初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録㉓
前回までのあらすじ―。
準備2か月で出場した全日本トライアスロン皆生大会は、バイク→ランのトランジットで、アンクルバンドを外したまま置き忘れ、途中失格となった・・・。
スタート地点でアンクルバンドを発見した。
この計測器をつけてさえいればゴールできたはず。テーピングをまいたときに外していなかったらこんなことにはならなかった・・・。
たらればばかりが頭の中で繰り返される。それでも現実は途中失格。
トライアスロンにかかわらず仕事もそうだけれど、結果がすべて。どんな言い訳をしても、結果を出さなければ成果も得られない。きっとこの日は、たとえアンクルバンドを付け忘れていなかったとしても、何かしらの理由でゴールできなかったんだろう。
そう、自分に言い聞かせ、荷物をまとめた。
トランジッションバッグ3つを抱え、離れた駐車場に向う。バイクにまたがってみるとびっくりするくらいお尻が痛い。走っているうちはアドレナリンが出まくっていたのか全く感じなかったけれど、お尻も限界だったんだろう。
車に荷物を積み込み、一度宿に帰る。シャワーを浴びた後、アンクルバンドを返しにゴール地点の競技場に行った。
午後8時を過ぎ、日は落ちた。そんな中、ゴールの陸上競技場はライトアップされて輝いている。特にゴール地点はまぶしいくらいだ。
このまぶしさは、ライトの明かりによるまぶしさか、ゴールできる選手たちへの羨望からくるまぶしさか・・・。
本部に行き、事情を説明してアンクルバンドを渡すと、「お疲れ様でした!」と軽~く受け取られた。そうですよね~。ここに来る人たちは皆明るい表情をしてますもんね。真っ暗に沈んでいるのは僕の心だけであって、運営の方々も含め、今日一日をやり切ったという充実感があふれていた。
せっかくなので、ゴールした選手たちの写真を撮る。来年かはわからないけれど、必ずここにリベンジに来たい。そう心に刻みつけた。
ゴールできなかったとはいえ、せっかくだから運営サイドが準備したしつらえを楽しんで帰りたい。
競技場の外の何店も連なっている屋台をみていると、ラーメン店の前に「選手は無料」の文字が。貧乏性が全面に出て、早速1杯もらう。タイミングが良かったようで、並ぶことなく食べることができた。
一日動いていたので胃が受け付けなくなっているかも・・・と思ったが、まったくそんなことはなくおいしくいただけた。普段は飲まないスープも(血圧が高めなので)全部飲んで完食。本当はもう一杯いきたかったけれどさすがに遠慮しました。
ゴール後に受け取るはずだったバスタオルとビール1缶は残念ながらもらえず。きっと話をすればもらえたんだろうけれど、言い出せずに競技場を後にした(なお、バスタオルは後日送られてきた)。
宿に帰って、自宅に電話をする。ゴールはできなかったけれど、無事に一日を終えたことを報告。その後、せっかくだからとコンビニでビールと鶏肉の弁当を買いにいく。それで一人、ホテルの部屋で反省会を行った。
しかし、不思議なことに全く酔わない。しかも全くおいしくない。
普通、これだけ動いて汗をかいた後のビールは至極の一杯になるんだけれど、何だか味を感じなかった。500mlのビールを1缶あけるのにも苦労した。
そして、翌日、1000kmを1日で帰らなければならないことを考え、早めに床についた。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月31日木曜日
2019年1月30日水曜日
薪ストーブのメリットとデメリット7 薪の調達の仕方
薪ストーブ歴10年の筆者が、雪国山形の住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第6弾。
今回のお題は、薪ストーブユーザーならだれもが悩む薪の調達方法です。
1.薪を買う
2.原木を買う
3.薪を作る
4.支障木の処理
1.薪を買う
最も手軽で、最も簡単で、そして場合によっては薪棚に積むことさえしなくてもいい方法がこの薪を買うというやり方です。関東や関西の大都市圏の事情は詳しくはわかりませんが、たぶん、全国ほとんどの場所で薪の販売業者がいて(もしくは配達圏に入っていて)、購入することができると思います。
しかも、業者さんによっては、薪棚に積んでくれますので、頼んでさえおけば自分では薪の準備を何もしなくてもいいです。
しかし、前回もお話した通り、薪の値段は年々上がっていて、現在は1棚1万9000円が相場と考えていいと思います(2019年現在。薪の長さ30センチ×幅1.8m×高さ1.5mと計算)。正直、結構高いです。
とはいえ、関東など太平洋側の場合ですと、冬晴れの日が続きますので(うらやましい)、1シーズンに使う薪の量もそれほどではありません。1シーズンで3棚~4棚しか使わないのであれば、十分検討に値すると思います。
2.原木を買う
薪を買うよりも安価に済ませたい場合に行う方法が、この原木を買うという方法です。この場合、原木とは、薪になっていない切り倒された木のことを言います。
造園業者の方ですと、行政の依頼で街路樹を切り倒したり、公園や学校の木を切り倒す依頼を受けていることがあります。それ以外にも民家の邪魔になった木を切り倒すこともあります。こうした時に出る原木は、通常は産廃業者のところに運んで処理料を支払って燃やしてもらうことになります。
こうした原木を買う場合、造園業者さんにとってもメリットがありますので(ただし、行政の依頼で切り倒した木は、行政の財産になりますので勝手に売買してはいけません。あくまで民間から頼まれた場合のみ売買してください)、売ってもらえるかもしれません。
費用は薪を買う場合に比べて半分以下~4分の1にまで抑えることができます。
ちなみに、原木は買わなくてもタダで貰えることもあります。筆者はこのパターンですが、自宅の庭の手入れをお願いしている造園業者さんから毎シーズン、かなりの量の原木をもらっています。業者さんにとっても、我が家でもらう量の原木を産廃業者で燃やすと数万円の費用がかかるので、ウィンウィンの関係になっています。
3.薪を作る
ただ、この場合ですと、薪を自分で作らなければなりません。原木を玉切りして、それを割って乾燥させ、そして薪にする・・・。手間と時間がかかります。
さらに、薪を作るには少なくともチェーンソーと薪割り用の斧を買わないといけません。人によっては薪割り機を購入することもあるでしょう。初期費用は1シーズンで買う薪の価格の数倍に及ぶケースもあります。
とはいえ、これも薪ストーブライフの醍醐味でもあります。薪を自分で作る薪ストーブユーザーは3回暖まるとも言われます。それは、薪を作るときに汗をかくほど暖まるのが1回、運ぶ時に暖まるのが2回、そして、冬に薪を焚いて3回。
なんといっても自分で割った薪は、それぞれに割った時の思い出もあるので(これ、結構覚えているものですよ。特になかなか割れなかった薪の場合は)、より深い満足感を得られます。
もし、こうした作業をするスペースがあり、薪割りをする気力体力があるようでしたら、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
4.支障木の処理
最後に、これはどこでもできるわけではありませんが、支障木の処理という方法があります。
これは、川が増水したときに水の流れを妨げるおそれがあるとして、河川敷に生えている木を切り倒すものです。
筆者の住んでいる山形県の場合、県や国交省がこうした支障木の処理を業者に頼んで行っていて、それをタダで貰うことができる場合があります。量が限られていたり、手間がかかったりしますが、タダに勝るものはありません(笑)。
さらに一歩進んで、この支障木を自分で切り倒してくれる人を募集している場合もあります。先日、地元の新聞で山形県は業者ではなく一般市民が支障木を処理している面積が全国で1位という記事を読みました。それだけ薪ストーブユーザーが多く、また、作業できる人も多いということだと思います。行政にとってもタダで河川敷の管理ができるのは大きな魅力ですし。
しかし、筆者はこの方法はあまりおススメしません。
理由は、高さ10m以上になったような木を切り倒すことは、素人には危険が大きすぎると考えるからです。
木を切り倒すのは大変です。切り倒す方向、順番など様々なことを勘案しないといけません。木が曲がっていた場合、曲がりのテンションがかかっている方を切ってしまうと、木がはねます。割り箸を折るときにパキッとなって曲がったところが折れますよね。あれです。これが直径30cm級の木で起きてしまうと、簡単に大けがをする危険性があります(これで亡くなっている人もいます)。
また、切り倒した木が隣の木によりかかってしまい切り倒せなかったり、じゃあそのよりかかられた木を切り倒そうとしたら、さらにその隣の木が邪魔になったり・・・とうまくいかない場合も多くあります。
なにより、幹の部分はいい薪になりますが、それだけではなく、きちんと枝も処理しないといけません。
薪ストーブを使うと、メインの太薪に火が回る前に小枝を使って徐々に火を大きくするので、枝は非常に重宝するのですが、いかんせん、処理に時間と手間がかかります。
一度やってみてください。1本の木の枝を処理するだけで、結構うんざりします。しかも、支障木の処理は一定の面積の木をすべて処理しないといけないので、最低でも10本~20本の木を切り倒す必要がありますので、枝の処理だけで10日とかかかるかもしれません。
以上、様々な方法がある薪の調達方法。
あなたは、どの方法で薪を集めますか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
今回のお題は、薪ストーブユーザーならだれもが悩む薪の調達方法です。
1.薪を買う
2.原木を買う
3.薪を作る
4.支障木の処理
1.薪を買う
最も手軽で、最も簡単で、そして場合によっては薪棚に積むことさえしなくてもいい方法がこの薪を買うというやり方です。関東や関西の大都市圏の事情は詳しくはわかりませんが、たぶん、全国ほとんどの場所で薪の販売業者がいて(もしくは配達圏に入っていて)、購入することができると思います。
しかも、業者さんによっては、薪棚に積んでくれますので、頼んでさえおけば自分では薪の準備を何もしなくてもいいです。
しかし、前回もお話した通り、薪の値段は年々上がっていて、現在は1棚1万9000円が相場と考えていいと思います(2019年現在。薪の長さ30センチ×幅1.8m×高さ1.5mと計算)。正直、結構高いです。
とはいえ、関東など太平洋側の場合ですと、冬晴れの日が続きますので(うらやましい)、1シーズンに使う薪の量もそれほどではありません。1シーズンで3棚~4棚しか使わないのであれば、十分検討に値すると思います。
2.原木を買う
薪を買うよりも安価に済ませたい場合に行う方法が、この原木を買うという方法です。この場合、原木とは、薪になっていない切り倒された木のことを言います。
造園業者の方ですと、行政の依頼で街路樹を切り倒したり、公園や学校の木を切り倒す依頼を受けていることがあります。それ以外にも民家の邪魔になった木を切り倒すこともあります。こうした時に出る原木は、通常は産廃業者のところに運んで処理料を支払って燃やしてもらうことになります。
こうした原木を買う場合、造園業者さんにとってもメリットがありますので(ただし、行政の依頼で切り倒した木は、行政の財産になりますので勝手に売買してはいけません。あくまで民間から頼まれた場合のみ売買してください)、売ってもらえるかもしれません。
費用は薪を買う場合に比べて半分以下~4分の1にまで抑えることができます。
ちなみに、原木は買わなくてもタダで貰えることもあります。筆者はこのパターンですが、自宅の庭の手入れをお願いしている造園業者さんから毎シーズン、かなりの量の原木をもらっています。業者さんにとっても、我が家でもらう量の原木を産廃業者で燃やすと数万円の費用がかかるので、ウィンウィンの関係になっています。
3.薪を作る
ただ、この場合ですと、薪を自分で作らなければなりません。原木を玉切りして、それを割って乾燥させ、そして薪にする・・・。手間と時間がかかります。
さらに、薪を作るには少なくともチェーンソーと薪割り用の斧を買わないといけません。人によっては薪割り機を購入することもあるでしょう。初期費用は1シーズンで買う薪の価格の数倍に及ぶケースもあります。
とはいえ、これも薪ストーブライフの醍醐味でもあります。薪を自分で作る薪ストーブユーザーは3回暖まるとも言われます。それは、薪を作るときに汗をかくほど暖まるのが1回、運ぶ時に暖まるのが2回、そして、冬に薪を焚いて3回。
なんといっても自分で割った薪は、それぞれに割った時の思い出もあるので(これ、結構覚えているものですよ。特になかなか割れなかった薪の場合は)、より深い満足感を得られます。
もし、こうした作業をするスペースがあり、薪割りをする気力体力があるようでしたら、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
4.支障木の処理
最後に、これはどこでもできるわけではありませんが、支障木の処理という方法があります。
これは、川が増水したときに水の流れを妨げるおそれがあるとして、河川敷に生えている木を切り倒すものです。
筆者の住んでいる山形県の場合、県や国交省がこうした支障木の処理を業者に頼んで行っていて、それをタダで貰うことができる場合があります。量が限られていたり、手間がかかったりしますが、タダに勝るものはありません(笑)。
さらに一歩進んで、この支障木を自分で切り倒してくれる人を募集している場合もあります。先日、地元の新聞で山形県は業者ではなく一般市民が支障木を処理している面積が全国で1位という記事を読みました。それだけ薪ストーブユーザーが多く、また、作業できる人も多いということだと思います。行政にとってもタダで河川敷の管理ができるのは大きな魅力ですし。
しかし、筆者はこの方法はあまりおススメしません。
理由は、高さ10m以上になったような木を切り倒すことは、素人には危険が大きすぎると考えるからです。
木を切り倒すのは大変です。切り倒す方向、順番など様々なことを勘案しないといけません。木が曲がっていた場合、曲がりのテンションがかかっている方を切ってしまうと、木がはねます。割り箸を折るときにパキッとなって曲がったところが折れますよね。あれです。これが直径30cm級の木で起きてしまうと、簡単に大けがをする危険性があります(これで亡くなっている人もいます)。
また、切り倒した木が隣の木によりかかってしまい切り倒せなかったり、じゃあそのよりかかられた木を切り倒そうとしたら、さらにその隣の木が邪魔になったり・・・とうまくいかない場合も多くあります。
なにより、幹の部分はいい薪になりますが、それだけではなく、きちんと枝も処理しないといけません。
薪ストーブを使うと、メインの太薪に火が回る前に小枝を使って徐々に火を大きくするので、枝は非常に重宝するのですが、いかんせん、処理に時間と手間がかかります。
一度やってみてください。1本の木の枝を処理するだけで、結構うんざりします。しかも、支障木の処理は一定の面積の木をすべて処理しないといけないので、最低でも10本~20本の木を切り倒す必要がありますので、枝の処理だけで10日とかかかるかもしれません。
以上、様々な方法がある薪の調達方法。
あなたは、どの方法で薪を集めますか?
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月29日火曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~㉒
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録㉒
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。約1時間をロスしたものの、ようやく回復したが、今度はアンクルバンドが無いことに気づいて・・・。
アンクルバンドが無い―。
これまで、数多くのトライアスロンの大会に出ていて、こんな経験は初めてだ。
何でなくなっていたのか・・・。どこにいったのか・・・。
真っ白になった頭で考える。考える。考える・・・。
・・・あれだ!
バイクからランへのトランジットの時、足首に巻いたキネシオテープ。このテーピングのために、一時アンクルバンドを外した。
たぶんその時、テープの紙と一緒にまとめてトランジッションバッグに入れてしまったんだろう。皆生大会では、トランジットのタイムを測るためのランスタート地点での計測点が無かったことも、走り出した時に気づけなかった理由だ。
しかし、トライアスロンはすべてが自己責任。悪いのは自分だ。
ではどうしよう。
真っ白になった頭で、とりあえず足だけは動かしたまま考える。取りに戻るのはどうか。
いや、すでに10km来ている。これから10km戻ってトランジットまで行き、さらに今走っているところまで再び走りなおすと20km。そこからさらに32km。
残り時間4時間半で?どう考えても無理な相談だ。
となると失格はやむを得ない。悔しいけれど、本当に悔しいけれど、ゴールしてもタイムは出ない。でもこのまま走ってゴールまで行くことはできる。
しかし、大会運営をする人たちにとっては、アンクルバンドは計測器でもあり、下手したらGPSで選手の現在位置を確認しながら、選手の安全を守ろうとしている道具。そうした努力を払って大会を続けている以上、まったく伝えないで走り続けるわけにはいかない。
そのため、次のエイドステーションでマーシャルを探して事情を説明した。さすがにマーシャルの方もびっくり。そんな人見たことないとか・・・。ですよね~。自分でも信じられないもん。
本部に確認を取るということで、しばし待つ。
その後伝えられた返答はその場で失格。その後のレース続行は認めないというもの。やはりというべきか、安全確認ができない状況で走らせるわけにはいかないということか。
このまま、ここで回収のバスを待つように言われるが、この日は最終的に36度の猛暑日になっていた日。DNFの選手が多く、救急車で搬送された人や回収された人が後を絶たず、バスが来るまで2時間くらいかかるという。
2時間も何もしないで待っている気になれず・・・。歩いて戻ってもいいか確認すると、それは大丈夫という話。しかし、レースは終わっているので、ゼッケンは外してほしいと言われた。
当然のことなので、その場でゼッケンを外し、10km先のメイン会場までとぼとぼと歩き始めた。
胸にこみ上げるのは、「何でこんなことになったんだ」という疑問と後悔。あの時、ちゃんとアンクルバンドをつけていれば。きちんと忘れ物チェックをしてから走り出せていていれば。
これまで、ゴールを目指して走ってきた道。ランの折り返しを過ぎれば、ゴールへと続くはずだった道。
そこを、スタート地点に向って進む自分がいる。なんだかんだで10万ものお金をかけて、1000kmも車を走らせて、ようやく来た皆生。時間と金をかけ、仕事を調整し、ようやく参加にこぎつけた初ロング。それが何の結果も出せない結果になった・・・。
これだけの無力感と挫折は、しばらく味わっていなかった。
悶々と考えながら進んでいたら、今度は曲がるべきところをまっすぐ行ってしまい、道を間違えた。携帯もないし、当然地図も持っていない。しかも初めての街。
お客様の見送りに出ていたディーラーの販売員の方に道を聞いて、ようやく、ずっとまっすぐに走っていたと思ったコースが、途中で曲がり角があったことを思い出す。それだけ頭が朦朧としていたことだ。
スタート地点が近づくにつれ、続々とゴールを果たして戻ってくる選手たちとすれ違う。
どの選手の表情も晴れやかだ。一日かけて猛暑の中走り抜けた自分に誇りを感じているようないい顔をしている。
本当は自分もそういう顔をしたかった。
次第に日が傾き始めた午後6時半すぎ。ようやくメイン会場のスタート地点にたどり着いた。バッグの中身をひっくり返してみると、出てきた。アンクルバンドだ。これを忘れてしまったために途中失格―。
たった2か月の準備で初めて挑んだロングの大会。準備不足は承知の上で参加した大会は、ゴールに値する努力を払っていなかったという現実を示される大会だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。約1時間をロスしたものの、ようやく回復したが、今度はアンクルバンドが無いことに気づいて・・・。
アンクルバンドが無い―。
これまで、数多くのトライアスロンの大会に出ていて、こんな経験は初めてだ。
何でなくなっていたのか・・・。どこにいったのか・・・。
真っ白になった頭で考える。考える。考える・・・。
・・・あれだ!
