする。電解質の多いスポーツドリンクをプラスチックカップ2杯ほど一気飲み。これがいいかはわからないが、体は水分を求めていた。
そしてビニール袋に一番冷たい水を入れてもらい、エイドステーションの奥の日陰に。ここで座り込み、首の後ろにビニールに入った水を置いて体を冷やす。ついでにその水をいくつか垂らして体にかけた。
こんなくらいではまだ全然だが、今度は大人のボランティアの方が話しかけてくれた。症状を伝えるとやはり熱中症と判断したのか、同じように冷たい水をビニールに入れたものを二つ作ってくれた。これを両脇の下に挟んでしばらくじっとする。
まだまだ心臓のバクバクが止まらない。併せてこのままではゴールできないんじゃないかとの不安が大きくなる。どうしよう。どうしよう。体は動かないが内心はいてもたってもいられなかった。
そうしているうちに、男性のボランティアが氷を見つけたと言って持ってきてくれた。どこかの容器の底に少しだけ残っていたらしい。探してくれた気持ちがありがたい。
早速その氷をビニールに入れて両脇に挟む。先ほどまでの水とは全く違って冷たい。すごく冷たい。当たり前だけど・・・。
そうしてしばらく動かずにいた。5分ほどは何もできずにじっとする。すると少しだけ話ができるようには回復してきた。ボランティアの方と話をする。リタイアするか聞かれるが、もう少し回復させて何とか先に進みたいと告げる。
ボランティアの男性からは、残り2時間の段階で折り返しポイントを通過できないと回収されると伝えられる。今の時間は午後4時20分。午後7時までに17km先の折り返しポイントに行かないといけない。しかもその後はハーフのベストに近いペースで走らないとゴールにたどり着けない計算だ。
さすがにそれは無理なので、何とかもっと早く行けるか考える。まず思いつくのは、準備のために着込みすぎていたこと。上半身はインナー+腰サポーター+アウターを着ている。これでは放熱がうまくいかない。そのため、インナーは脱いで捨てることにした。
さらに5分氷をあててじっとする。
すると、またもう少し回復してきた。
着替えくらいはできる元気が出てきたので、インナーを脱いで走りだす準備をする。汗と水で濡れたおっさんの下着なんて汚くてごめんなさいと謝りながら、ごみ用のビニール袋に捨てさせてもらった。
1枚脱ぐとやはり涼しい。ここでさらに氷が追加された。またどこかから探してもらったみたい。本当に、本当にありがたい。
この氷を首の後ろに置いてさらに5分・・・。
ようやく、歩くことくらいならできるんじゃないかというくらいに回復してきたみたいだ。エイドステーションに来てから約20分が経過した。本当はもっと回復するまで休むべきなんだろうが、ゴールできないことが不安なので先に進むことにする。
途中で倒れることだけはできないので、自分の体の具合を確かめながら、決して無理をしないことに意識を集中させないといけない。
先ほどもらった氷は首の後ろに置いたまま、最後にスポーツドリンクを一杯飲み、さらに水を頭にかけてもらい、エイドステーションから一歩踏み出した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
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