バイクからランへのトランジットの時、足首に巻いたキネシオテープ。このテーピングのために、一時アンクルバンドを外した。
たぶんその時、テープの紙と一緒にまとめてトランジッションバッグに入れてしまったんだろう。皆生大会では、トランジットのタイムを測るためのランスタート地点での計測点が無かったことも、走り出した時に気づけなかった理由だ。
しかし、トライアスロンはすべてが自己責任。悪いのは自分だ。
ではどうしよう。
真っ白になった頭で、とりあえず足だけは動かしたまま考える。取りに戻るのはどうか。
いや、すでに10km来ている。これから10km戻ってトランジットまで行き、さらに今走っているところまで再び走りなおすと20km。そこからさらに32km。
残り時間4時間半で?どう考えても無理な相談だ。
となると失格はやむを得ない。悔しいけれど、本当に悔しいけれど、ゴールしてもタイムは出ない。でもこのまま走ってゴールまで行くことはできる。
しかし、大会運営をする人たちにとっては、アンクルバンドは計測器でもあり、下手したらGPSで選手の現在位置を確認しながら、選手の安全を守ろうとしている道具。そうした努力を払って大会を続けている以上、まったく伝えないで走り続けるわけにはいかない。
そのため、次のエイドステーションでマーシャルを探して事情を説明した。さすがにマーシャルの方もびっくり。そんな人見たことないとか・・・。ですよね~。自分でも信じられないもん。
本部に確認を取るということで、しばし待つ。
その後伝えられた返答はその場で失格。その後のレース続行は認めないというもの。やはりというべきか、安全確認ができない状況で走らせるわけにはいかないということか。
このまま、ここで回収のバスを待つように言われるが、この日は最終的に36度の猛暑日になっていた日。DNFの選手が多く、救急車で搬送された人や回収された人が後を絶たず、バスが来るまで2時間くらいかかるという。
2時間も何もしないで待っている気になれず・・・。歩いて戻ってもいいか確認すると、それは大丈夫という話。しかし、レースは終わっているので、ゼッケンは外してほしいと言われた。
当然のことなので、その場でゼッケンを外し、10km先のメイン会場までとぼとぼと歩き始めた。
胸にこみ上げるのは、「何でこんなことになったんだ」という疑問と後悔。あの時、ちゃんとアンクルバンドをつけていれば。きちんと忘れ物チェックをしてから走り出せていていれば。
これまで、ゴールを目指して走ってきた道。ランの折り返しを過ぎれば、ゴールへと続くはずだった道。
そこを、スタート地点に向って進む自分がいる。なんだかんだで10万ものお金をかけて、1000kmも車を走らせて、ようやく来た皆生。時間と金をかけ、仕事を調整し、ようやく参加にこぎつけた初ロング。それが何の結果も出せない結果になった・・・。
これだけの無力感と挫折は、しばらく味わっていなかった。
悶々と考えながら進んでいたら、今度は曲がるべきところをまっすぐ行ってしまい、道を間違えた。携帯もないし、当然地図も持っていない。しかも初めての街。
お客様の見送りに出ていたディーラーの販売員の方に道を聞いて、ようやく、ずっとまっすぐに走っていたと思ったコースが、途中で曲がり角があったことを思い出す。それだけ頭が朦朧としていたことだ。
スタート地点が近づくにつれ、続々とゴールを果たして戻ってくる選手たちとすれ違う。
どの選手の表情も晴れやかだ。一日かけて猛暑の中走り抜けた自分に誇りを感じているようないい顔をしている。
本当は自分もそういう顔をしたかった。
次第に日が傾き始めた午後6時半すぎ。ようやくメイン会場のスタート地点にたどり着いた。バッグの中身をひっくり返してみると、出てきた。アンクルバンドだ。これを忘れてしまったために途中失格―。
たった2か月の準備で初めて挑んだロングの大会。準備不足は承知の上で参加した大会は、ゴールに値する努力を払っていなかったという現実を示される大会だった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
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2019年1月28日月曜日
薪ストーブのメリットとデメリット6 薪の値段は高い?
薪ストーブ歴10年の筆者が、雪国山形の住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第6弾。
今回のお題は、薪の値段は高いのか?安いのか?です。
目次
1.薪の値段を語る前に
2.薪の単位
3.薪の使用量
4.薪は高いのか安いのか?
1.薪の値段を語る前に
値段が高いか安いか。
これは、薪に限らずどんなものでもそうですが、その感じ方は「人による」としか言いようがありません。
年収1億円の人は安いと感じるかもしれませんし、年収500万の人は高いと感じるかもしれません。年収に関係なく、薪ストーブに価値を見出している人にとっては安いかもしれませんし、年収が10億円あったとしても薪ストーブに興味がない人にとって見れば、高いかもしれません。
なので、ここで言えることは事実のみです。それを高いと感じるか、安いと感じるかは皆さん次第です。
2.薪の単位
さて、薪の値段を言う前に、まず、薪はどのような単位で販売されているかをご説明します。通常、薪の販売で良く使われる単位は「棚」と「束」です。
このほかに、薪10kgとか20kgとか、重さで販売されているところもありますが、こちらはイメージが付きやすいと思いますので、棚と束について説明します。
このうち、束は70cmの針金で縛った薪の量です。針金で作った円の直径は22cmになります。山形をはじめ、秋に芋煮会をする東北地方では、ホームセンターやスーパーで販売している薪の量がちょうど一束くらいです。
薪の長さや業者さんにもよりますが、大体1束で500円前後で販売されています。
一方、棚は各地で量が違うことがあります。一般的なのは幅1.8m、高さ1.5mの空間に並べた薪の量です。薪の長さは色々ですが、30cmから45cmのものが主流です。
こちらは、筆者が薪ストーブを使い始めた10年前は、30cmの薪で1棚1万5000円でした。税別の所もあれば、税込のところもありました。
しかし、年々薪の価格は高騰していまして、現在では、1万8000円~2万円が相場になっています。
3.薪の使用量
価格がわかったといっても、「じゃあ、冬の間どのくらい使うの?」となりますよね。
薪の使用量については、どのくらいの時間使うかや、使用する期間、使っている薪ストーブの大きさ、家の断熱性能、家の大きさによって大きく異なるので、一概には言えません。
ただ、これから薪ストーブを導入しようと考えている方向けに、筆者の自宅の使用量をご説明します。ここを基準にご自身の自宅や生活スタイルから使用量をシミュレーションしてみてください。
筆者の自宅は、10年以上前に新築で建てまして、生活空間の建坪は40坪です。家の断熱性能は、2008年の竣工で断熱材はグラスウール16k。Q値はきちんと計算できていませんが、大体1.9くらいです。
このうち、ほぼ物置と化している筆者の書斎を除く家中を一台の薪ストーブで暖めています。34坪、68畳分の広さです。さらに、リビングダイニングは勾配天井になっていて、最も高いところは4.6mあります。かなりの大空間です。
このため、真冬日になる日も多い1月下旬から2月にかけては、薪ストーブは常に全力で働いています。
また、使用時間も朝6時に着火、最後に給薪するのは夜の11時~12時ごろです。昔は寝る直前にも朝暖かいようにと薪を入れてから寝ていたのですが、さすがに使用量が半端ないので最近は自粛しています。
使用する期間は、10月中旬から4月下旬まで。約6か月間です。
室温はストーブの置いてあるリビングで大体24度。リビングから最も遠い寝室で18度くらいです。これが、朝起きたときにはリビングで16度~18度、寝室で10度から12度くらいになっています。
こうした条件で朝から晩まで薪ストーブを使用していて、最初の頃は1シーズンに15棚くらい使っていました。それがだんだん薪の効率的な燃やし方や、一度暖めた部屋の温度を保つ方法などを学んできて、現在は12棚くらいです。
なお、我が家で使用している薪は35cmです。
今年から、妻が日中働きに出るようになったので(午前中のみのパート)、午前中燃やさなかった場合の量については、今シーズン終わってからご報告します。
4.薪は高いのか安いのか?
1シーズンに使用している薪の価格は、例えば12棚で現在の相場の平均1万9000円で計算すると、22万8000円です。
6か月間使うので、月の平均を出すと月3万8000円になります。
とはいえ、筆者は薪のほとんどを自分で作っているので、ほとんど出費はありません。
この価格、高いでしょうか?安いでしょうか?
たぶん、1日18時間エアコンで全館暖房した場合、電気代はもっとかかかもしれません。また、石油ストーブを使用して家中を同じ条件で暖めた場合、灯油の使用量は1シーズン2000Lくらいでしょうか。今の灯油の価格なら薪の方が高いかもしれません。
また、筆者は薪ストーブだけを使用していますが、薪ストーブと石油ストーブの併用、エアコンとの併用で薪の使用量を減らすことは十分に可能です。
平均的なサラリーマンである筆者の給料では、1シーズンに使う薪をすべて買ったとすると、薪は高いです。自分で作っているから何とかやれていますが・・・。ただ、他の暖房と比べて「割高ではない」と感じています。
皆さんはどう感じるでしょうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
今回のお題は、薪の値段は高いのか?安いのか?です。
目次
1.薪の値段を語る前に
2.薪の単位
3.薪の使用量
4.薪は高いのか安いのか?
1.薪の値段を語る前に
値段が高いか安いか。
これは、薪に限らずどんなものでもそうですが、その感じ方は「人による」としか言いようがありません。
年収1億円の人は安いと感じるかもしれませんし、年収500万の人は高いと感じるかもしれません。年収に関係なく、薪ストーブに価値を見出している人にとっては安いかもしれませんし、年収が10億円あったとしても薪ストーブに興味がない人にとって見れば、高いかもしれません。
なので、ここで言えることは事実のみです。それを高いと感じるか、安いと感じるかは皆さん次第です。
2.薪の単位
さて、薪の値段を言う前に、まず、薪はどのような単位で販売されているかをご説明します。通常、薪の販売で良く使われる単位は「棚」と「束」です。
このほかに、薪10kgとか20kgとか、重さで販売されているところもありますが、こちらはイメージが付きやすいと思いますので、棚と束について説明します。
このうち、束は70cmの針金で縛った薪の量です。針金で作った円の直径は22cmになります。山形をはじめ、秋に芋煮会をする東北地方では、ホームセンターやスーパーで販売している薪の量がちょうど一束くらいです。
薪の長さや業者さんにもよりますが、大体1束で500円前後で販売されています。
一方、棚は各地で量が違うことがあります。一般的なのは幅1.8m、高さ1.5mの空間に並べた薪の量です。薪の長さは色々ですが、30cmから45cmのものが主流です。
こちらは、筆者が薪ストーブを使い始めた10年前は、30cmの薪で1棚1万5000円でした。税別の所もあれば、税込のところもありました。
しかし、年々薪の価格は高騰していまして、現在では、1万8000円~2万円が相場になっています。
3.薪の使用量
価格がわかったといっても、「じゃあ、冬の間どのくらい使うの?」となりますよね。
薪の使用量については、どのくらいの時間使うかや、使用する期間、使っている薪ストーブの大きさ、家の断熱性能、家の大きさによって大きく異なるので、一概には言えません。
ただ、これから薪ストーブを導入しようと考えている方向けに、筆者の自宅の使用量をご説明します。ここを基準にご自身の自宅や生活スタイルから使用量をシミュレーションしてみてください。
筆者の自宅は、10年以上前に新築で建てまして、生活空間の建坪は40坪です。家の断熱性能は、2008年の竣工で断熱材はグラスウール16k。Q値はきちんと計算できていませんが、大体1.9くらいです。
このうち、ほぼ物置と化している筆者の書斎を除く家中を一台の薪ストーブで暖めています。34坪、68畳分の広さです。さらに、リビングダイニングは勾配天井になっていて、最も高いところは4.6mあります。かなりの大空間です。
このため、真冬日になる日も多い1月下旬から2月にかけては、薪ストーブは常に全力で働いています。
また、使用時間も朝6時に着火、最後に給薪するのは夜の11時~12時ごろです。昔は寝る直前にも朝暖かいようにと薪を入れてから寝ていたのですが、さすがに使用量が半端ないので最近は自粛しています。
使用する期間は、10月中旬から4月下旬まで。約6か月間です。
室温はストーブの置いてあるリビングで大体24度。リビングから最も遠い寝室で18度くらいです。これが、朝起きたときにはリビングで16度~18度、寝室で10度から12度くらいになっています。
こうした条件で朝から晩まで薪ストーブを使用していて、最初の頃は1シーズンに15棚くらい使っていました。それがだんだん薪の効率的な燃やし方や、一度暖めた部屋の温度を保つ方法などを学んできて、現在は12棚くらいです。
なお、我が家で使用している薪は35cmです。
今年から、妻が日中働きに出るようになったので(午前中のみのパート)、午前中燃やさなかった場合の量については、今シーズン終わってからご報告します。
4.薪は高いのか安いのか?
1シーズンに使用している薪の価格は、例えば12棚で現在の相場の平均1万9000円で計算すると、22万8000円です。
6か月間使うので、月の平均を出すと月3万8000円になります。
とはいえ、筆者は薪のほとんどを自分で作っているので、ほとんど出費はありません。
この価格、高いでしょうか?安いでしょうか?
たぶん、1日18時間エアコンで全館暖房した場合、電気代はもっとかかかもしれません。また、石油ストーブを使用して家中を同じ条件で暖めた場合、灯油の使用量は1シーズン2000Lくらいでしょうか。今の灯油の価格なら薪の方が高いかもしれません。
また、筆者は薪ストーブだけを使用していますが、薪ストーブと石油ストーブの併用、エアコンとの併用で薪の使用量を減らすことは十分に可能です。
平均的なサラリーマンである筆者の給料では、1シーズンに使う薪をすべて買ったとすると、薪は高いです。自分で作っているから何とかやれていますが・・・。ただ、他の暖房と比べて「割高ではない」と感じています。
皆さんはどう感じるでしょうか。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月25日金曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~㉑
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録㉑
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。エイドステーションで20分以上休憩を取り、ようやくレースを再開した。
ようやく再開したラン。
しかし、最初は体がどうなるかわからないので、まずは歩いた。200mほど歩く。そこで少しだけジョギングしてみる。1、2、3、4・・・。歩数を数えながら。100mほど走ったらまた歩く。体がどう反応するのか、心拍に以上はないか。
そうしたペースで10分ほどかけて、1kmを進んだ。この時点では体調に変化はない。よくもならないけど、悪くもならない。
そこで、もう少し走る距離を長くしてみる。200m走って、100m歩くペースに変更。少しだけペースも上がって次の1kmを9分で通過する。
この時点でも特に変化はない。ゆっくりなら走っても大丈夫そうだ。
休んでいたエイドを出てから20分ほどたって、ようやくずっと走り続けることにする。
でも、急激にはペースは上げない。ゆっくり、ゆっくり。走っているといっても、歩いていない程度のペースで進んでいく。次の1kmを8分ほどで通過。
そして、次のエイドに到着した。
スポーツドリンクを飲み、スイカを食べる。レモンはほおばるが塩はつけない。期待はせずに「氷をもらえますか?」と聞いたら、なんとここのエイドには大量にあった。それをビニール袋にもらって、首の後ろを冷やす。強烈に冷たい。
約1分そこで首を冷やした後、その氷を背中に流し込む。アウターの上から補給食を入れたベルトをしているので、氷は背中で止まっている。背中側と言ってもお腹まわりを冷やすのにはためらいがあったが、少しでも氷を体に触れさせたい。
最後に頭に氷水をかけてもらう。これは・・・すごい。一気に目が覚めた気がした。
3分あまり過ごした後、再び走り出す。さっきまでとペースは変えず。1km8分のペース。ゆっくりゆっくり。次の1kmは自然とペースが上がって7分30秒で通過。さらに次の1kmを7分ペースで進んでいたところで、次のエイドに到着した。
まだまだ頭には霞がかかっているような感じがあるが、心臓がバクバクするようなことはない。たぶん、もう大丈夫なんだろう。
エイドでの補給の仕方をルーティン化するべく、スポーツドリンクを一杯一気飲みした後、スイカ、レモンをほおばる。1個だけ塩をつける。そして頭に氷水。
ここでは1分ほどですぐに走り出した。ここからの1kmは7分丁度のペース。これならゴールまで行けるはずだ。
3時半にランをスタートして具合が悪くなったのが3時50分ごろ。4時過ぎにエイドについて20分を浪費。4時半から再び走り始め、次のエイドに着いたのが午後5時。この時点で6kmちょっと。残り36km。次のエイドに着いたのは午後5時20分過ぎ。残り33km。当初よりは厳しくなったが、1km7分のペースを保てば十分ゴールできる。
とにかく1km7分のペースを守ろう。そう思いながら走っていると少しずつ、頭の中の霞が取れてきた。回りが見えるようになってくる。信号待ちがあり、歩道橋を上って降りて、進路右側の歩道を走っていたのが左側の歩道を走ることになり・・・。前からは折り返してきた選手がやってきてすれ違う。ボロボロの自分とは全く違うハイペースだ。来年はこんなペースで走りたいなと思いながら、お互いに「ガンバ!」と声をかける。
特にペースは上げていないが、徐々に回復したおかげで元々の想定ペースに近づいていく。次の1kmを6分40秒で通過。このままいけば、1km6分のペースに戻れるかもしれない。
前向きな気持ちになったこの時、ふと足元を見た。そこで・・・気づいてしまった。
「あるべきものが無い!」
そう、左足につけていたアンクルベルトが見当たらない。これが無いとゴールできない!
頭が真っ白になった・・・。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
人生初の熱中症を体験したラン。エイドステーションで20分以上休憩を取り、ようやくレースを再開した。
ようやく再開したラン。
しかし、最初は体がどうなるかわからないので、まずは歩いた。200mほど歩く。そこで少しだけジョギングしてみる。1、2、3、4・・・。歩数を数えながら。100mほど走ったらまた歩く。体がどう反応するのか、心拍に以上はないか。
そうしたペースで10分ほどかけて、1kmを進んだ。この時点では体調に変化はない。よくもならないけど、悪くもならない。
そこで、もう少し走る距離を長くしてみる。200m走って、100m歩くペースに変更。少しだけペースも上がって次の1kmを9分で通過する。
この時点でも特に変化はない。ゆっくりなら走っても大丈夫そうだ。
休んでいたエイドを出てから20分ほどたって、ようやくずっと走り続けることにする。
でも、急激にはペースは上げない。ゆっくり、ゆっくり。走っているといっても、歩いていない程度のペースで進んでいく。次の1kmを8分ほどで通過。
そして、次のエイドに到着した。
スポーツドリンクを飲み、スイカを食べる。レモンはほおばるが塩はつけない。期待はせずに「氷をもらえますか?」と聞いたら、なんとここのエイドには大量にあった。それをビニール袋にもらって、首の後ろを冷やす。強烈に冷たい。
約1分そこで首を冷やした後、その氷を背中に流し込む。アウターの上から補給食を入れたベルトをしているので、氷は背中で止まっている。背中側と言ってもお腹まわりを冷やすのにはためらいがあったが、少しでも氷を体に触れさせたい。
最後に頭に氷水をかけてもらう。これは・・・すごい。一気に目が覚めた気がした。
3分あまり過ごした後、再び走り出す。さっきまでとペースは変えず。1km8分のペース。ゆっくりゆっくり。次の1kmは自然とペースが上がって7分30秒で通過。さらに次の1kmを7分ペースで進んでいたところで、次のエイドに到着した。
まだまだ頭には霞がかかっているような感じがあるが、心臓がバクバクするようなことはない。たぶん、もう大丈夫なんだろう。
エイドでの補給の仕方をルーティン化するべく、スポーツドリンクを一杯一気飲みした後、スイカ、レモンをほおばる。1個だけ塩をつける。そして頭に氷水。
ここでは1分ほどですぐに走り出した。ここからの1kmは7分丁度のペース。これならゴールまで行けるはずだ。
3時半にランをスタートして具合が悪くなったのが3時50分ごろ。4時過ぎにエイドについて20分を浪費。4時半から再び走り始め、次のエイドに着いたのが午後5時。この時点で6kmちょっと。残り36km。次のエイドに着いたのは午後5時20分過ぎ。残り33km。当初よりは厳しくなったが、1km7分のペースを保てば十分ゴールできる。
とにかく1km7分のペースを守ろう。そう思いながら走っていると少しずつ、頭の中の霞が取れてきた。回りが見えるようになってくる。信号待ちがあり、歩道橋を上って降りて、進路右側の歩道を走っていたのが左側の歩道を走ることになり・・・。前からは折り返してきた選手がやってきてすれ違う。ボロボロの自分とは全く違うハイペースだ。来年はこんなペースで走りたいなと思いながら、お互いに「ガンバ!」と声をかける。
特にペースは上げていないが、徐々に回復したおかげで元々の想定ペースに近づいていく。次の1kmを6分40秒で通過。このままいけば、1km6分のペースに戻れるかもしれない。
前向きな気持ちになったこの時、ふと足元を見た。そこで・・・気づいてしまった。
「あるべきものが無い!」
そう、左足につけていたアンクルベルトが見当たらない。これが無いとゴールできない!
頭が真っ白になった・・・。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月24日木曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑳
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑳
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
順調な滑り出しを迎えたラン。しかし、スタートからたった2kmでレース中最大のトラブルが発生する。フラフラになりながら、ようやくエイドにたどり着いたが・・・。
ようやくエイドステーションにたどり着いた。すごいハイテンションのボランティアの女子高校生が、「私苗字一緒なんですよ!遠くから来たんですね!頑張って!」と話しかけてくれる。
どうやら、ゼッケンから選手の名前を調べ、一人ひとりに声をかけているみたい。とっても素敵な対応。そして、今思い出しても心が暖かくなる声だった。
・・・それなのに、その時の僕は同じテンションで返答できる余裕もなく「水、水、ください。それと氷。ごめん、具合悪くてお話できない・・・」とぼそぼそと返すだけだった。今思い出しても心が冷たくなる。
それでも、「はい、どうぞ!」と言ってお水を差しだしてくれ、さらに、「氷だって。みんな、氷どこにある?」とまわりに聞いてくれる。そして、その声を受けたほかの高校生たちも一斉に探してくれる。なんて素敵なボランティア、運営なんだ―。
しかし、残念なお知らせが。これまで訪れた多くの選手に配ったため、氷はもうないという。板氷で冷やしていた水もすでに氷が解けて若干冷たい程度だった。
仕方がないが、とりあえずできることをする。電解質の多いスポーツドリンクをプラスチックカップ2杯ほど一気飲み。これがいいかはわからないが、体は水分を求めていた。
そしてビニール袋に一番冷たい水を入れてもらい、エイドステーションの奥の日陰に。ここで座り込み、首の後ろにビニールに入った水を置いて体を冷やす。ついでにその水をいくつか垂らして体にかけた。
こんなくらいではまだ全然だが、今度は大人のボランティアの方が話しかけてくれた。症状を伝えるとやはり熱中症と判断したのか、同じように冷たい水をビニールに入れたものを二つ作ってくれた。これを両脇の下に挟んでしばらくじっとする。
まだまだ心臓のバクバクが止まらない。併せてこのままではゴールできないんじゃないかとの不安が大きくなる。どうしよう。どうしよう。体は動かないが内心はいてもたってもいられなかった。
そうしているうちに、男性のボランティアが氷を見つけたと言って持ってきてくれた。どこかの容器の底に少しだけ残っていたらしい。探してくれた気持ちがありがたい。
早速その氷をビニールに入れて両脇に挟む。先ほどまでの水とは全く違って冷たい。すごく冷たい。当たり前だけど・・・。
そうしてしばらく動かずにいた。5分ほどは何もできずにじっとする。すると少しだけ話ができるようには回復してきた。ボランティアの方と話をする。リタイアするか聞かれるが、もう少し回復させて何とか先に進みたいと告げる。
ボランティアの男性からは、残り2時間の段階で折り返しポイントを通過できないと回収されると伝えられる。今の時間は午後4時20分。午後7時までに17km先の折り返しポイントに行かないといけない。しかもその後はハーフのベストに近いペースで走らないとゴールにたどり着けない計算だ。
さすがにそれは無理なので、何とかもっと早く行けるか考える。まず思いつくのは、準備のために着込みすぎていたこと。上半身はインナー+腰サポーター+アウターを着ている。これでは放熱がうまくいかない。そのため、インナーは脱いで捨てることにした。
さらに5分氷をあててじっとする。
すると、またもう少し回復してきた。
着替えくらいはできる元気が出てきたので、インナーを脱いで走りだす準備をする。汗と水で濡れたおっさんの下着なんて汚くてごめんなさいと謝りながら、ごみ用のビニール袋に捨てさせてもらった。
1枚脱ぐとやはり涼しい。ここでさらに氷が追加された。またどこかから探してもらったみたい。本当に、本当にありがたい。
この氷を首の後ろに置いてさらに5分・・・。
ようやく、歩くことくらいならできるんじゃないかというくらいに回復してきたみたいだ。エイドステーションに来てから約20分が経過した。本当はもっと回復するまで休むべきなんだろうが、ゴールできないことが不安なので先に進むことにする。
途中で倒れることだけはできないので、自分の体の具合を確かめながら、決して無理をしないことに意識を集中させないといけない。
先ほどもらった氷は首の後ろに置いたまま、最後にスポーツドリンクを一杯飲み、さらに水を頭にかけてもらい、エイドステーションから一歩踏み出した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
順調な滑り出しを迎えたラン。しかし、スタートからたった2kmでレース中最大のトラブルが発生する。フラフラになりながら、ようやくエイドにたどり着いたが・・・。
ようやくエイドステーションにたどり着いた。すごいハイテンションのボランティアの女子高校生が、「私苗字一緒なんですよ!遠くから来たんですね!頑張って!」と話しかけてくれる。
どうやら、ゼッケンから選手の名前を調べ、一人ひとりに声をかけているみたい。とっても素敵な対応。そして、今思い出しても心が暖かくなる声だった。
・・・それなのに、その時の僕は同じテンションで返答できる余裕もなく「水、水、ください。それと氷。ごめん、具合悪くてお話できない・・・」とぼそぼそと返すだけだった。今思い出しても心が冷たくなる。
それでも、「はい、どうぞ!」と言ってお水を差しだしてくれ、さらに、「氷だって。みんな、氷どこにある?」とまわりに聞いてくれる。そして、その声を受けたほかの高校生たちも一斉に探してくれる。なんて素敵なボランティア、運営なんだ―。
しかし、残念なお知らせが。これまで訪れた多くの選手に配ったため、氷はもうないという。板氷で冷やしていた水もすでに氷が解けて若干冷たい程度だった。
仕方がないが、とりあえずできることをする。電解質の多いスポーツドリンクをプラスチックカップ2杯ほど一気飲み。これがいいかはわからないが、体は水分を求めていた。
そしてビニール袋に一番冷たい水を入れてもらい、エイドステーションの奥の日陰に。ここで座り込み、首の後ろにビニールに入った水を置いて体を冷やす。ついでにその水をいくつか垂らして体にかけた。
こんなくらいではまだ全然だが、今度は大人のボランティアの方が話しかけてくれた。症状を伝えるとやはり熱中症と判断したのか、同じように冷たい水をビニールに入れたものを二つ作ってくれた。これを両脇の下に挟んでしばらくじっとする。
まだまだ心臓のバクバクが止まらない。併せてこのままではゴールできないんじゃないかとの不安が大きくなる。どうしよう。どうしよう。体は動かないが内心はいてもたってもいられなかった。
そうしているうちに、男性のボランティアが氷を見つけたと言って持ってきてくれた。どこかの容器の底に少しだけ残っていたらしい。探してくれた気持ちがありがたい。
早速その氷をビニールに入れて両脇に挟む。先ほどまでの水とは全く違って冷たい。すごく冷たい。当たり前だけど・・・。
そうしてしばらく動かずにいた。5分ほどは何もできずにじっとする。すると少しだけ話ができるようには回復してきた。ボランティアの方と話をする。リタイアするか聞かれるが、もう少し回復させて何とか先に進みたいと告げる。
ボランティアの男性からは、残り2時間の段階で折り返しポイントを通過できないと回収されると伝えられる。今の時間は午後4時20分。午後7時までに17km先の折り返しポイントに行かないといけない。しかもその後はハーフのベストに近いペースで走らないとゴールにたどり着けない計算だ。
さすがにそれは無理なので、何とかもっと早く行けるか考える。まず思いつくのは、準備のために着込みすぎていたこと。上半身はインナー+腰サポーター+アウターを着ている。これでは放熱がうまくいかない。そのため、インナーは脱いで捨てることにした。
さらに5分氷をあててじっとする。
すると、またもう少し回復してきた。
着替えくらいはできる元気が出てきたので、インナーを脱いで走りだす準備をする。汗と水で濡れたおっさんの下着なんて汚くてごめんなさいと謝りながら、ごみ用のビニール袋に捨てさせてもらった。
1枚脱ぐとやはり涼しい。ここでさらに氷が追加された。またどこかから探してもらったみたい。本当に、本当にありがたい。
この氷を首の後ろに置いてさらに5分・・・。
ようやく、歩くことくらいならできるんじゃないかというくらいに回復してきたみたいだ。エイドステーションに来てから約20分が経過した。本当はもっと回復するまで休むべきなんだろうが、ゴールできないことが不安なので先に進むことにする。
途中で倒れることだけはできないので、自分の体の具合を確かめながら、決して無理をしないことに意識を集中させないといけない。
先ほどもらった氷は首の後ろに置いたまま、最後にスポーツドリンクを一杯飲み、さらに水を頭にかけてもらい、エイドステーションから一歩踏み出した。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月23日水曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑲
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑲
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
予定の1時間遅れでバイクフィニッシュするも、残り6時間余り。最後のランパートが始まった。
皆生大会のトランジットには、タイム計測のチェックポイントが無い。このため、バイクのタイムは、バイクを終えてトランジットに入ったタイミングで計測。トランジットも含め、ゴールまでの時間がランパートのタイムとなる。
このため、トランジットを抜けてランコースに入る時には、何もチェックされず。ただ、トランジットを抜けたところには、ランコース最初のエイドステーションがあった。
これは助かる!バイクパートの最後をほとんど給水できず、さらに10分以上トランジットでランの準備をしてしまった。30分ほどは水分摂取ができていない時間帯が発生したことになる。
ここではボトルではなく、プラスチックのカップに飲み物が入っている。コーラとスポーツドリンクを一気飲みする。さらに水を頭にかけて、塩をつけたレモンをほおばる。1つ。2つ・・・。
しかし、皆が塩レモンを食べているため、塩が濡れて固まってしまい、ほとんど取れない。それを見かねたボランティアの方が、新たに塩を追加してくれた。これをたっぷりとってレモンと一緒に最後に一つを口に運んだ。
後から考えると、これがいけなかった・・・。
エイドステーションを抜けて走り出す。あれ、体が軽い。
実際には8時間以上経過しているので疲れているんだけれど、思っていたより体が軽い。
通常、バイクパートからランパートに移ると、自分の体じゃないみたいに重く感じるもので、その感覚をなくすためにもクロストレーニングをしているんだけど、本当に軽かった。
たぶん、トランジットに時間がかかっていたので多少なりとも疲れが取れたこと、また、キネシオテープを貼りまくった効果が出ていたんだと思う。
これならいけるんじゃない?すごく前向きな気持ちになりながらも、慎重に慎重にと言い聞かせ、とりあえず最初の1kmはキロ7分で通過。海岸沿いから町場の方に曲がって大通りに向う。2km通過もキロ7分ペース。
特につらくない。これならいけそう。徐々にペースを上げていこうと思ったその時、それは突然来た―。
急に気持ちが悪くなる。吐き気がする。何より喉が渇いた。
なんでだ?ついさっき飲んだばっかりじゃないか。
しかし、心臓の音が急に大きく聞こえるようになる。早鐘のようにバクバクバクバクと言っている。とてもじゃないけど走っていられない。
なんだ?なんだ?なんだ?
急激な体の変化にパニックになる。さっき抜いて行った女性ランナーから抜き返される。
それでも体に力が入らない。
真っ白になった頭で最初に思い浮かんだのが、熱中症。
自分は今まで熱中症になった経験がないので、話に聞いた情報しかないが、どうやら間違いなさそう。とにかく喉が渇いた―。
交差点に立っているボランティアの方に次のエイドはどこにあるかを聞く。
あと1kmほど先だという。
遠い。
今の自分にとっては100m先でも遠いのに、1km。歩いたら10分以上かかる。
どうする?
でもここで座り込んでも何もできない。熱中症ならエイドで体を冷やさないと大変なことになるかもしれない。
仕方ない。とにかく歩く。一歩一歩足を進める。まさか、さっきまであれほど好調に進んでいたのに。ああ、とにかく喉が渇いた。
ひたすら、喉の渇きに耐え、バクバクいう心臓の音に不安を募らせながら歩いた。
今はタイムを気にする時ではない。何とかエイドステーションまでたどり着いて立て直さないといけない。
原因を考える―。考える・・・考える・・・塩だ。
ランパートに入った時に舐めた塩。レモンと一緒に大量に摂取してしまった塩。これが対内の塩分濃度を急激に狂わせたのに違いない。
それまで、バイクパートでは、大量の汗をかいて、その汗が走っているときの風で乾かされることで体温が下がっていた。そのため、36度を超える灼熱のレースでも熱中症にならずにすんでいた。
しかし、ランでは時速10kmも出るか出ないかのペースでしか走れない。そのため、熱の発散がうまくいかなくなった。
さらに、塩をなめすぎたため、体内の塩分濃度が上昇。当然体は均衡を保とうとして、体内の水分量の減少を抑えようとする。つまり、汗をかかなくなる。
良く、塩分の取りすぎはむくみにつながるという話を聞くと思う。これは、高くなった塩分濃度を何とか平準化しようと体が水分を貯めようとするからだ。
汗が出ない。さらに風に当たらない。こうした二つの原因から、体温が急激に上昇―。
その結果の熱中症症状だ。
この分析はほぼ正しいと思う。
レース後、循環器と高血圧を専門にしている医者の友人に、当時の状況と分析を伝えたところ、概ね同じ意見だった。
分析はできたが、対策は取れていない。
喉が乾いているということは、体内の水分量が足りていないということ。何か飲んで塩分濃度を下げ、汗が出るようにする。そして体温を下げる。
とにかく、体温を下げないことには何も始まらない。そのためには、エイドステーションに何とかしてたどり着かないと。
遠くにボランティアの人が何人か集まっているのが見えてきた。あれがエイドステーションか・・・。
見えているのになんだかよく見えない。まっすぐ歩いているはずなのに、進路右側にある家の壁にぶつかりそうになる。
あと200m。あと100m。
まさにふらふらの状態で、何とか何とか、エイドにたどり着いた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
予定の1時間遅れでバイクフィニッシュするも、残り6時間余り。最後のランパートが始まった。
皆生大会のトランジットには、タイム計測のチェックポイントが無い。このため、バイクのタイムは、バイクを終えてトランジットに入ったタイミングで計測。トランジットも含め、ゴールまでの時間がランパートのタイムとなる。
このため、トランジットを抜けてランコースに入る時には、何もチェックされず。ただ、トランジットを抜けたところには、ランコース最初のエイドステーションがあった。
これは助かる!バイクパートの最後をほとんど給水できず、さらに10分以上トランジットでランの準備をしてしまった。30分ほどは水分摂取ができていない時間帯が発生したことになる。
ここではボトルではなく、プラスチックのカップに飲み物が入っている。コーラとスポーツドリンクを一気飲みする。さらに水を頭にかけて、塩をつけたレモンをほおばる。1つ。2つ・・・。
しかし、皆が塩レモンを食べているため、塩が濡れて固まってしまい、ほとんど取れない。それを見かねたボランティアの方が、新たに塩を追加してくれた。これをたっぷりとってレモンと一緒に最後に一つを口に運んだ。
後から考えると、これがいけなかった・・・。
エイドステーションを抜けて走り出す。あれ、体が軽い。
実際には8時間以上経過しているので疲れているんだけれど、思っていたより体が軽い。
通常、バイクパートからランパートに移ると、自分の体じゃないみたいに重く感じるもので、その感覚をなくすためにもクロストレーニングをしているんだけど、本当に軽かった。
たぶん、トランジットに時間がかかっていたので多少なりとも疲れが取れたこと、また、キネシオテープを貼りまくった効果が出ていたんだと思う。
これならいけるんじゃない?すごく前向きな気持ちになりながらも、慎重に慎重にと言い聞かせ、とりあえず最初の1kmはキロ7分で通過。海岸沿いから町場の方に曲がって大通りに向う。2km通過もキロ7分ペース。
特につらくない。これならいけそう。徐々にペースを上げていこうと思ったその時、それは突然来た―。
急に気持ちが悪くなる。吐き気がする。何より喉が渇いた。
なんでだ?ついさっき飲んだばっかりじゃないか。
しかし、心臓の音が急に大きく聞こえるようになる。早鐘のようにバクバクバクバクと言っている。とてもじゃないけど走っていられない。
なんだ?なんだ?なんだ?
急激な体の変化にパニックになる。さっき抜いて行った女性ランナーから抜き返される。
それでも体に力が入らない。
真っ白になった頭で最初に思い浮かんだのが、熱中症。
自分は今まで熱中症になった経験がないので、話に聞いた情報しかないが、どうやら間違いなさそう。とにかく喉が渇いた―。
交差点に立っているボランティアの方に次のエイドはどこにあるかを聞く。
あと1kmほど先だという。
遠い。
今の自分にとっては100m先でも遠いのに、1km。歩いたら10分以上かかる。
どうする?
でもここで座り込んでも何もできない。熱中症ならエイドで体を冷やさないと大変なことになるかもしれない。
仕方ない。とにかく歩く。一歩一歩足を進める。まさか、さっきまであれほど好調に進んでいたのに。ああ、とにかく喉が渇いた。
ひたすら、喉の渇きに耐え、バクバクいう心臓の音に不安を募らせながら歩いた。
今はタイムを気にする時ではない。何とかエイドステーションまでたどり着いて立て直さないといけない。
原因を考える―。考える・・・考える・・・塩だ。
ランパートに入った時に舐めた塩。レモンと一緒に大量に摂取してしまった塩。これが対内の塩分濃度を急激に狂わせたのに違いない。
それまで、バイクパートでは、大量の汗をかいて、その汗が走っているときの風で乾かされることで体温が下がっていた。そのため、36度を超える灼熱のレースでも熱中症にならずにすんでいた。
しかし、ランでは時速10kmも出るか出ないかのペースでしか走れない。そのため、熱の発散がうまくいかなくなった。
さらに、塩をなめすぎたため、体内の塩分濃度が上昇。当然体は均衡を保とうとして、体内の水分量の減少を抑えようとする。つまり、汗をかかなくなる。
良く、塩分の取りすぎはむくみにつながるという話を聞くと思う。これは、高くなった塩分濃度を何とか平準化しようと体が水分を貯めようとするからだ。
汗が出ない。さらに風に当たらない。こうした二つの原因から、体温が急激に上昇―。
その結果の熱中症症状だ。
この分析はほぼ正しいと思う。
レース後、循環器と高血圧を専門にしている医者の友人に、当時の状況と分析を伝えたところ、概ね同じ意見だった。
分析はできたが、対策は取れていない。
喉が乾いているということは、体内の水分量が足りていないということ。何か飲んで塩分濃度を下げ、汗が出るようにする。そして体温を下げる。
とにかく、体温を下げないことには何も始まらない。そのためには、エイドステーションに何とかしてたどり着かないと。
遠くにボランティアの人が何人か集まっているのが見えてきた。あれがエイドステーションか・・・。
見えているのになんだかよく見えない。まっすぐ歩いているはずなのに、進路右側にある家の壁にぶつかりそうになる。
あと200m。あと100m。
まさにふらふらの状態で、何とか何とか、エイドにたどり着いた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月21日月曜日
薪ストーブのメリットとデメリット5
薪ストーブ歴10年の筆者が、住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第5弾。
今回は、上手な薪の燃やし方についてです。
目次。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
2.薪の燃焼について知ろう。
3.空気の通り道を意識しよう。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
上手な薪の燃やし方を知る前に、まずは、自宅の薪の燃やし方が良いか悪いかを知りましょう。筆者はこれまで薪ストーブを使用しているお宅を数多く見てきましたが、薪ストーブ歴20年とかいう超ベテランの方でも、きちんと薪が燃えていない家は結構あってびっくりします。
今現在も薪ストーブを使っているという方はもちろん、薪ストーブを導入したいと考えていて、現在検討中の方も是非薪の上手な燃やし方を一緒に学んでいきましょう。
さて、現在薪ストーブを使っている方で、薪の燃やし方が上手なのか下手なのかを知る方法は簡単です。
ガラスが全くなく、全方位鋳物でできている30年以上前の古い薪ストーブならいざ知らず、現代の薪ストーブには炎を見るための耐熱ガラスがついています。きちんとしたメーカーの純正品(10万円以上の薪ストーブ)はもちろん、ホームセンターで1万~3万円くらいで売っている、二次燃焼機能がついていないストーブでもついています。
このガラスが真っ黒になっていて、炎がなかなか見えないという方、アウトです。さらに、1日使っただけでガラスが真っ黒になるという方は、煙突から出る可燃性ガスの臭いで近所の方とトラブルになる可能性が非常に高くなりますし、煙道火災の危険性も極めて高くなりますので、ぜひ注意してください。
2.薪の燃焼について知ろう。
では、どのように燃やしたら、薪はきちんと燃えてくれるのでしょうか。それをマスターするためには、まず薪が燃える仕組み、薪の燃焼について知る必要があります。
前回と一部重複しますが、薪は熱が加わるとまず薪の中の水分が蒸発します。乾燥が十分でない薪は、この時点でシューシューと音がします。さらに熱が加えられると、薪の中から可燃性ガスが噴出してきます。大量の煙が出るのはこの段階です。
新しい薪を入れた後、5分くらいした時に薪をよく見てください。薪の断面からガスバーナーのように、炎が噴き出しているところが見つけられるはずです。
この可燃性ガスは、非常に臭いです。山形弁?で「いぶ臭い」とも言いますが、何とも言えない臭いがします。キャンプファイヤーの炎を水をかけて消した後の臭いとか、火事の現場でよく嗅ぐ臭いです。
その後、水分や可燃性ガスが抜けたあとの薪は次第に燠になっていきます。いわゆる炭の状態ですね。この段階になると煙突からほとんど煙は出ません。最も効率よく燃えているのがこの状態です。
3.空気の通り道を意識しよう。
では、どのようにして燃やせばうまく燠ができて効率よく燃焼できるのでしょうか。下記に我が家の着火~安定燃焼までの流れを記します。
まず、着火ですが、我が家はベスタ―という着火剤を使っています。新聞紙を使っていた時代もあったのですが、こちらの方が灰が煙突から飛ぶこともないですし、何より安価です。これを2~3センチにちぎってケチケチと使っています。
この上に木端を置きます。よく使うのは薪を割った時に出る木端です。さらにその上に剪定した枝を長さをそろえて切っておいたものを5本~10本ほど並べます。この本数は、次に置く薪の太さが細ければ少なく、太ければ多くです。
その上に置く薪はバッテンで置くのが重要なポイントです。直角にクロスさせて置きます。それも手前側にハの字のすそ広がりが来るようにして、奥の方4分の1の長さのあたりで薪がクロスするように置きます。さらに、それぞれにクロスするように、ストーブの中が薪でいっぱいになってもう置けない・・・というまでひたすら薪を詰め込みます。
最初に組み上げる段階で、ここまでたくさん薪を入れない人がたくさんいます。太薪を2本くらいしか入れないとか。この場合、最初の太薪がきちんと燃焼してくれません。なぜか。それは、炉内の温度が上がらないからです。たくさんの薪を入れると、早い段階から炉内の温度が高温になります。そうすると、可燃性ガスにきちんと火が付きます。ボーボー燃えている状態ですね。可燃性ガスは、可燃性とか言うくせに温度が低いと全然燃えてくれません。一定以上の温度が必要となります。
燃えないガスはどうなるかというと、煙突から外に逃げてしまいます。せっかく薪を燃料に炎という形で熱を取り出そうとしているのに、温度が低いせいで逃がすのは勿体ないです。さらに、このガスは臭いので、うまく燃えないまま煙突から出し続けると、ご近所さんの心象に非常に悪くなります。外で洗濯物乾かしていたら、洗濯物に確実に臭いが移りますしね。
さて、薪をクロスさせて置いていくのは、空気の通り道を作るためです。火は酸素が足りないと燃えてくれません。同じ向きに薪を並べてしまうと、薪と薪の間を空気が通らなくなってしまうので、うまく燃えません。そのためにクロスにして空気の通り道を確保してあげます。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
最初に炉内にたくさんの薪を置くこと、それもそれぞれをクロスさせるように並べることが、効率的な燃焼の第一のポイントです。着火直後は必ず煙が出ます。煙には可燃性ガスが含まれるので臭いがします。
メーカー品の薪ストーブについている二次燃焼機能や触媒は、この煙を二次燃焼によって再度燃焼させて効率よく熱を生み出すと共に、煙を出さないことを目的につけられています。
しかし、そうした機能は「炉内が高温」にならないと本来の性能を発揮できません。炉内が高温になるには、最初にたくさんの薪を燃やす必要があります。
こうした燃やし方をすることで、正面のガラスはいつもきれいなままに保たれますし、ご近所さんとのトラブルも未然に防げます。
ちなみに、我が家のガラスは1シーズン一度も拭かなくても大丈夫です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
今回は、上手な薪の燃やし方についてです。
目次。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
2.薪の燃焼について知ろう。
3.空気の通り道を意識しよう。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
1.案外きちんと薪が燃えていない家が多い。
上手な薪の燃やし方を知る前に、まずは、自宅の薪の燃やし方が良いか悪いかを知りましょう。筆者はこれまで薪ストーブを使用しているお宅を数多く見てきましたが、薪ストーブ歴20年とかいう超ベテランの方でも、きちんと薪が燃えていない家は結構あってびっくりします。
今現在も薪ストーブを使っているという方はもちろん、薪ストーブを導入したいと考えていて、現在検討中の方も是非薪の上手な燃やし方を一緒に学んでいきましょう。
さて、現在薪ストーブを使っている方で、薪の燃やし方が上手なのか下手なのかを知る方法は簡単です。
ガラスが全くなく、全方位鋳物でできている30年以上前の古い薪ストーブならいざ知らず、現代の薪ストーブには炎を見るための耐熱ガラスがついています。きちんとしたメーカーの純正品(10万円以上の薪ストーブ)はもちろん、ホームセンターで1万~3万円くらいで売っている、二次燃焼機能がついていないストーブでもついています。
このガラスが真っ黒になっていて、炎がなかなか見えないという方、アウトです。さらに、1日使っただけでガラスが真っ黒になるという方は、煙突から出る可燃性ガスの臭いで近所の方とトラブルになる可能性が非常に高くなりますし、煙道火災の危険性も極めて高くなりますので、ぜひ注意してください。
2.薪の燃焼について知ろう。
では、どのように燃やしたら、薪はきちんと燃えてくれるのでしょうか。それをマスターするためには、まず薪が燃える仕組み、薪の燃焼について知る必要があります。
前回と一部重複しますが、薪は熱が加わるとまず薪の中の水分が蒸発します。乾燥が十分でない薪は、この時点でシューシューと音がします。さらに熱が加えられると、薪の中から可燃性ガスが噴出してきます。大量の煙が出るのはこの段階です。
新しい薪を入れた後、5分くらいした時に薪をよく見てください。薪の断面からガスバーナーのように、炎が噴き出しているところが見つけられるはずです。
この可燃性ガスは、非常に臭いです。山形弁?で「いぶ臭い」とも言いますが、何とも言えない臭いがします。キャンプファイヤーの炎を水をかけて消した後の臭いとか、火事の現場でよく嗅ぐ臭いです。
その後、水分や可燃性ガスが抜けたあとの薪は次第に燠になっていきます。いわゆる炭の状態ですね。この段階になると煙突からほとんど煙は出ません。最も効率よく燃えているのがこの状態です。
3.空気の通り道を意識しよう。
では、どのようにして燃やせばうまく燠ができて効率よく燃焼できるのでしょうか。下記に我が家の着火~安定燃焼までの流れを記します。
まず、着火ですが、我が家はベスタ―という着火剤を使っています。新聞紙を使っていた時代もあったのですが、こちらの方が灰が煙突から飛ぶこともないですし、何より安価です。これを2~3センチにちぎってケチケチと使っています。
この上に木端を置きます。よく使うのは薪を割った時に出る木端です。さらにその上に剪定した枝を長さをそろえて切っておいたものを5本~10本ほど並べます。この本数は、次に置く薪の太さが細ければ少なく、太ければ多くです。
その上に置く薪はバッテンで置くのが重要なポイントです。直角にクロスさせて置きます。それも手前側にハの字のすそ広がりが来るようにして、奥の方4分の1の長さのあたりで薪がクロスするように置きます。さらに、それぞれにクロスするように、ストーブの中が薪でいっぱいになってもう置けない・・・というまでひたすら薪を詰め込みます。
最初に組み上げる段階で、ここまでたくさん薪を入れない人がたくさんいます。太薪を2本くらいしか入れないとか。この場合、最初の太薪がきちんと燃焼してくれません。なぜか。それは、炉内の温度が上がらないからです。たくさんの薪を入れると、早い段階から炉内の温度が高温になります。そうすると、可燃性ガスにきちんと火が付きます。ボーボー燃えている状態ですね。可燃性ガスは、可燃性とか言うくせに温度が低いと全然燃えてくれません。一定以上の温度が必要となります。
燃えないガスはどうなるかというと、煙突から外に逃げてしまいます。せっかく薪を燃料に炎という形で熱を取り出そうとしているのに、温度が低いせいで逃がすのは勿体ないです。さらに、このガスは臭いので、うまく燃えないまま煙突から出し続けると、ご近所さんの心象に非常に悪くなります。外で洗濯物乾かしていたら、洗濯物に確実に臭いが移りますしね。
さて、薪をクロスさせて置いていくのは、空気の通り道を作るためです。火は酸素が足りないと燃えてくれません。同じ向きに薪を並べてしまうと、薪と薪の間を空気が通らなくなってしまうので、うまく燃えません。そのためにクロスにして空気の通り道を確保してあげます。
4.効率的な燃焼がトラブルを未然に防ぐ。
最初に炉内にたくさんの薪を置くこと、それもそれぞれをクロスさせるように並べることが、効率的な燃焼の第一のポイントです。着火直後は必ず煙が出ます。煙には可燃性ガスが含まれるので臭いがします。
メーカー品の薪ストーブについている二次燃焼機能や触媒は、この煙を二次燃焼によって再度燃焼させて効率よく熱を生み出すと共に、煙を出さないことを目的につけられています。
しかし、そうした機能は「炉内が高温」にならないと本来の性能を発揮できません。炉内が高温になるには、最初にたくさんの薪を燃やす必要があります。
こうした燃やし方をすることで、正面のガラスはいつもきれいなままに保たれますし、ご近所さんとのトラブルも未然に防げます。
ちなみに、我が家のガラスは1シーズン一度も拭かなくても大丈夫です。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月20日日曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑱
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑱
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
当初見込んでいたペースでは全然走れず、予定の1時間遅れでバイクフィニッシュした。しかも、遅れと暑さはトランジットで致命的なミスを誘発した―。
当初予定よりも1時間遅れでバイクフィニッシュ。それでもバイクでは結構順位を上げていた。スイムを上がった時点では、後ろに20人くらいしかいなかったが、バイクパートで100人以上を抜くことができ、700位台まで到達(低レベルの話だけど・・・)。
広いトランジットエリアながら、迷うことなく自分のバイクラックを見つけることができた。バイクをラックにかけヘルメットを脱ぐ。バイクシューズからランシューズに履き替えて着替え用のテントへ。
なんといっても初めてのフルマラソン。頭をよぎるのは初めて出場したハーフで、18kmを過ぎた時点で左の膝が痛くなり、残り3kmを30分以上かけてゴールした苦い記憶。
そうならないように、キネシオテープで厳重にテーピングを施すことにしていた。
テープを貼るのは、足裏の豆対策とアーチを確保するための1枚。ちょうど土踏まずの位置に左右1枚ずつ貼る。次いでかかとからアキレス腱、ふくらはぎに伸びるように1枚。さらにアーチをしっかりとさせるために、8の字を描くように足の裏からアキレス腱の上、ふくらはぎにかけて貼った。アンクルバンドが邪魔になるので一度外す。
このほか、膝の痛みを予防するために、大腿四頭筋の内側と外側から、膝の皿に沿ってふくらはぎに到達するように2枚。足の表と裏のバランスを取るために、ひざ裏からおしりにかけて、大体二頭筋に1枚。
合わせて片足6枚ずつテーピングを施した。
テープは前日にキチンと長さをそろえて切っておいたもの。ただ、暑さで朦朧としてしまい、間違ったところに貼ってしまってはいけないと、テープにそれぞれ右の1枚目はr-1、2枚目はr-2などと番号をふっていった。
これが正解だった。普段なら、長さを見ただけで絶対に間違えないテーピング。なのに、どれがどこに貼るものだったのか、まったくわからない。なんだか、酒に酔っているのに自分は素面だと思い込んでいるような状態。正直、ここまで頭が働かなくなるとは思っていなかった。
真夏の大会で、8時間以上ぶっ続けで動き続けるとこうなるということも非常に大きな発見。これからロングの大会に初めて出ようという人は、こういう状況も想定して準備をすることをお勧めします。
番号に沿って1枚1枚丁寧に張っていく。しかも、汗で取れてしまわないよう、しっかりと粘着スプレーを吹きつけながら作業した。僕は汗を大量にかく上、足が(足だけでなく全身が)毛深い方なので、テープが簡単にはがれてしまう。そこで、山形のスポーツ用品店の店頭ではなかなか売っていない粘着テープをアマゾンで購入し、持ってきていたのだ。
約10分かけてテーピング終了。念押しのためロングタイツもはく。これでほぼほぼはがれる心配はないだろう。最後にニプレス替わりに乳首にも5センチほどに切ったテープを貼りつける。
おっさんの乳首なんて汚い話ですみません。でも、女性と違って男性はブラをしているわけでないので、結構すれるんです。オリンピックディスタンスの10kmのランでも、何のケアもしていないとゴールの時に血だらけになっていたこともあるくらい。ワセリンをしっかり塗ってはいるものの、それだけでは心配で、張り付けた。
そしてもう一つの懸念が腰の痛み。これに備えるため、腰のサポーターも巻く。サポーターも汗でこすれたりしないよう、インナーウェアを着た上でという念の入れよう。
ずいぶんな重装備になってしまった。それもこれもすべて、初めての距離に対する不安や恐怖を追い払おうとして行ったもの。こうした準備自体は間違ってはいないことなんだけど、結果としてはこの作業が最悪の事態を引き起こすことになった。
全ての準備を終え、着替えテントの中に散乱していたキネシオののり紙やらバイクパンツやらを袋にいっしょくたにしまう。その時、薄い横幕ごしに隣の女子用テントから、「あと6時間もあるからゴールは楽勝よ」なんて声が聞こえてきた。どうやら同じくらいのタイムでランに移行しようとする選手らしい。「皆生のランはアップダウンがほとんどないからもう大丈夫よ」なんて声も聞こえる。
どうやら過去にも皆生の大会に出場していた人らしい。
そして、そうした経験に裏打ちされた人の言葉に、正直ほっとする。6時間あれば、普通は完走できると考える。ハーフは1時間50分くらいなのだから、2時間かかったとしても21kmを4時間。ずーっと歩いてもゴールできるペースだ。そう。大丈夫。大丈夫なはずなんだ。ずっと言い聞かせていたが、それでも経験のないことが本当にできるのか、不安が先に立ってしまう。
そうした不安が少しだけ軽くなり、長くも短いランパートへの一歩を踏み出した―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
当初見込んでいたペースでは全然走れず、予定の1時間遅れでバイクフィニッシュした。しかも、遅れと暑さはトランジットで致命的なミスを誘発した―。
当初予定よりも1時間遅れでバイクフィニッシュ。それでもバイクでは結構順位を上げていた。スイムを上がった時点では、後ろに20人くらいしかいなかったが、バイクパートで100人以上を抜くことができ、700位台まで到達(低レベルの話だけど・・・)。
広いトランジットエリアながら、迷うことなく自分のバイクラックを見つけることができた。バイクをラックにかけヘルメットを脱ぐ。バイクシューズからランシューズに履き替えて着替え用のテントへ。
なんといっても初めてのフルマラソン。頭をよぎるのは初めて出場したハーフで、18kmを過ぎた時点で左の膝が痛くなり、残り3kmを30分以上かけてゴールした苦い記憶。
そうならないように、キネシオテープで厳重にテーピングを施すことにしていた。
テープを貼るのは、足裏の豆対策とアーチを確保するための1枚。ちょうど土踏まずの位置に左右1枚ずつ貼る。次いでかかとからアキレス腱、ふくらはぎに伸びるように1枚。さらにアーチをしっかりとさせるために、8の字を描くように足の裏からアキレス腱の上、ふくらはぎにかけて貼った。アンクルバンドが邪魔になるので一度外す。
このほか、膝の痛みを予防するために、大腿四頭筋の内側と外側から、膝の皿に沿ってふくらはぎに到達するように2枚。足の表と裏のバランスを取るために、ひざ裏からおしりにかけて、大体二頭筋に1枚。
合わせて片足6枚ずつテーピングを施した。
テープは前日にキチンと長さをそろえて切っておいたもの。ただ、暑さで朦朧としてしまい、間違ったところに貼ってしまってはいけないと、テープにそれぞれ右の1枚目はr-1、2枚目はr-2などと番号をふっていった。
これが正解だった。普段なら、長さを見ただけで絶対に間違えないテーピング。なのに、どれがどこに貼るものだったのか、まったくわからない。なんだか、酒に酔っているのに自分は素面だと思い込んでいるような状態。正直、ここまで頭が働かなくなるとは思っていなかった。
真夏の大会で、8時間以上ぶっ続けで動き続けるとこうなるということも非常に大きな発見。これからロングの大会に初めて出ようという人は、こういう状況も想定して準備をすることをお勧めします。
番号に沿って1枚1枚丁寧に張っていく。しかも、汗で取れてしまわないよう、しっかりと粘着スプレーを吹きつけながら作業した。僕は汗を大量にかく上、足が(足だけでなく全身が)毛深い方なので、テープが簡単にはがれてしまう。そこで、山形のスポーツ用品店の店頭ではなかなか売っていない粘着テープをアマゾンで購入し、持ってきていたのだ。
約10分かけてテーピング終了。念押しのためロングタイツもはく。これでほぼほぼはがれる心配はないだろう。最後にニプレス替わりに乳首にも5センチほどに切ったテープを貼りつける。
おっさんの乳首なんて汚い話ですみません。でも、女性と違って男性はブラをしているわけでないので、結構すれるんです。オリンピックディスタンスの10kmのランでも、何のケアもしていないとゴールの時に血だらけになっていたこともあるくらい。ワセリンをしっかり塗ってはいるものの、それだけでは心配で、張り付けた。
そしてもう一つの懸念が腰の痛み。これに備えるため、腰のサポーターも巻く。サポーターも汗でこすれたりしないよう、インナーウェアを着た上でという念の入れよう。
ずいぶんな重装備になってしまった。それもこれもすべて、初めての距離に対する不安や恐怖を追い払おうとして行ったもの。こうした準備自体は間違ってはいないことなんだけど、結果としてはこの作業が最悪の事態を引き起こすことになった。
全ての準備を終え、着替えテントの中に散乱していたキネシオののり紙やらバイクパンツやらを袋にいっしょくたにしまう。その時、薄い横幕ごしに隣の女子用テントから、「あと6時間もあるからゴールは楽勝よ」なんて声が聞こえてきた。どうやら同じくらいのタイムでランに移行しようとする選手らしい。「皆生のランはアップダウンがほとんどないからもう大丈夫よ」なんて声も聞こえる。
どうやら過去にも皆生の大会に出場していた人らしい。
そして、そうした経験に裏打ちされた人の言葉に、正直ほっとする。6時間あれば、普通は完走できると考える。ハーフは1時間50分くらいなのだから、2時間かかったとしても21kmを4時間。ずーっと歩いてもゴールできるペースだ。そう。大丈夫。大丈夫なはずなんだ。ずっと言い聞かせていたが、それでも経験のないことが本当にできるのか、不安が先に立ってしまう。
そうした不安が少しだけ軽くなり、長くも短いランパートへの一歩を踏み出した―。
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人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月19日土曜日
薪ストーブのメリットデメリット(4)薪の燃焼について
薪ストーブ歴10年の筆者が、住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第4弾。
今回は、薪の乾燥についてです。
目次
1.良い薪とは
2.薪の乾燥具合とは
2.なぜ薪が乾燥していないといけないの?
4.まとめ
1.良い薪とは
薪ストーブの燃料は言わずと知れた薪です。薪が燃えることで発生する熱を使って部屋を暖めます。ただし、薪には良い薪と悪い薪があります。ここが、石油ストーブやエアコン暖房との大きな違いです。だって、石油ストーブで使う灯油や、電力会社から送られてくる電気に、品質がいいとか悪いとかあります?
そりゃ、厳密には灯油には精製の具合であったり、電気も電圧が安定するしない・・・といった違いがあるかもしれませんが、基本的に今の日本で暮らしている限り、その品質のブレは考えなくておいいいものです。全国どこに行っても同じ品質のものが買えますし、それを前提に僕たちの生活は成り立っています。
しかし、薪には明らかな品質の違いがあります。この違いには、①木の種類による違いと②乾燥による違いがあります。
①の木の種類による違いについて詳細に説明すると、本が一冊書けるくらいかかるので、別の機会にご説明するとして、今回は薪の乾燥具合による品質の違いについてです。
2.薪の乾燥具合とは
一般に、含水率が20%を切る薪が良い薪とされています。
含水率とは、読んで字のごとし、薪の中に含まれている水分の量のことです。
含水率は、正確に測るならば、含水率計という機械を使う必要があります。金属の針を薪に軽く刺して薪の水分を測る機械なのですが、これも品質はピンキリで、3000円台のものから数万円するものもあります。
筆者は、3000円台の含水率計を持っていますが、あまり役に立っていません。
だって、いちいち測るの面倒なんだもん。
含水率計を持っていない、もしくは筆者と同じで測るのが面倒という人も、心配しなくて大丈夫です。含水率20%を切るような良質の薪かどうか、簡単な見分け方がありますから。
それは、給薪の時に確認できます。
ストーブの中で燠ができて、そろそろ次の薪を足さないといけないな・・・というタイミングで、薪をストーブの中に入れ、10秒以内に薪に火が付いたらその薪はOKです。
きっと含水率も20%を切っているでしょう。
20秒かかったら何とかギリギリ合格点です。本来なら来シーズン使った方がいい薪ですが、なかなかそんなに大量の薪を準備できないですよね。このくらい乾燥していれば、まずは快適な薪ストーブライフが送れると思います。
40秒以上かからないと火がつかない。もしくは、窓を薄く開けて強烈に中に空気を入れないと火がつかない薪。これはダメな薪です。薪ストーブで燃やすには乾燥が足りていません。この段階の薪だと、割ってから2か月とか3か月くらいだと思います。もし、薪業者から買った薪が火がつくまで2分以上かかるようなら、文句を言っていいレベルです。
部屋が暖かくならないだけでなく、煙突にタールが付着する、煙がくさい等、様々な不具合が発生します。
3.なぜ薪が乾燥していないといけないの?
では、なぜ薪は乾燥していないといけないのでしょうか。
薪の燃焼の仕組みについては次回以降に詳しく説明しますが、まず、わかりやすいのは、
薪が燃えるには薪の中にある水分が蒸発する必要があるということです。
濡れた紙にはそのままでは火がつかないですよね。紙が乾いてから火が付きます。薪も一緒です。薪の中にある水分がなくなってから初めて火が付きます。
このため、薪の中の水分が多い(含水率が高い)薪の場合、薪に火がつくまで多くの時間と熱エネルギーを薪の水分を蒸発させるのに使われます。液体→気体の状態変化には多くの熱エネルギーが消費されますので、その分、薪が燃えて部屋を暖めるはずだったエネルギーが無駄に使われてしまうことになります。
合わせて、薪が燃えると煙が出ますが、きちんと燃焼しないとこの煙の中に、燃焼しきれなかった可燃性ガスやタール分などが入ってしまいます。可燃性ガスは、いぶくさい臭いがしますし、タールは煙突の中に付着して煙道火災の原因になります。
煙道火災は、軽いものなら煙突の中が燃えるだけですが、ひどくなると本当の火事につながります。何より、消防に通報されたら(もしくは自分で119番通報したら)、多くの消防車が来て大騒ぎになりますから、次から薪ストーブを使うことは世間体的に厳しくなりますよね。絶対にやらないように注意しないといけません。
4.まとめ
快適な薪ストーブライフを送るためには、一にも二にも乾燥した薪を使う必要があります。木の種類による差はそれに比べたら小さい話です。
含水率20%を切るような乾燥した薪を作るには、2年は乾燥させないといけないと一般的には言われています。
でも、毎年薪は業者から買っている人や、薪棚に限りがあるので、2年分の薪を確保しておくのは難しいケースも多いと思います。
さらには、いい薪を使っているのに、うまく燃やすことができずにいる家庭も少なくありません。
このため、次回は上手な薪の燃やし方について解説します。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
今回は、薪の乾燥についてです。
目次
1.良い薪とは
2.薪の乾燥具合とは
2.なぜ薪が乾燥していないといけないの?
4.まとめ
1.良い薪とは
薪ストーブの燃料は言わずと知れた薪です。薪が燃えることで発生する熱を使って部屋を暖めます。ただし、薪には良い薪と悪い薪があります。ここが、石油ストーブやエアコン暖房との大きな違いです。だって、石油ストーブで使う灯油や、電力会社から送られてくる電気に、品質がいいとか悪いとかあります?
そりゃ、厳密には灯油には精製の具合であったり、電気も電圧が安定するしない・・・といった違いがあるかもしれませんが、基本的に今の日本で暮らしている限り、その品質のブレは考えなくておいいいものです。全国どこに行っても同じ品質のものが買えますし、それを前提に僕たちの生活は成り立っています。
しかし、薪には明らかな品質の違いがあります。この違いには、①木の種類による違いと②乾燥による違いがあります。
①の木の種類による違いについて詳細に説明すると、本が一冊書けるくらいかかるので、別の機会にご説明するとして、今回は薪の乾燥具合による品質の違いについてです。
2.薪の乾燥具合とは
一般に、含水率が20%を切る薪が良い薪とされています。
含水率とは、読んで字のごとし、薪の中に含まれている水分の量のことです。
含水率は、正確に測るならば、含水率計という機械を使う必要があります。金属の針を薪に軽く刺して薪の水分を測る機械なのですが、これも品質はピンキリで、3000円台のものから数万円するものもあります。
筆者は、3000円台の含水率計を持っていますが、あまり役に立っていません。
だって、いちいち測るの面倒なんだもん。
含水率計を持っていない、もしくは筆者と同じで測るのが面倒という人も、心配しなくて大丈夫です。含水率20%を切るような良質の薪かどうか、簡単な見分け方がありますから。
それは、給薪の時に確認できます。
ストーブの中で燠ができて、そろそろ次の薪を足さないといけないな・・・というタイミングで、薪をストーブの中に入れ、10秒以内に薪に火が付いたらその薪はOKです。
きっと含水率も20%を切っているでしょう。
20秒かかったら何とかギリギリ合格点です。本来なら来シーズン使った方がいい薪ですが、なかなかそんなに大量の薪を準備できないですよね。このくらい乾燥していれば、まずは快適な薪ストーブライフが送れると思います。
40秒以上かからないと火がつかない。もしくは、窓を薄く開けて強烈に中に空気を入れないと火がつかない薪。これはダメな薪です。薪ストーブで燃やすには乾燥が足りていません。この段階の薪だと、割ってから2か月とか3か月くらいだと思います。もし、薪業者から買った薪が火がつくまで2分以上かかるようなら、文句を言っていいレベルです。
部屋が暖かくならないだけでなく、煙突にタールが付着する、煙がくさい等、様々な不具合が発生します。
3.なぜ薪が乾燥していないといけないの?
では、なぜ薪は乾燥していないといけないのでしょうか。
薪の燃焼の仕組みについては次回以降に詳しく説明しますが、まず、わかりやすいのは、
薪が燃えるには薪の中にある水分が蒸発する必要があるということです。
濡れた紙にはそのままでは火がつかないですよね。紙が乾いてから火が付きます。薪も一緒です。薪の中にある水分がなくなってから初めて火が付きます。
このため、薪の中の水分が多い(含水率が高い)薪の場合、薪に火がつくまで多くの時間と熱エネルギーを薪の水分を蒸発させるのに使われます。液体→気体の状態変化には多くの熱エネルギーが消費されますので、その分、薪が燃えて部屋を暖めるはずだったエネルギーが無駄に使われてしまうことになります。
合わせて、薪が燃えると煙が出ますが、きちんと燃焼しないとこの煙の中に、燃焼しきれなかった可燃性ガスやタール分などが入ってしまいます。可燃性ガスは、いぶくさい臭いがしますし、タールは煙突の中に付着して煙道火災の原因になります。
煙道火災は、軽いものなら煙突の中が燃えるだけですが、ひどくなると本当の火事につながります。何より、消防に通報されたら(もしくは自分で119番通報したら)、多くの消防車が来て大騒ぎになりますから、次から薪ストーブを使うことは世間体的に厳しくなりますよね。絶対にやらないように注意しないといけません。
4.まとめ
快適な薪ストーブライフを送るためには、一にも二にも乾燥した薪を使う必要があります。木の種類による差はそれに比べたら小さい話です。
含水率20%を切るような乾燥した薪を作るには、2年は乾燥させないといけないと一般的には言われています。
でも、毎年薪は業者から買っている人や、薪棚に限りがあるので、2年分の薪を確保しておくのは難しいケースも多いと思います。
さらには、いい薪を使っているのに、うまく燃やすことができずにいる家庭も少なくありません。
このため、次回は上手な薪の燃やし方について解説します。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月18日金曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑰
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑰
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
残り40kmは天国だと聞いていたバイクパート。しかし、いつまでたってもアップダウンが終わらない。しかしそれも残り15km。いよいよゴールが見えてきた―。
ついに市街地が見えるところまできた。ここからは本当にアップダウンがなくなる。だって、バイクパートのゴールは海だもの。しかも若干とはいえ下り基調なはず。ここまで時速23kmちょっとでしかないアベレージスピードを少しでも上げていきたい。
そう思って進んだのだけれど、ここで思わぬ敵が待っていた。「ホント、マジかよ!」って思わず叫んでしまったくらいの敵。それは・・・向かい風。
ロードバイクに乗っている人ならわかる、自転車の最大の敵。向かい風。アゲインストとか色々言い方はあるけれど、とにかく進もうとする正面からくる風。
これがあると無いとではスピードが全く違う。
たぶんこの時吹いていたのは、秒速1~2mくらいの弱い向かい風のはず。それでも、炎天下を125km走ってきた身には非常に応える。スピードは平地にも関わらず、そして結構頑張っているにも関わらず、時速25km~26km。
バイクの序盤、何だかペースが速いと思っていた原因が分かった。これだったんだ。行きは気づかないくらいの追い風。そのため、時速25km位で走っているイメージなのに時速28km位のアベレージスピードになっていた。その時恩恵を受けた分をここで支払う形か。
ここでようやく諦めた。
皆生のバイクパートで天国は来ない。劇的にペースが上がるようなおいしいところもない。
当たり前と言えば当たり前のこと。とにかく自分の力、それも、その一瞬頑張って絞り出すような火事場の馬鹿力ではなく、アベレージとしてその時に出すことができる最大の力が試される場所―。それが皆生なんだ。それが、ロングというレースなんだ。
それを、スタートから約7時間かかったこのタイミングでようやく悟ることができた。たぶんこの後のランも、決して楽になることや望外にうまくいくことなんかないんだ。
そう思って気持ちを立て直した。現時刻は午後3時ちょっと前。残る距離は10km。そうすると、3時20分ごろにバイクアップの計算。ランを6時間で行けば何とかゴールには行けるはず。
そのためには、これ以上無駄に踏ん張ってバイクで足を使いすぎないよう、時速25km出てれば良しとしてペースを維持。とにかくアベレージでエネルギーを消費していくようにする。
気温は相変わらず下がらない。さっきバケツの水を思いっきりかけられたけど、10分も立たないうちにバイクジャージは乾いてしまった。汗が滴ることもない。暑いことは暑いけれど、補給とのバランスは保てているので十分このままいける。
そう思って、最後にもらった大会のボトルから水を一口飲む。その時、何を思ったのか、歯で吸い口を咥えてキャップを開けて中身を見てしまった。なぜこんなことをしたのかわからないが、見たら、中に黒い斑点がたくさんある・・・。
なんだこれ!・・・・・・カビか???
大会運営の方ごめんなさい。たぶん大会用のボトルは1万本は用意されていて、中には若干古いものもあったんだと思います。その中の一つがうまいこと洗われていなかっただけだと思います。皆さんのあの献身的な大会運営にケチをつけるつもりは全くありませんが、確かにこのボトルの中には黒い斑点がたくさんありました。
それが何かを突き詰めることはありませんでしたが、このボトルの水はもう飲めなくなってしまいました・・・。
残る5km。水分補給をできるところはもうない。でもゴールまで10分くらい。もう一本の自分が持ってきた方のボトルは先に空になっていた。しょうがない。10分くらいは水を飲まなくても行けるだろうと諦める。
そしたら、突然左足の太ももに痙攣が来た。
別に何があったわけでもない。でもビクビクっと動いた。電解質が足りていないのか?急ぎ、塩飴を一つほおばり、ガリガリっと噛み砕いて飲み下す。
うわ、一気にのどが渇いた。
でも飲めないから我慢。後少しだ。
川沿いの道を過ぎ、市街地に入る。選手の誘導の為道路はけっこう渋滞。橋を渡り、最後の住宅街に。狭い道路。直角コーナーが続く。
そしてようやく。・・・ようやくバイクゴールにたどり着いた。
この時点で3時20分。
大丈夫、あと6時間ある―。絶対ゴールできるはず!!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
残り40kmは天国だと聞いていたバイクパート。しかし、いつまでたってもアップダウンが終わらない。しかしそれも残り15km。いよいよゴールが見えてきた―。
ついに市街地が見えるところまできた。ここからは本当にアップダウンがなくなる。だって、バイクパートのゴールは海だもの。しかも若干とはいえ下り基調なはず。ここまで時速23kmちょっとでしかないアベレージスピードを少しでも上げていきたい。
そう思って進んだのだけれど、ここで思わぬ敵が待っていた。「ホント、マジかよ!」って思わず叫んでしまったくらいの敵。それは・・・向かい風。
ロードバイクに乗っている人ならわかる、自転車の最大の敵。向かい風。アゲインストとか色々言い方はあるけれど、とにかく進もうとする正面からくる風。
これがあると無いとではスピードが全く違う。
たぶんこの時吹いていたのは、秒速1~2mくらいの弱い向かい風のはず。それでも、炎天下を125km走ってきた身には非常に応える。スピードは平地にも関わらず、そして結構頑張っているにも関わらず、時速25km~26km。
バイクの序盤、何だかペースが速いと思っていた原因が分かった。これだったんだ。行きは気づかないくらいの追い風。そのため、時速25km位で走っているイメージなのに時速28km位のアベレージスピードになっていた。その時恩恵を受けた分をここで支払う形か。
ここでようやく諦めた。
皆生のバイクパートで天国は来ない。劇的にペースが上がるようなおいしいところもない。
当たり前と言えば当たり前のこと。とにかく自分の力、それも、その一瞬頑張って絞り出すような火事場の馬鹿力ではなく、アベレージとしてその時に出すことができる最大の力が試される場所―。それが皆生なんだ。それが、ロングというレースなんだ。
それを、スタートから約7時間かかったこのタイミングでようやく悟ることができた。たぶんこの後のランも、決して楽になることや望外にうまくいくことなんかないんだ。
そう思って気持ちを立て直した。現時刻は午後3時ちょっと前。残る距離は10km。そうすると、3時20分ごろにバイクアップの計算。ランを6時間で行けば何とかゴールには行けるはず。
そのためには、これ以上無駄に踏ん張ってバイクで足を使いすぎないよう、時速25km出てれば良しとしてペースを維持。とにかくアベレージでエネルギーを消費していくようにする。
気温は相変わらず下がらない。さっきバケツの水を思いっきりかけられたけど、10分も立たないうちにバイクジャージは乾いてしまった。汗が滴ることもない。暑いことは暑いけれど、補給とのバランスは保てているので十分このままいける。
そう思って、最後にもらった大会のボトルから水を一口飲む。その時、何を思ったのか、歯で吸い口を咥えてキャップを開けて中身を見てしまった。なぜこんなことをしたのかわからないが、見たら、中に黒い斑点がたくさんある・・・。
なんだこれ!・・・・・・カビか???
大会運営の方ごめんなさい。たぶん大会用のボトルは1万本は用意されていて、中には若干古いものもあったんだと思います。その中の一つがうまいこと洗われていなかっただけだと思います。皆さんのあの献身的な大会運営にケチをつけるつもりは全くありませんが、確かにこのボトルの中には黒い斑点がたくさんありました。
それが何かを突き詰めることはありませんでしたが、このボトルの水はもう飲めなくなってしまいました・・・。
残る5km。水分補給をできるところはもうない。でもゴールまで10分くらい。もう一本の自分が持ってきた方のボトルは先に空になっていた。しょうがない。10分くらいは水を飲まなくても行けるだろうと諦める。
そしたら、突然左足の太ももに痙攣が来た。
別に何があったわけでもない。でもビクビクっと動いた。電解質が足りていないのか?急ぎ、塩飴を一つほおばり、ガリガリっと噛み砕いて飲み下す。
うわ、一気にのどが渇いた。
でも飲めないから我慢。後少しだ。
川沿いの道を過ぎ、市街地に入る。選手の誘導の為道路はけっこう渋滞。橋を渡り、最後の住宅街に。狭い道路。直角コーナーが続く。
そしてようやく。・・・ようやくバイクゴールにたどり着いた。
この時点で3時20分。
大丈夫、あと6時間ある―。絶対ゴールできるはず!!
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人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月17日木曜日
薪ストーブのメリットデメリット(3)薪ストーブで部屋を暖めるのは時間がかかる?
薪ストーブ歴10年の筆者が、住宅街で薪ストーブを使って分かったメリットとデメリットをお伝えするシリーズの第3弾。
今回は、薪ストーブで部屋を暖めるのは時間がかかるか?です。
結論から言いますと、めちゃくちゃ時間がかかります。
目次
1.薪ストーブで部屋を暖める仕組み
2.部屋を暖め始めるまでの時間
3.対流が生まれて部屋の空気が暖まる
4.まとめ:どういう使い方がいいか
1.薪ストーブで部屋を暖める仕組み
初めに薪ストーブで部屋を暖める仕組みについて述べてみます。
薪ストーブは、その名の通り、薪を燃やした熱を使って部屋を暖めます。なので、まずは何よりも先に薪に火をつける必要があります。
しかし、部屋を暖めるのに十分な太さの薪というのは、最初からすぐには火がつきません。最初は、木っ端と呼ばれる細い枝や割りばし等に火をつけて、その火が少し太い枝に燃え移り、さらに太薪に燃え移って・・・と段階を踏む必要があります。
そのため、まずは火をつける前に、炉内(薪ストーブの中)にキャンプファイヤーで使う櫓のように、火が燃え移っていくように木をくみ上げなければなりません。
慣れてくれば2、3分でできるのですが、この作業、特に初心者は時間がかかりますし、うまくいくとも限りません。
5分くらいかかって組み上げたところに火をつけてみたものの、2分後には消えてしまう。その後、もう一度やり直してみたけれどまたつかなくて・・・なんて経験をした方は、私だけではないはずです。
また、小さな炎がだんだんと育っていって、太薪に燃え移っていったとしても、その段階ではまだ部屋は全く暖まりません。
我が家は、勾配天井で最高点の高さが4.6mあるリビング16畳、ダイニング6畳、キッチン6畳の計28畳が最低単位になるのですが(普段はこのほかに、隣接する和室6畳と子供部屋×2の計12畳、さらに廊下、8畳、階段など計60畳ほどを一台の薪ストーブで暖めています)、この時点では、部屋の中の温度計はピクリともしません。。
2.部屋を暖め始めるまでの時間
太薪に火が付き、天板(ストーブの上の部分をこう言います)の温度が300度くらいになって初めてるのに部屋の中が少しずつ暖まり始めます。ストーブがいわゆる巡航運転に入ったタイミングです。ここまで早くて15分、通常なら20分、調子が悪いと30分かかります。最初に枝や薪をくみ上げる時間を考慮に入れれば、最短でも20分くらいはかかる計算です。
ストーブが部屋を暖め始めるまでに、最低20分―。
部屋が暖まるまでではありませんよ。部屋を暖め始めるまでにかかる時間が最低20分です。
これがエアコンや石油ストーブだと、スイッチを入れて2分くらいで最高出力で部屋を暖めてくれますよね。巡航スピードに至るまで30分かかかるなんてことはありません。筆者が学生の頃に住んでいた六畳のアパートの部屋は、20分もあればある程度暖かくなっていました。この点が薪ストーブの大きく不便なところです。
薪ストーブ愛好者にとっては、この不便さこそが魅力の一つでもあるのですが・・・。
とはいえ、年末年始の帰省から帰ってきた我が家の室温はたいてい5度~6度くらいです。火をつけて1時間たってもそれが7度~8度にしかならないので、さすがにその時は、薪ストーブだけではやっていられず、最初の1時間くらいはエアコン暖房を全力でかけています(汗)。
3.対流が生まれて部屋の空気が暖まる
さて、何度も言いますが、上記の時間は部屋の中が暖まり始めるまでの時間です。
このころから、ストーブの近くの空気が暖められて部屋の中に対流が生まれます。暖められた空気は上に行くので、最初はリビングの天井付近が暖まります。筆者の家では天井の一番高いところが4m以上あるので、床付近は全く暖まりません。
このために活躍するのがシーリングファンです。吹き抜けのある家によく見かけるシーリングファン。使い方のセオリーは、夏は下向きにして冬は上向きにするというものですが、筆者の家では真逆の使い方をしています。
リビングの天井付近にたまった暖かい空気を強制的に下に降ろして、床付近の冷たい空気と混ぜ合わせないと、とてもじゃないけれど部屋の中が暖まらないからです。
こうして対流が生まれた空気が徐々に部屋を暖め始めます。
帰省から帰って5度だった室温は、薪ストーブだけで暖めた場合、1時間を経過すると大体8度くらいにはなってくれます(泣)。まだまだ寒いです。
4.まとめ:どういう使い方がいいか
結局、室温が一般的な18度まで暖まるのにどのくらいかかるのか―。
我が家の場合ですと大体4時間くらいはかかります。もちろん、天井の高さや部屋の広さにもよりますが、4時間が1時間になることはありません。
一度暖まれば冷えにくい薪ストーブ。それは逆を言えば、「一度冷えると暖まりにくい」ことでもあります。
このため、薪ストーブを一人暮らしの方の家で、メインの暖房として使うのはおススメしません。エアコンや石油ストーブとの併用をお勧めします。
忙しくてほとんど家にいない―というご家庭も同様です。週末の楽しみにするのがいいかもしれません。
逆に、一日のうち、半分くらいの時間、家族の誰かが家にいる―という家の場合は、薪ストーブが大活躍します。1日24時間のうち、火を焚いている時間が長ければ長いほど、
薪ストーブのメリットが生かせますし、短ければ短いほど、短所が際立ってきます。
でも、一日中焚いているんだけど、薪ストーブで部屋暖かくならないよ―というお話をよく耳にします。
次回はそのあたり、薪の上手な燃焼方法についてお伝えします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
今回は、薪ストーブで部屋を暖めるのは時間がかかるか?です。
結論から言いますと、めちゃくちゃ時間がかかります。
目次
1.薪ストーブで部屋を暖める仕組み
2.部屋を暖め始めるまでの時間
3.対流が生まれて部屋の空気が暖まる
4.まとめ:どういう使い方がいいか
1.薪ストーブで部屋を暖める仕組み
初めに薪ストーブで部屋を暖める仕組みについて述べてみます。
薪ストーブは、その名の通り、薪を燃やした熱を使って部屋を暖めます。なので、まずは何よりも先に薪に火をつける必要があります。
しかし、部屋を暖めるのに十分な太さの薪というのは、最初からすぐには火がつきません。最初は、木っ端と呼ばれる細い枝や割りばし等に火をつけて、その火が少し太い枝に燃え移り、さらに太薪に燃え移って・・・と段階を踏む必要があります。
そのため、まずは火をつける前に、炉内(薪ストーブの中)にキャンプファイヤーで使う櫓のように、火が燃え移っていくように木をくみ上げなければなりません。
慣れてくれば2、3分でできるのですが、この作業、特に初心者は時間がかかりますし、うまくいくとも限りません。
5分くらいかかって組み上げたところに火をつけてみたものの、2分後には消えてしまう。その後、もう一度やり直してみたけれどまたつかなくて・・・なんて経験をした方は、私だけではないはずです。
また、小さな炎がだんだんと育っていって、太薪に燃え移っていったとしても、その段階ではまだ部屋は全く暖まりません。
我が家は、勾配天井で最高点の高さが4.6mあるリビング16畳、ダイニング6畳、キッチン6畳の計28畳が最低単位になるのですが(普段はこのほかに、隣接する和室6畳と子供部屋×2の計12畳、さらに廊下、8畳、階段など計60畳ほどを一台の薪ストーブで暖めています)、この時点では、部屋の中の温度計はピクリともしません。。
2.部屋を暖め始めるまでの時間
太薪に火が付き、天板(ストーブの上の部分をこう言います)の温度が300度くらいになって初めてるのに部屋の中が少しずつ暖まり始めます。ストーブがいわゆる巡航運転に入ったタイミングです。ここまで早くて15分、通常なら20分、調子が悪いと30分かかります。最初に枝や薪をくみ上げる時間を考慮に入れれば、最短でも20分くらいはかかる計算です。
ストーブが部屋を暖め始めるまでに、最低20分―。
部屋が暖まるまでではありませんよ。部屋を暖め始めるまでにかかる時間が最低20分です。
これがエアコンや石油ストーブだと、スイッチを入れて2分くらいで最高出力で部屋を暖めてくれますよね。巡航スピードに至るまで30分かかかるなんてことはありません。筆者が学生の頃に住んでいた六畳のアパートの部屋は、20分もあればある程度暖かくなっていました。この点が薪ストーブの大きく不便なところです。
薪ストーブ愛好者にとっては、この不便さこそが魅力の一つでもあるのですが・・・。
とはいえ、年末年始の帰省から帰ってきた我が家の室温はたいてい5度~6度くらいです。火をつけて1時間たってもそれが7度~8度にしかならないので、さすがにその時は、薪ストーブだけではやっていられず、最初の1時間くらいはエアコン暖房を全力でかけています(汗)。
3.対流が生まれて部屋の空気が暖まる
さて、何度も言いますが、上記の時間は部屋の中が暖まり始めるまでの時間です。
このころから、ストーブの近くの空気が暖められて部屋の中に対流が生まれます。暖められた空気は上に行くので、最初はリビングの天井付近が暖まります。筆者の家では天井の一番高いところが4m以上あるので、床付近は全く暖まりません。
このために活躍するのがシーリングファンです。吹き抜けのある家によく見かけるシーリングファン。使い方のセオリーは、夏は下向きにして冬は上向きにするというものですが、筆者の家では真逆の使い方をしています。
リビングの天井付近にたまった暖かい空気を強制的に下に降ろして、床付近の冷たい空気と混ぜ合わせないと、とてもじゃないけれど部屋の中が暖まらないからです。
こうして対流が生まれた空気が徐々に部屋を暖め始めます。
帰省から帰って5度だった室温は、薪ストーブだけで暖めた場合、1時間を経過すると大体8度くらいにはなってくれます(泣)。まだまだ寒いです。
4.まとめ:どういう使い方がいいか
結局、室温が一般的な18度まで暖まるのにどのくらいかかるのか―。
我が家の場合ですと大体4時間くらいはかかります。もちろん、天井の高さや部屋の広さにもよりますが、4時間が1時間になることはありません。
一度暖まれば冷えにくい薪ストーブ。それは逆を言えば、「一度冷えると暖まりにくい」ことでもあります。
このため、薪ストーブを一人暮らしの方の家で、メインの暖房として使うのはおススメしません。エアコンや石油ストーブとの併用をお勧めします。
忙しくてほとんど家にいない―というご家庭も同様です。週末の楽しみにするのがいいかもしれません。
逆に、一日のうち、半分くらいの時間、家族の誰かが家にいる―という家の場合は、薪ストーブが大活躍します。1日24時間のうち、火を焚いている時間が長ければ長いほど、
薪ストーブのメリットが生かせますし、短ければ短いほど、短所が際立ってきます。
でも、一日中焚いているんだけど、薪ストーブで部屋暖かくならないよ―というお話をよく耳にします。
次回はそのあたり、薪の上手な燃焼方法についてお伝えします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月16日水曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑯
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑯
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートでは、長い上りに心が折れそうになりながらもコース中の最高到達点をクリア。バイクの残りは40kmだ―。
ラスト40km。
ただ、この時点で想定していたタイムより、かなり遅れている。当初の予定では、スイム3kmを1時間半で上がる(これはクリア)。
バイクをアベレージスピードで25kmでクリア。計算上は5時間半くらい。なので、バイクパート終了時点で、7時間の想定。午前7時のスタートに対し、午後2時にはランに移っているはずだった。
それが、残り40kmの時点で4時間45分経過。このままだと、想定より1時間くらい遅くなってしまう。
午後2時にランに移行できていれば、ハーフを2時間くらいなので、サブ4は無理にしても5時間あればゴールできるかな・・・と思っていた。どんなに遅くても6時間あればゴールはできるはず。そうすると、午後8時ごろに余裕をもってゴールしている計算だ。それが今のペースでは6時間かかった場合は午後9時。猶予は30分しかない。
結構やばい。やばいけど、残り40kmは天国と聞いていた。きっと下り基調になるはずだ。確かにスタートから20km位はほぼ平地だったし、そうすると残りアップダウンが多いのは残り20km。ここもそれほどではないはず・・・。
色々と頭の中はタイムの計算というか、妄想というかが繰り広げられる。これ以上のペースの遅れは許されないかもしれない。いや実際にはこれでも余裕があるはずなのだから、そこまで心配しなくてもいいはず。とはいえ、最後のランは人生初のフルマラソン。本当に5時間で走り切れるのか―?
このころの気温は36度。天気は業界用語でいうところのピーカン。雲がほとんどない快晴―というと聞こえがいいけれど、要は典型的な猛暑日だ。
文部科学省(でしたっけ?)が「屋外での運動を原則禁止すべき」として、外で行う部活動などが規制される気温になっている。
けれど、不思議と暑さを感じていない。いや、正確に言うと暑さに慣れてしまって、苦しいとかがなくなってしまっている。
実はかなり危険な状態だったのかもしれないけれど、そういう感覚しかなかった。
これは、その頃になるとエイドステーションでの補給、30分毎の補給、さらにエイドステーションまでの時間を逆算してボトルの水を肩や首筋にかけての体温調整など、諸々の作業が完全にルーティン化したためだと思う。
エイドステーションでは、コーラのボトルを一気飲み。さらにスイカを2切れ、レモンに塩をつけたものを2切れ口にする。バナナなどの固形物は胃の負担を考え避ける。そして持ってきたボトルにはスポーツドリンクを補給(約600ml)。大会のボトルには水を入れ(約450ml)、こちらは口直しと体にかける用。あれば氷も入れてもらう。
30分毎の補給は、お腹の状態などは完全に無視して時間になったら機械的に行う。前日に買っておいた補給食はすべて使用。さらにもらった粉飴の小分け袋を飲み下す。
これがまずい。本当にまずい!なんでこんな味をしているんだと思うくらいまずい。
いや、粉飴を使うのが初めてで、なおかつきちんと使い方を呼んでいなかったのが悪いだけで、メーカーさんには何の落ち度もないんですけどね。大会終了後、ちゃんと説明書きを読んだら、これはボトルに入れて水に溶いて飲むものだったのね。それをジェル状の原液のまま飲んだら、そりゃまずいはず。
そうしたことを繰り返しながら、終盤のコースを走っていく。
しかし―。
最後の折り返しを過ぎても、天国は訪れなかった。
そう。それまでのアップダウンと同じく、ひたすら上り下りが続く。上りは前半から中盤ほどの力を出せず、時速10km前後のスピードに。それでも何人も選手を抜いていける。下りは時速50km位まで上がるが、60kmに届かない。その前に次の上りが来てしまう。
さらに、一時停止と赤信号がうまいタイミングで現れる。そんなに回数が多いわけではなく、実際には3回とか4回くらいしか止められていないんだけど、とにかくペースが乱されるのがつらい。そしてペースは依然上がらない。
100km時点でのアベレージは時速22.5km。それがようやく時速23kmを超えるくらいまでしか回復しない。25kmとはいかないまでも24km位になってもらわないと・・・と思うが、またも目の前に上りが来る。
もうこれが最後の上りのはず・・・。と思って上り切り、下りを走っているけれど次に平地は訪れずまたも上り。そして不思議なことに上りで前の選手を抜いていける。正直上りはかなり苦手意識があって(体重75kmなので・・・)、逆に下りが早いはずなのに、自分より10kg以上軽そうな人たちを次々と抜ける。
良く見ると上りで左右にフラフラしている。ペダルを踏むたびに体が右に左に揺れている。一方、自分の方はそういうことはなく、どっしりと淡々とペダルを回している。この違いが上りで抜ける理由かもしれない。
皆さん、上りはフォームの良しあしが最終的には大きな差になるかもしれません。
そんなことを考えながら、約1時間ひたすら上り下りを繰り返すと、ようやく人家というか建物が遠くに見えてきた。ようやくアップダウン区間が終わったのだ。
残り15km。今は山沿いにいてトランジットは海岸。もう下りしかない(はず)。最後に少しでもペースを上げてランにつなげたい。ボトルに補給を終え、ダンシングしながら最終のエイドステーションを後にした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートでは、長い上りに心が折れそうになりながらもコース中の最高到達点をクリア。バイクの残りは40kmだ―。
ラスト40km。
ただ、この時点で想定していたタイムより、かなり遅れている。当初の予定では、スイム3kmを1時間半で上がる(これはクリア)。
バイクをアベレージスピードで25kmでクリア。計算上は5時間半くらい。なので、バイクパート終了時点で、7時間の想定。午前7時のスタートに対し、午後2時にはランに移っているはずだった。
それが、残り40kmの時点で4時間45分経過。このままだと、想定より1時間くらい遅くなってしまう。
午後2時にランに移行できていれば、ハーフを2時間くらいなので、サブ4は無理にしても5時間あればゴールできるかな・・・と思っていた。どんなに遅くても6時間あればゴールはできるはず。そうすると、午後8時ごろに余裕をもってゴールしている計算だ。それが今のペースでは6時間かかった場合は午後9時。猶予は30分しかない。
結構やばい。やばいけど、残り40kmは天国と聞いていた。きっと下り基調になるはずだ。確かにスタートから20km位はほぼ平地だったし、そうすると残りアップダウンが多いのは残り20km。ここもそれほどではないはず・・・。
色々と頭の中はタイムの計算というか、妄想というかが繰り広げられる。これ以上のペースの遅れは許されないかもしれない。いや実際にはこれでも余裕があるはずなのだから、そこまで心配しなくてもいいはず。とはいえ、最後のランは人生初のフルマラソン。本当に5時間で走り切れるのか―?
このころの気温は36度。天気は業界用語でいうところのピーカン。雲がほとんどない快晴―というと聞こえがいいけれど、要は典型的な猛暑日だ。
文部科学省(でしたっけ?)が「屋外での運動を原則禁止すべき」として、外で行う部活動などが規制される気温になっている。
けれど、不思議と暑さを感じていない。いや、正確に言うと暑さに慣れてしまって、苦しいとかがなくなってしまっている。
実はかなり危険な状態だったのかもしれないけれど、そういう感覚しかなかった。
これは、その頃になるとエイドステーションでの補給、30分毎の補給、さらにエイドステーションまでの時間を逆算してボトルの水を肩や首筋にかけての体温調整など、諸々の作業が完全にルーティン化したためだと思う。
エイドステーションでは、コーラのボトルを一気飲み。さらにスイカを2切れ、レモンに塩をつけたものを2切れ口にする。バナナなどの固形物は胃の負担を考え避ける。そして持ってきたボトルにはスポーツドリンクを補給(約600ml)。大会のボトルには水を入れ(約450ml)、こちらは口直しと体にかける用。あれば氷も入れてもらう。
30分毎の補給は、お腹の状態などは完全に無視して時間になったら機械的に行う。前日に買っておいた補給食はすべて使用。さらにもらった粉飴の小分け袋を飲み下す。
これがまずい。本当にまずい!なんでこんな味をしているんだと思うくらいまずい。
いや、粉飴を使うのが初めてで、なおかつきちんと使い方を呼んでいなかったのが悪いだけで、メーカーさんには何の落ち度もないんですけどね。大会終了後、ちゃんと説明書きを読んだら、これはボトルに入れて水に溶いて飲むものだったのね。それをジェル状の原液のまま飲んだら、そりゃまずいはず。
そうしたことを繰り返しながら、終盤のコースを走っていく。
しかし―。
最後の折り返しを過ぎても、天国は訪れなかった。
そう。それまでのアップダウンと同じく、ひたすら上り下りが続く。上りは前半から中盤ほどの力を出せず、時速10km前後のスピードに。それでも何人も選手を抜いていける。下りは時速50km位まで上がるが、60kmに届かない。その前に次の上りが来てしまう。
さらに、一時停止と赤信号がうまいタイミングで現れる。そんなに回数が多いわけではなく、実際には3回とか4回くらいしか止められていないんだけど、とにかくペースが乱されるのがつらい。そしてペースは依然上がらない。
100km時点でのアベレージは時速22.5km。それがようやく時速23kmを超えるくらいまでしか回復しない。25kmとはいかないまでも24km位になってもらわないと・・・と思うが、またも目の前に上りが来る。
もうこれが最後の上りのはず・・・。と思って上り切り、下りを走っているけれど次に平地は訪れずまたも上り。そして不思議なことに上りで前の選手を抜いていける。正直上りはかなり苦手意識があって(体重75kmなので・・・)、逆に下りが早いはずなのに、自分より10kg以上軽そうな人たちを次々と抜ける。
良く見ると上りで左右にフラフラしている。ペダルを踏むたびに体が右に左に揺れている。一方、自分の方はそういうことはなく、どっしりと淡々とペダルを回している。この違いが上りで抜ける理由かもしれない。
皆さん、上りはフォームの良しあしが最終的には大きな差になるかもしれません。
そんなことを考えながら、約1時間ひたすら上り下りを繰り返すと、ようやく人家というか建物が遠くに見えてきた。ようやくアップダウン区間が終わったのだ。
残り15km。今は山沿いにいてトランジットは海岸。もう下りしかない(はず)。最後に少しでもペースを上げてランにつなげたい。ボトルに補給を終え、ダンシングしながら最終のエイドステーションを後にした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月15日火曜日
薪ストーブのメリットデメリット(2)薪ストーブで暖めた部屋は冷えない?
薪ストーブのメリットとデメリットについて語るシリーズ③
薪ストーブ歴10年以上の筆者が、薪ストーブのメリットとデメリットについて赤裸々に語るシリーズ。3回目の今回は、薪ストーブで暖めた部屋は冷えにくいか?です。
結論から言います。ズバリ、「冷えにくい」です。
なぜかー。
薪ストーブがどのように部屋を暖めるかは、様々な本や雑誌で書かれているので詳しくご存じの方も多いと思いますが、第一の特徴は高温になったストーブ本体からの「輻射熱」で温める点。
第二がその輻射熱で暖められた空気が循環すること―つまり「対流」です。こちらは、暖かい空気が上に上がり、冷たい空気が下に下がることから自然に発生しますが、シーリングファンやサーキュレーターなどを使って人工的に起こすこともします。
エアコン暖房や石油ファンヒーターなどは、この対流によってのみ部屋を暖めます。エアコンは本体の中で作った暖かい空気をファンで送りだすことで、ファンヒーターは、灯油を燃やした熱で暖めた空気をファンで送り出すことで部屋を暖めます。
反射式の石油ストーブや、昔ながらのダルマストーブは、薪ストーブと同じように輻射熱で部屋を暖めますので、原理としては同じです。でもこれらのストーブと薪ストーブでは大きな違いがあります。
それは、「火力」です。
我が家を10年に渡り温め続けているストーブは、モルソーの1620クリーンバーンです。こちらは、大型、中型、小型の3種類に分けた場合、大型の中で一番小さいくらいのサイズですが、それでも、石油ファンヒーター4台~5台分くらいの火力があります。
薪ストーブ1台で家中が暖まるというのは、別に薪ストーブが石油ストーブに比べて高性能だからではなく、純粋に薪を燃やすことによって生まれる熱量が段違いに大きいことが理由です。
それでは、薪ストーブで暖められた部屋はなぜ冷えにくいのでしょうか?
その秘密は、薪ストーブから発せられる輻射熱です。
輻射熱・・・と言われても「何だかよくわからない」という方も多いと思います。簡単に言いますと、炎の近くに手をかざすと暖かいですよね。近すぎるとあちち!ってなりますよね。それです。
火が(火に限らず物体が)直接出す熱が、何かを媒介することなく伝わる熱のことを輻射熱といいます。科学的には赤外線と呼ばれるものです。
よく遠赤外線という言葉が使われますが、これは正確な科学用語とは違った意味で使われているようですが、イメージとしてはその遠赤外線です。
この赤外線は、熱源との間に空気があろうがなかろうが伝わってきます。太陽の熱が地球を暖めているのは、まさにこの輻射熱が届いているからです。
薪ストーブは、ストーブの中で薪が燃えた際に生まれる熱がストーブを暖め、高温になったストーブから発せられる輻射熱が部屋を暖めます。
しかし、薪ストーブが暖めているのは空気だけではありません。空気のほかに、部屋の壁や天井、柱など、家の構造材自体も温めているのです。ストーブの近くの床は、床暖房を入れているかのようにあたたかくなり、はだしでも気持ちいいくらいです。
「ストーブと距離が離れているのに暖まるの?」という疑問もあるかと思います。私自身も科学的に証明するほどの知識はありませんが・・・実感としては確実に暖まります。ストーブ近くの壁や柱は熱くなりますし、リビングの反対側にある壁も冷たさを感じません。
これが、石油ストーブやエアコン暖房との大きな違いです。
もちろん、エアコン暖房で温められた部屋でも、暖かくなった部屋の空気に触れることで壁や柱も暖まるのですが、それはあくまで表面が暖まっているだけです。表面的には暖まっても、芯の部分は冷たいままです。
これが、暖房を消した際に室温が下がる原因になります。冷たい壁や天井、柱で囲まれた部屋の中の空気を無理やり温めているので、熱源となるエアコンや石油ストーブが消えると冷えてしまうのです。
一方、薪ストーブで温められた部屋は、部屋の空気と一緒に壁や天井も一緒に暖まっています。このため、室温が下がりにくいのです。
ここまでお読みいただいた方は、「やっぱり薪ストーブユーザーだから薪ストーブのいいことしか書かないんじゃないか」と思われたかもしれません。
確かに部屋が冷えにくいというのも薪ストーブの大きな魅力の一つですが、薪ストーブは決して万能ではありません。石油ストーブやエアコンと比べて大きく劣っているところがあります。
その一つが「部屋が暖まるまで時間がかかる」ことです。
一度暖まってしまえば冷えにくいのですが、例えば年末年始に帰省して3日ほど家をあけて帰宅した時。冷え切った部屋を薪ストーブだけで暖めるのには、とんでもなく時間がかかります。
次回はそのあたり、部屋を暖めるのに必要な時間についてお伝えします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
薪ストーブ歴10年以上の筆者が、薪ストーブのメリットとデメリットについて赤裸々に語るシリーズ。3回目の今回は、薪ストーブで暖めた部屋は冷えにくいか?です。
結論から言います。ズバリ、「冷えにくい」です。
なぜかー。
薪ストーブがどのように部屋を暖めるかは、様々な本や雑誌で書かれているので詳しくご存じの方も多いと思いますが、第一の特徴は高温になったストーブ本体からの「輻射熱」で温める点。
第二がその輻射熱で暖められた空気が循環すること―つまり「対流」です。こちらは、暖かい空気が上に上がり、冷たい空気が下に下がることから自然に発生しますが、シーリングファンやサーキュレーターなどを使って人工的に起こすこともします。
エアコン暖房や石油ファンヒーターなどは、この対流によってのみ部屋を暖めます。エアコンは本体の中で作った暖かい空気をファンで送りだすことで、ファンヒーターは、灯油を燃やした熱で暖めた空気をファンで送り出すことで部屋を暖めます。
反射式の石油ストーブや、昔ながらのダルマストーブは、薪ストーブと同じように輻射熱で部屋を暖めますので、原理としては同じです。でもこれらのストーブと薪ストーブでは大きな違いがあります。
それは、「火力」です。
我が家を10年に渡り温め続けているストーブは、モルソーの1620クリーンバーンです。こちらは、大型、中型、小型の3種類に分けた場合、大型の中で一番小さいくらいのサイズですが、それでも、石油ファンヒーター4台~5台分くらいの火力があります。
薪ストーブ1台で家中が暖まるというのは、別に薪ストーブが石油ストーブに比べて高性能だからではなく、純粋に薪を燃やすことによって生まれる熱量が段違いに大きいことが理由です。
それでは、薪ストーブで暖められた部屋はなぜ冷えにくいのでしょうか?
その秘密は、薪ストーブから発せられる輻射熱です。
輻射熱・・・と言われても「何だかよくわからない」という方も多いと思います。簡単に言いますと、炎の近くに手をかざすと暖かいですよね。近すぎるとあちち!ってなりますよね。それです。
火が(火に限らず物体が)直接出す熱が、何かを媒介することなく伝わる熱のことを輻射熱といいます。科学的には赤外線と呼ばれるものです。
よく遠赤外線という言葉が使われますが、これは正確な科学用語とは違った意味で使われているようですが、イメージとしてはその遠赤外線です。
この赤外線は、熱源との間に空気があろうがなかろうが伝わってきます。太陽の熱が地球を暖めているのは、まさにこの輻射熱が届いているからです。
薪ストーブは、ストーブの中で薪が燃えた際に生まれる熱がストーブを暖め、高温になったストーブから発せられる輻射熱が部屋を暖めます。
しかし、薪ストーブが暖めているのは空気だけではありません。空気のほかに、部屋の壁や天井、柱など、家の構造材自体も温めているのです。ストーブの近くの床は、床暖房を入れているかのようにあたたかくなり、はだしでも気持ちいいくらいです。
「ストーブと距離が離れているのに暖まるの?」という疑問もあるかと思います。私自身も科学的に証明するほどの知識はありませんが・・・実感としては確実に暖まります。ストーブ近くの壁や柱は熱くなりますし、リビングの反対側にある壁も冷たさを感じません。
これが、石油ストーブやエアコン暖房との大きな違いです。
もちろん、エアコン暖房で温められた部屋でも、暖かくなった部屋の空気に触れることで壁や柱も暖まるのですが、それはあくまで表面が暖まっているだけです。表面的には暖まっても、芯の部分は冷たいままです。
これが、暖房を消した際に室温が下がる原因になります。冷たい壁や天井、柱で囲まれた部屋の中の空気を無理やり温めているので、熱源となるエアコンや石油ストーブが消えると冷えてしまうのです。
一方、薪ストーブで温められた部屋は、部屋の空気と一緒に壁や天井も一緒に暖まっています。このため、室温が下がりにくいのです。
ここまでお読みいただいた方は、「やっぱり薪ストーブユーザーだから薪ストーブのいいことしか書かないんじゃないか」と思われたかもしれません。
確かに部屋が冷えにくいというのも薪ストーブの大きな魅力の一つですが、薪ストーブは決して万能ではありません。石油ストーブやエアコンと比べて大きく劣っているところがあります。
その一つが「部屋が暖まるまで時間がかかる」ことです。
一度暖まってしまえば冷えにくいのですが、例えば年末年始に帰省して3日ほど家をあけて帰宅した時。冷え切った部屋を薪ストーブだけで暖めるのには、とんでもなく時間がかかります。
次回はそのあたり、部屋を暖めるのに必要な時間についてお伝えします。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月13日日曜日
薪ストーブのメリットデメリット(2)薪ストーブって一日どのくらい使うと暖かいの?
薪ストーブのメリットとデメリットについて語るシリーズ②
雪深い山形で薪ストーブを使い始め、11シーズン目に突入したcloudです。
前回は薪ストーブの暖かさについて、暖かいことを忘れる暖かさと表現しました。
ただし、その暖かさを享受できるのは、一日最低10時間はストーブを焚いている場合と書きました。
今回の記事では、では、日中仕事に出ていて家にいない家庭で、果たして薪ストーブにメリットがあるかどうかについて、僕なりの考えを述べていきたいと思います。
最初に、一日どのくらいの時間、薪ストーブを使っているか。それをシミュレーションしたいと思います。
薪ストーブを入れたいから家をリフォームするとか、新築を考える小中高、学生はいないと思いますので、まずは、大人の方を対象にします。
一人暮らしの方もいると思いますが、夫婦と子どもなどご家族で使用するケースが多いと思いますので(一人暮らしの生活パターンはこちらに含まれると想定)、最も家に人がいない夫婦共働きのケースを想定します。
なお、専業主婦(主夫)の方が家にいる場合は、日中在宅しているので、前回述べた薪ストーブの暖かさは100%享受できます。今回は、朝と夜しか家に人がいない家庭をモデルケースとします。
前置きが長くなりました。
家で薪ストーブを使う時間がどのくらいあるかは、どのくらい自宅の中で活動しているか、その総時間数によって変動します。
これは想定でしかないのですが、夫婦どちらかが朝起きて、子どもがいれば子どもを学校に送りだし、いなければ夫婦二人が出社するまで、1時間~2時間が平均だと思います。
次に、夜帰宅して寝るまで、家の中で活動する時間は、おおよそ5時間~6時間はあるのではないでしょうか。夕方5時に帰宅し、夕食~入浴~団らん~就寝が夜11時として6時間。少し遅く、7時くらいに帰宅して11時就寝とすると4時間。
上記のケースですと、①最少が朝1時間、夜4時間の計5時間。
②最長が朝2時間の夜6時間で計8時間。
私のこれまでの10年を超える経験から言えば、①のケースですと薪ストーブだけで過ごすのは厳しいです。エアコン暖房や、石油ストーブとの併用をお勧めします。
一方、②のケースでは、多くの場合、薪ストーブ1台だけで冬を過ごすことは十分可能だと思います。
では、なぜ②の場合は薪ストーブ1台で暖かいのか―。それを検証します。
朝起きて、薪ストーブユーザーは最初にストーブに火を入れます。準備に約5分かかります。この5分を捻出できない方は、最初から薪ストーブはあきらめてください。エアコンならスイッチを押す1秒で暖かい風が出てきますから。薪ストーブは不便です。でもその不便さこそが魅力なのです。
火が付いたら朝食の準備など、朝の活動が始まるわけですが、大体最初の30分~1時間以内に追加の薪をくべます。そして、火をつけてから2時間後、家を出るときにもう2本くらい薪を追加して家を出ます。この薪が燃え尽きるまで、約2時間かかります。
そうすると、朝の時点で4時間薪ストーブを使っていた計算になります。
夕方、5時に帰宅すると、家の中はほんのり暖かいはずです。過去17年以内に建てられた家なら、真冬の山形でも室温が12度を下回ることは、ほぼないはずです。
その状況で夕方薪ストーブに再度点火します。これは夜寝るまで使うわけですが、6時間も使っていれば、当初12度だった室温は22度以上になっていると思います(我が家は時々26度以上になっています)。そして、寝る前に最後に薪をくべて寝れば、燃え尽きるまでに夜は8時間薪ストーブを使っている計算になります。朝と合わせれば12時間です。
こうした使い方をしていれば、朝起きたときの外気温がたとえ氷点下5度を下回っていたとしても、室温は12度以上をキープしていると思いますし(控えめに書いているだけで我が家では朝の室温が15度を下回ることは年に1、2回しかありません)、そうすると夜帰宅した時も暖かい状況からスタートできます。
特に冬の間、日中暖かい日差しが降り注ぐ関東や東北でも太平洋側なら、夕方までほとんど室温が下がらないと思います。
ここまで書いてきましたが、薪ストーブではなく、エアコン暖房や石油ストーブを使ってきた方ですと、朝家を出るときにたとえ20度以上あっても、夕方には10度以下に室温が下がってるよー。と言いたい方もたくさんいらっしゃると思います。
私も、アパート暮しだった独身時代、夜家に帰ってファンヒーターのスイッチを押すと室温が5度とか6度になっていることがザラでした。冷蔵庫の中の方が暖かいんじゃないかと思ったことも何度もあります。
なので、次回はこのあたり、何で薪ストーブを使っている家の室温は下がらないのか。
その点について書いていきたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
雪深い山形で薪ストーブを使い始め、11シーズン目に突入したcloudです。
前回は薪ストーブの暖かさについて、暖かいことを忘れる暖かさと表現しました。
ただし、その暖かさを享受できるのは、一日最低10時間はストーブを焚いている場合と書きました。
今回の記事では、では、日中仕事に出ていて家にいない家庭で、果たして薪ストーブにメリットがあるかどうかについて、僕なりの考えを述べていきたいと思います。
最初に、一日どのくらいの時間、薪ストーブを使っているか。それをシミュレーションしたいと思います。
薪ストーブを入れたいから家をリフォームするとか、新築を考える小中高、学生はいないと思いますので、まずは、大人の方を対象にします。
一人暮らしの方もいると思いますが、夫婦と子どもなどご家族で使用するケースが多いと思いますので(一人暮らしの生活パターンはこちらに含まれると想定)、最も家に人がいない夫婦共働きのケースを想定します。
なお、専業主婦(主夫)の方が家にいる場合は、日中在宅しているので、前回述べた薪ストーブの暖かさは100%享受できます。今回は、朝と夜しか家に人がいない家庭をモデルケースとします。
前置きが長くなりました。
家で薪ストーブを使う時間がどのくらいあるかは、どのくらい自宅の中で活動しているか、その総時間数によって変動します。
これは想定でしかないのですが、夫婦どちらかが朝起きて、子どもがいれば子どもを学校に送りだし、いなければ夫婦二人が出社するまで、1時間~2時間が平均だと思います。
次に、夜帰宅して寝るまで、家の中で活動する時間は、おおよそ5時間~6時間はあるのではないでしょうか。夕方5時に帰宅し、夕食~入浴~団らん~就寝が夜11時として6時間。少し遅く、7時くらいに帰宅して11時就寝とすると4時間。
上記のケースですと、①最少が朝1時間、夜4時間の計5時間。
②最長が朝2時間の夜6時間で計8時間。
私のこれまでの10年を超える経験から言えば、①のケースですと薪ストーブだけで過ごすのは厳しいです。エアコン暖房や、石油ストーブとの併用をお勧めします。
一方、②のケースでは、多くの場合、薪ストーブ1台だけで冬を過ごすことは十分可能だと思います。
では、なぜ②の場合は薪ストーブ1台で暖かいのか―。それを検証します。
朝起きて、薪ストーブユーザーは最初にストーブに火を入れます。準備に約5分かかります。この5分を捻出できない方は、最初から薪ストーブはあきらめてください。エアコンならスイッチを押す1秒で暖かい風が出てきますから。薪ストーブは不便です。でもその不便さこそが魅力なのです。
火が付いたら朝食の準備など、朝の活動が始まるわけですが、大体最初の30分~1時間以内に追加の薪をくべます。そして、火をつけてから2時間後、家を出るときにもう2本くらい薪を追加して家を出ます。この薪が燃え尽きるまで、約2時間かかります。
そうすると、朝の時点で4時間薪ストーブを使っていた計算になります。
夕方、5時に帰宅すると、家の中はほんのり暖かいはずです。過去17年以内に建てられた家なら、真冬の山形でも室温が12度を下回ることは、ほぼないはずです。
その状況で夕方薪ストーブに再度点火します。これは夜寝るまで使うわけですが、6時間も使っていれば、当初12度だった室温は22度以上になっていると思います(我が家は時々26度以上になっています)。そして、寝る前に最後に薪をくべて寝れば、燃え尽きるまでに夜は8時間薪ストーブを使っている計算になります。朝と合わせれば12時間です。
こうした使い方をしていれば、朝起きたときの外気温がたとえ氷点下5度を下回っていたとしても、室温は12度以上をキープしていると思いますし(控えめに書いているだけで我が家では朝の室温が15度を下回ることは年に1、2回しかありません)、そうすると夜帰宅した時も暖かい状況からスタートできます。
特に冬の間、日中暖かい日差しが降り注ぐ関東や東北でも太平洋側なら、夕方までほとんど室温が下がらないと思います。
ここまで書いてきましたが、薪ストーブではなく、エアコン暖房や石油ストーブを使ってきた方ですと、朝家を出るときにたとえ20度以上あっても、夕方には10度以下に室温が下がってるよー。と言いたい方もたくさんいらっしゃると思います。
私も、アパート暮しだった独身時代、夜家に帰ってファンヒーターのスイッチを押すと室温が5度とか6度になっていることがザラでした。冷蔵庫の中の方が暖かいんじゃないかと思ったことも何度もあります。
なので、次回はこのあたり、何で薪ストーブを使っている家の室温は下がらないのか。
その点について書いていきたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月12日土曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑮
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑮
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし、その後の長い上りに心が折れそうになりながらも登り切った。ようやく補給も行い、後半戦に突入したー。
バイクパートの後半はジェットコースターと呼ばれるコースが続く。要するに上り下りが繰り返されるコースということ。とはいえ、どの程度の上り下りなのかは行ってみないとわからない。ここまで、思ったようにペースを上げることができていないので、何とかここでペースアップを果たしたい。
とはいえ、通常、アップダウンがあるコースと平地のコースの場合、平地の方がペースが早くなるので、期待はできないが・・・。
小学校の算数の問題みたいだけれど、例えば、時速30kmのスピードで巡航できるとすると、15km進むのにかかる時間は30分。
これが、上り5km、平地5km、下り5kmのコースがあって、平地は同じ時速30kmのペースで走れるとして、上りは半分の時速15km、下りは倍の時速60kmで走れるとする。
一見、同じスピードで走れそうな気がするけれど、これが間違い。
上りの5kmを時速15kmで走ると20分かかる。平地の5kmは10分。この時点で30分かかっている。下りの5kmは5分で走り抜けられる計算になるが、計35分。
上り下りがあると、下りのスピードアップ分では、上りのロスを上回れない。
けれど、これが500mの下りの後に500mの上り、そして平地が500mとなると話が変わってくる。下りのスピードアップ分の勢いを使って上るので、上りのロスが減る。斜度にもよるけれど、500m下って時速60kmまで加速していた場合、上りは200m位まではだんだんスピードが落ちて平地の巡航速度くらいになり、上りの時速15にまで落ちるのは最後の100m位。ここはダンシングで頑張ればそこまでスピードが落ちることなくクリアできるので、平地と同じくらいの時間で通過できてしまう。
こうなることを期待して後半戦に入ったのだけれど、そうは問屋が降ろさなかった。皆生大会は、交通規制が敷かれていないことは前にも書いた。そのため、一時停止の標識や、信号機があると赤信号では止まらないといけない。
これが絶妙なポイントにある。
下りに入ってスピードが上がった勢いで、次の上りに入りたい時、下った先に一時停止の標識があることがある。そうすると、せっかく時速60kmまで加速したのに、急ブレーキをかけて一時停止。そして上りを時速0kmから進まないといけない。
また、同じく下りで加速してきたのに、わずか50m前で信号が赤になることも。
ロードバイク乗っている人ならわかると思うけど、これが悲しい。本当に悲しくなる。
時速60km→0kmを何度繰り返したことか。
それでも何とか、最後の折り返しを通過。
エイドステーションの方から、「ここからは最後天国だぞ」と言われて送り出された。
残り40kmちょっと。
想定よりは遅れているが、完走が危ぶまれるようなペースには一度もなっていない。ある意味順調に距離を積んでいる状態だ。
このまま何事もなくバイクフィニッシュを迎えたい。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし、その後の長い上りに心が折れそうになりながらも登り切った。ようやく補給も行い、後半戦に突入したー。
バイクパートの後半はジェットコースターと呼ばれるコースが続く。要するに上り下りが繰り返されるコースということ。とはいえ、どの程度の上り下りなのかは行ってみないとわからない。ここまで、思ったようにペースを上げることができていないので、何とかここでペースアップを果たしたい。
とはいえ、通常、アップダウンがあるコースと平地のコースの場合、平地の方がペースが早くなるので、期待はできないが・・・。
小学校の算数の問題みたいだけれど、例えば、時速30kmのスピードで巡航できるとすると、15km進むのにかかる時間は30分。
これが、上り5km、平地5km、下り5kmのコースがあって、平地は同じ時速30kmのペースで走れるとして、上りは半分の時速15km、下りは倍の時速60kmで走れるとする。
一見、同じスピードで走れそうな気がするけれど、これが間違い。
上りの5kmを時速15kmで走ると20分かかる。平地の5kmは10分。この時点で30分かかっている。下りの5kmは5分で走り抜けられる計算になるが、計35分。
上り下りがあると、下りのスピードアップ分では、上りのロスを上回れない。
けれど、これが500mの下りの後に500mの上り、そして平地が500mとなると話が変わってくる。下りのスピードアップ分の勢いを使って上るので、上りのロスが減る。斜度にもよるけれど、500m下って時速60kmまで加速していた場合、上りは200m位まではだんだんスピードが落ちて平地の巡航速度くらいになり、上りの時速15にまで落ちるのは最後の100m位。ここはダンシングで頑張ればそこまでスピードが落ちることなくクリアできるので、平地と同じくらいの時間で通過できてしまう。
こうなることを期待して後半戦に入ったのだけれど、そうは問屋が降ろさなかった。皆生大会は、交通規制が敷かれていないことは前にも書いた。そのため、一時停止の標識や、信号機があると赤信号では止まらないといけない。
これが絶妙なポイントにある。
下りに入ってスピードが上がった勢いで、次の上りに入りたい時、下った先に一時停止の標識があることがある。そうすると、せっかく時速60kmまで加速したのに、急ブレーキをかけて一時停止。そして上りを時速0kmから進まないといけない。
また、同じく下りで加速してきたのに、わずか50m前で信号が赤になることも。
ロードバイク乗っている人ならわかると思うけど、これが悲しい。本当に悲しくなる。
時速60km→0kmを何度繰り返したことか。
それでも何とか、最後の折り返しを通過。
エイドステーションの方から、「ここからは最後天国だぞ」と言われて送り出された。
残り40kmちょっと。
想定よりは遅れているが、完走が危ぶまれるようなペースには一度もなっていない。ある意味順調に距離を積んでいる状態だ。
このまま何事もなくバイクフィニッシュを迎えたい。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月9日水曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑭
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑭
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし、その後の長い上りに心が折れそうになりながらも登り切った。しかし、距離はまだ半分残っている。
あと200mで下り―。
その声に鼓舞され、力を振り絞る。・・・しかしこれ、今思うと振り絞る力が残っていたということだ。その直前まではいつ足を止めて歩くかを考えていたというのに、現金なもので、間もなく終わりと聞くと頑張れる。要は気持ちの持ちようで頑張れるときとがんばれないときがあるということ。
これは、仕事や人生の色々なところでも出てくることだと思う。終わらない仕事やタスクの数々。毛できないと思ったことでも、何かのきっかけでもっと頑張れるようになる。
別に精神論を言いたいわけではなく、結局のところ、モチベーションを上げる「仕組み」をどう自分の中で作るかということなんだと思う。自分の力で、自分の心でモチベーションを上げていくのは難しい。けれど、例えば友人に「○○○○」をやると宣言することで、「途中で挫折すると恥ずかしい」という状況を作る。これも、一つモチベーションを上げる方法だといえる。こういうことを一つ一つ積み重ねていくことが、様々な壁を乗り越える力になるんだと思う。
この時も、確かに壁を一つ越えたと実感できる瞬間だった。残りの200mを走り切り、下りに入る。それまで、下手をすると時速10kmを下回るようなスピードで走っていたのと違い、40km以上にスピードが上がると、風を受けて気持ちがいい上に、汗が乾き体温が下がる。
そうすると、それまでぼんやりしていた頭がすっきりしてきて、色々なことに目が向けられるようになる。まず、アベレージスピードが上りに入る前は、28kmほどだったのが、22km前後に落ちている。これは下りが続けば回復できるはずだけれど、結構ペースが落ちていた。
また、残りの距離が約半分。70kmほど残っている。補給のリズムがずれているので、次の補給時間から立て直しが必要だ。それと、下りながら回している足に少しずつ力が戻ってきた感じがする。疲れから一気に足が止まった50km過ぎの落ち込みから、脂肪燃焼+補給した糖質の消費エネルギーで体を動かすサイクルがうまく回り始めたことが要因だろう。ここが一つの壁を乗り越えたということだ。
思ったよりも短い下りが終わり、小さいアップダウンが続く。水はボトルに入っていない。水分補給ができないのが痛いが、スピードが出ている分、暑さをあまり感じなくなっていて我慢できる。
そうして走ること15分あまり。ようやく、ようやくエイドステーションが見えてきた。
ここでは、これまでのような軽い補給ではなく、一度しっかりと立て直すことにする。
まず、カラカラに乾いていたのどを潤す。渡されたボトルのふたを開けてまずはコーラを一気飲み。さらにスポーツドリンクを一本飲んだ。
ぷは~~~!生き返る!!
飲んだ瞬間全身から汗が噴き出してくる。もう体中の毛穴という毛穴が開きまくっているので、汗の出方が半端ない。レース中にもらえるボトルを水で満タンにすると、持参してきたボトルには、クエン酸入りのドリンクの粉末を溶かす。これ、本当は1リットルの水に溶かすものなんだけど、600mlのボトルに入れて濃いめのドリンクにする。もう一本の水と一緒に使えばちょうどいいだろう。
また、エイドステーションに置いてあった、レモンに塩をつけてほおばる。これが不思議なもので、いつもならレモンにかじりつくなんて酸っぱくてできないのに、全然酸っぱくない。八朔とか、ちょっと酸っぱい柑橘系の果物を食べているくらいにしか感じない。
やはり、体が必要なものを欲しているということなんだろうか。
最後に頭に氷水を賭けてもらう。全身にかけてもらってもいいんだけど、バイクシューズが濡れると足の裏の皮がふやけてしまい、ランで豆ができるのを避けるために全身は濡らさないように気を付けていた。
補給のジェル、そして会場にあったスイカがうまい。こちらもいくつかほおばり、バナナをほおばったら、お腹がタプタプになった。大丈夫か?
何はともあれ、このエイドステーションでしっかりと補給できた。バイクパート後半、ここから正念場だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし、その後の長い上りに心が折れそうになりながらも登り切った。しかし、距離はまだ半分残っている。
あと200mで下り―。
その声に鼓舞され、力を振り絞る。・・・しかしこれ、今思うと振り絞る力が残っていたということだ。その直前まではいつ足を止めて歩くかを考えていたというのに、現金なもので、間もなく終わりと聞くと頑張れる。要は気持ちの持ちようで頑張れるときとがんばれないときがあるということ。
これは、仕事や人生の色々なところでも出てくることだと思う。終わらない仕事やタスクの数々。毛できないと思ったことでも、何かのきっかけでもっと頑張れるようになる。
別に精神論を言いたいわけではなく、結局のところ、モチベーションを上げる「仕組み」をどう自分の中で作るかということなんだと思う。自分の力で、自分の心でモチベーションを上げていくのは難しい。けれど、例えば友人に「○○○○」をやると宣言することで、「途中で挫折すると恥ずかしい」という状況を作る。これも、一つモチベーションを上げる方法だといえる。こういうことを一つ一つ積み重ねていくことが、様々な壁を乗り越える力になるんだと思う。
この時も、確かに壁を一つ越えたと実感できる瞬間だった。残りの200mを走り切り、下りに入る。それまで、下手をすると時速10kmを下回るようなスピードで走っていたのと違い、40km以上にスピードが上がると、風を受けて気持ちがいい上に、汗が乾き体温が下がる。
そうすると、それまでぼんやりしていた頭がすっきりしてきて、色々なことに目が向けられるようになる。まず、アベレージスピードが上りに入る前は、28kmほどだったのが、22km前後に落ちている。これは下りが続けば回復できるはずだけれど、結構ペースが落ちていた。
また、残りの距離が約半分。70kmほど残っている。補給のリズムがずれているので、次の補給時間から立て直しが必要だ。それと、下りながら回している足に少しずつ力が戻ってきた感じがする。疲れから一気に足が止まった50km過ぎの落ち込みから、脂肪燃焼+補給した糖質の消費エネルギーで体を動かすサイクルがうまく回り始めたことが要因だろう。ここが一つの壁を乗り越えたということだ。
思ったよりも短い下りが終わり、小さいアップダウンが続く。水はボトルに入っていない。水分補給ができないのが痛いが、スピードが出ている分、暑さをあまり感じなくなっていて我慢できる。
そうして走ること15分あまり。ようやく、ようやくエイドステーションが見えてきた。
ここでは、これまでのような軽い補給ではなく、一度しっかりと立て直すことにする。
まず、カラカラに乾いていたのどを潤す。渡されたボトルのふたを開けてまずはコーラを一気飲み。さらにスポーツドリンクを一本飲んだ。
ぷは~~~!生き返る!!
飲んだ瞬間全身から汗が噴き出してくる。もう体中の毛穴という毛穴が開きまくっているので、汗の出方が半端ない。レース中にもらえるボトルを水で満タンにすると、持参してきたボトルには、クエン酸入りのドリンクの粉末を溶かす。これ、本当は1リットルの水に溶かすものなんだけど、600mlのボトルに入れて濃いめのドリンクにする。もう一本の水と一緒に使えばちょうどいいだろう。
また、エイドステーションに置いてあった、レモンに塩をつけてほおばる。これが不思議なもので、いつもならレモンにかじりつくなんて酸っぱくてできないのに、全然酸っぱくない。八朔とか、ちょっと酸っぱい柑橘系の果物を食べているくらいにしか感じない。
やはり、体が必要なものを欲しているということなんだろうか。
最後に頭に氷水を賭けてもらう。全身にかけてもらってもいいんだけど、バイクシューズが濡れると足の裏の皮がふやけてしまい、ランで豆ができるのを避けるために全身は濡らさないように気を付けていた。
補給のジェル、そして会場にあったスイカがうまい。こちらもいくつかほおばり、バナナをほおばったら、お腹がタプタプになった。大丈夫か?
何はともあれ、このエイドステーションでしっかりと補給できた。バイクパート後半、ここから正念場だ。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月8日火曜日
薪ストーブのメリットデメリット(1)薪ストーブって暖かいの?
薪ストーブ。
ゆらめく炎とエアコンとは質の違う暖かさ。
家を新築するとき、または、リフォームするときに自宅に薪ストーブを導入したいと考える方が多いと思います。
一方で、薪の調達方法はどうする?本当に暖かいの?費用はどのくらいかかるの?外出するときに火がついたままで危なくないの?などと疑問や不安に思い、色々と調べている方もたくさんいるのではないでしょうか。
このブログでは、薪ストーブ歴11年の筆者が、これまでの薪ストーブライフを元に、薪ストーブ導入のメリット、デメリット、苦労や楽しさについて赤裸々に語っていきます。
これから薪ストーブを導入しようという人、また、設置したけれど上手に使えていない人にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
記念すべき第一回目の今回は、薪ストーブは本当に暖かいの?です。
結論から言いますと薪ストーブは暖かいです。
よくエアコンや石油ヒーターとは違う暖かさがあると言われていますが、どういうこと?と思われている方も多いと思います。どういう暖かさか?
それは、暖かいことに気づかない暖かさ。言い換えれば、外が寒いことを忘れる暖かさです。
何だかそれこそどういうこと?と言われてしまいそうですが、実際薪ストーブユーザーなら共感できるのではないでしょうか。
我が家では、夜寝る前の室温は大体24度くらいになっています。これは、山形だと5月半ば、もしくは9月下旬の最高気温と同じです。上着を脱いでYシャツ一枚でちょうどいい気温。
この季節に外にいて、皆さん、暖かいって実感していますか?
何かの暖房器具で暖められている・・・この場合は太陽に暖めらえているとか感じますか?意識していないですよね。
そういう気温だから、そういう季節だから、自然とそういう服装になりますよね。
それは、どこに行ってもその気温だからです。
我が家では、冬になると家の中の扉という扉はすべて開け放ちます。家中を1台の薪ストーブで暖めています。家中が暖かいので、外に出るときにびっくりします。あれ、きょうってこんなに寒かったんだって。
エアコンや石油ヒーターは、部屋を暖めているな・・・って感じる暖かさですが、薪ストーブは薪ストーブで部屋を暖めているとは感じない。それくらい家の「空気」だけでなく、「床」や「壁」、「天井」、すべてが暖かくなる。そういう暖かさがあります。
ただ、こうした暖かさを享受するには、一つ、大きな条件があります。
それは、一日中薪ストーブを焚いていること。
少なくとも10時間くらいは薪ストーブを連続して使っていないと、こういう暖かさにはなりません。
いやいや、日中は仕事に出てるからそんなに長い間連続して薪ストーブ使っていられないよ・・・。という方も多いですよね。
次回は、そのあたり、生活リズムに合った薪ストーブの使い方をした場合に、どのくらい暖かいのか―について書いていきます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
ゆらめく炎とエアコンとは質の違う暖かさ。
家を新築するとき、または、リフォームするときに自宅に薪ストーブを導入したいと考える方が多いと思います。
一方で、薪の調達方法はどうする?本当に暖かいの?費用はどのくらいかかるの?外出するときに火がついたままで危なくないの?などと疑問や不安に思い、色々と調べている方もたくさんいるのではないでしょうか。
このブログでは、薪ストーブ歴11年の筆者が、これまでの薪ストーブライフを元に、薪ストーブ導入のメリット、デメリット、苦労や楽しさについて赤裸々に語っていきます。
これから薪ストーブを導入しようという人、また、設置したけれど上手に使えていない人にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
記念すべき第一回目の今回は、薪ストーブは本当に暖かいの?です。
結論から言いますと薪ストーブは暖かいです。
よくエアコンや石油ヒーターとは違う暖かさがあると言われていますが、どういうこと?と思われている方も多いと思います。どういう暖かさか?
それは、暖かいことに気づかない暖かさ。言い換えれば、外が寒いことを忘れる暖かさです。
何だかそれこそどういうこと?と言われてしまいそうですが、実際薪ストーブユーザーなら共感できるのではないでしょうか。
我が家では、夜寝る前の室温は大体24度くらいになっています。これは、山形だと5月半ば、もしくは9月下旬の最高気温と同じです。上着を脱いでYシャツ一枚でちょうどいい気温。
この季節に外にいて、皆さん、暖かいって実感していますか?
何かの暖房器具で暖められている・・・この場合は太陽に暖めらえているとか感じますか?意識していないですよね。
そういう気温だから、そういう季節だから、自然とそういう服装になりますよね。
それは、どこに行ってもその気温だからです。
我が家では、冬になると家の中の扉という扉はすべて開け放ちます。家中を1台の薪ストーブで暖めています。家中が暖かいので、外に出るときにびっくりします。あれ、きょうってこんなに寒かったんだって。
エアコンや石油ヒーターは、部屋を暖めているな・・・って感じる暖かさですが、薪ストーブは薪ストーブで部屋を暖めているとは感じない。それくらい家の「空気」だけでなく、「床」や「壁」、「天井」、すべてが暖かくなる。そういう暖かさがあります。
ただ、こうした暖かさを享受するには、一つ、大きな条件があります。
それは、一日中薪ストーブを焚いていること。
少なくとも10時間くらいは薪ストーブを連続して使っていないと、こういう暖かさにはなりません。
いやいや、日中は仕事に出てるからそんなに長い間連続して薪ストーブ使っていられないよ・・・。という方も多いですよね。
次回は、そのあたり、生活リズムに合った薪ストーブの使い方をした場合に、どのくらい暖かいのか―について書いていきます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月6日日曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑬
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑬
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし―。
バイクパートが50km地点を迎えたあたりから、いきなり来た。
それまで順調すぎるくらいに順調だった道のり。遅いながらも確実にクリアしたスイム。思った以上のペースで走れるバイク。しかし、そのペースがメッキに過ぎないことが突然明らかになった。
呼吸はそれほど辛くないのに足が重い。そして何より、ロングライドで100kmを走ったころのような「どんより」とした疲れが全身を包んでいる。この感覚、バイクのロングライドをした経験がある人ならわかると思うんだけど、特にどこかがきついわけでも足が痛くなったわけでもないのに、ペダルをこいでいられない感じ。
ほんの数分前までは、ボランティアの皆さん全員に返事をしていたのに、急にそれが億劫になる。声が出ない―。
スタートから約4時間。今にして思うと、これがレース前に蓄えたエネルギーが切れたタイミングだったんだと思う。
もちろん、バイクパートに入ってからはきちんと補給をしていた。先輩選手のブログで、レース中、1時間に吸収できる糖質の量は40gが限界ー。と書かれてあったので、1時間に280kcalのエネルギー補給を計算し、30分おきにジェルを1つ口にしていた。
でも、この時の状況というのは、例えばの話、体内に100リットル分のエネルギーを蓄えていて、1分間当たり2リットルずつ消費していた時に、毎分1リットル分だけ補給をしていたら、100分後に体内に蓄積されているエネルギーがゼロになった・・・というようなものだと思う。
だから、これまで同様エネルギーの無駄遣いをしていると、もう貯金がすっからかんになっているので、同じことはできませんよー。とカラダに言われているような状況だ。
したがって、ここから先は1分間に1リットルの消費エネルギーのペースで行くか(ペースを落として補給と消費量の均衡を図る)、脂肪を燃焼させて1分間に1リットルのエネルギーを絞り出し、同じペースで行くかしかない。
けれど、これまでのレース中は糖質を主のエネルギーにしていたので、脂肪燃焼サイクルにうまく入れていなかったため、こうした苦しい状況になってしまったんだと思う。
たぶん、ロングのレースに出るような人たちは、普段の練習から脂肪燃焼サイクルがうまく回るような練習をしていたんだろうけれど、たった2か月半の付け焼刃だとそうはいかなかったわけです。
このあたりが、ロングのレースの本当に大変なところ。オリンピックディスタンスのレースや、ハーフマラソンのレースだとこういう状況に来る前にゴールできてしまうので、見えていなかった。
そして、こうした状況に追い打ちをかけるように、ここからコースの最高到達点に至る長い上りが始まった。
それまで25km前後のペースで走っていた時には感じなかった暑さが、時速10km前後になると途端にまとわりついてくる。地面からの照り返しが強烈だ。背中を直火であぶられている上に、下から蒸気で蒸しあげられているような感じ。
午前10時の気温は32度。上り坂に入る前に2本のボトルに満タンにしていた水は、すでに1本は空になり、もう一本も半分くらいしか残っていない。初めての参加なのでこの先どこまで上りが続くのかが分からず、水を十分に飲めていない。最初の方で体を冷やすのに使いすぎたみたいだ。
途中、気持ちが悪くなってくる。少しだけど吐き気もしてきた。熱中症になりかけているサインだ。やばい。水を飲む。でももうちゃぷちゃぷという音がボトルの底の方でするだけ、ほとんど飲んでしまった。
次のエイドステーションはいつなんだろう。ああ、前を走っている人たちが皆バイクを降りて歩いている。木陰で倒れこんでいる人もいる。ああ、木陰というか日陰が欲しい。でも道路の上には全く木陰が無い。山道なので民家もないし、そのために水を分けてもらうこともできない。
ああ、歩こうかな。これは厳しいかもしれない。水もついになくなってしまった。仕方ない、ちょっと早いけどジェルを飲んで水分を補給しよう。
うげっ。口の中がねばねばする。つばも出てこない。そういえば、汗かいてるはずなのに背中とかサラッさらに乾いてる。
ああ、本当にもう限界だ。本当にやばいぞ。あれ、救急車が止まっている。ああ、駄目だったんだな。僕もそうならないようにしないと。迷惑かけられないからな。次の交差点曲がってもまだ上り続いていたら一旦歩こう・・・。
朦朧とする頭で、こんなことを考えながら、なぜか立ち止まらずにペダルをこぎ続けた。
ーそんな時、ボランティアの声が聞こえた。
「あと200m上ったら下りだぞ」
天の声だ―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクパートに移行し、50kmまでは順調な滑り出し。しかし―。
バイクパートが50km地点を迎えたあたりから、いきなり来た。
それまで順調すぎるくらいに順調だった道のり。遅いながらも確実にクリアしたスイム。思った以上のペースで走れるバイク。しかし、そのペースがメッキに過ぎないことが突然明らかになった。
呼吸はそれほど辛くないのに足が重い。そして何より、ロングライドで100kmを走ったころのような「どんより」とした疲れが全身を包んでいる。この感覚、バイクのロングライドをした経験がある人ならわかると思うんだけど、特にどこかがきついわけでも足が痛くなったわけでもないのに、ペダルをこいでいられない感じ。
ほんの数分前までは、ボランティアの皆さん全員に返事をしていたのに、急にそれが億劫になる。声が出ない―。
スタートから約4時間。今にして思うと、これがレース前に蓄えたエネルギーが切れたタイミングだったんだと思う。
もちろん、バイクパートに入ってからはきちんと補給をしていた。先輩選手のブログで、レース中、1時間に吸収できる糖質の量は40gが限界ー。と書かれてあったので、1時間に280kcalのエネルギー補給を計算し、30分おきにジェルを1つ口にしていた。
でも、この時の状況というのは、例えばの話、体内に100リットル分のエネルギーを蓄えていて、1分間当たり2リットルずつ消費していた時に、毎分1リットル分だけ補給をしていたら、100分後に体内に蓄積されているエネルギーがゼロになった・・・というようなものだと思う。
だから、これまで同様エネルギーの無駄遣いをしていると、もう貯金がすっからかんになっているので、同じことはできませんよー。とカラダに言われているような状況だ。
したがって、ここから先は1分間に1リットルの消費エネルギーのペースで行くか(ペースを落として補給と消費量の均衡を図る)、脂肪を燃焼させて1分間に1リットルのエネルギーを絞り出し、同じペースで行くかしかない。
けれど、これまでのレース中は糖質を主のエネルギーにしていたので、脂肪燃焼サイクルにうまく入れていなかったため、こうした苦しい状況になってしまったんだと思う。
たぶん、ロングのレースに出るような人たちは、普段の練習から脂肪燃焼サイクルがうまく回るような練習をしていたんだろうけれど、たった2か月半の付け焼刃だとそうはいかなかったわけです。
このあたりが、ロングのレースの本当に大変なところ。オリンピックディスタンスのレースや、ハーフマラソンのレースだとこういう状況に来る前にゴールできてしまうので、見えていなかった。
そして、こうした状況に追い打ちをかけるように、ここからコースの最高到達点に至る長い上りが始まった。
それまで25km前後のペースで走っていた時には感じなかった暑さが、時速10km前後になると途端にまとわりついてくる。地面からの照り返しが強烈だ。背中を直火であぶられている上に、下から蒸気で蒸しあげられているような感じ。
午前10時の気温は32度。上り坂に入る前に2本のボトルに満タンにしていた水は、すでに1本は空になり、もう一本も半分くらいしか残っていない。初めての参加なのでこの先どこまで上りが続くのかが分からず、水を十分に飲めていない。最初の方で体を冷やすのに使いすぎたみたいだ。
途中、気持ちが悪くなってくる。少しだけど吐き気もしてきた。熱中症になりかけているサインだ。やばい。水を飲む。でももうちゃぷちゃぷという音がボトルの底の方でするだけ、ほとんど飲んでしまった。
次のエイドステーションはいつなんだろう。ああ、前を走っている人たちが皆バイクを降りて歩いている。木陰で倒れこんでいる人もいる。ああ、木陰というか日陰が欲しい。でも道路の上には全く木陰が無い。山道なので民家もないし、そのために水を分けてもらうこともできない。
ああ、歩こうかな。これは厳しいかもしれない。水もついになくなってしまった。仕方ない、ちょっと早いけどジェルを飲んで水分を補給しよう。
うげっ。口の中がねばねばする。つばも出てこない。そういえば、汗かいてるはずなのに背中とかサラッさらに乾いてる。
ああ、本当にもう限界だ。本当にやばいぞ。あれ、救急車が止まっている。ああ、駄目だったんだな。僕もそうならないようにしないと。迷惑かけられないからな。次の交差点曲がってもまだ上り続いていたら一旦歩こう・・・。
朦朧とする頭で、こんなことを考えながら、なぜか立ち止まらずにペダルをこぎ続けた。
ーそんな時、ボランティアの声が聞こえた。
「あと200m上ったら下りだぞ」
天の声だ―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月5日土曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑫
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑫
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクがスタートした。バイクスタート時点で限りなく900位に近い順位だったので、これ以上落ちることはほぼない状況。最後尾から何人まくれるか―。とりあえず、100人は抜くことを目標に走り出す。
スタート直後は、直角コーナーが連続する住宅地の生活道路。そこから川沿いの土手にを走る。スイム終了時点では、体力的な厳しさはどこにもなく、また、風があたるので暑さもそれほどは感じない。
しかし、後に気象庁のデータを調べたところ、午前8時半過ぎには気温30度を超えていた。4000人いるというボランティア(選手の4倍以上の数の方がボランティアとしてレースに参加していた。衝撃の人数!)の方々が、交差点ごとに立っていてくれた。トップ選手が通過して30分以上経過していることもあり、だれてしまっている方もいらっしゃったが、この炎天下に早朝からスタンバイしているんだから仕方ないだろうと思う。
それでも、ほとんどの方が腹の底から大きな声で「頑張れー!」と声援を送ってくれる。心に沁みる。
ホント、皆さんがこんなに一生懸命に大会を作り上げてくださっているのに、僕なんかたった2か月ちょっとしか練習してなくて出場しちゃってごめんなさい。
何だか、そういう思いが先に来てしまって、一人ひとりに「ありがとう!」「暑い中ありがとう!」「水分とってね」などと、返事をしていった。
正直、30秒おきにボランティアの方から声をかけられるような状態なので、こちらもずっと声を出しっぱなし。でも全然辛くない。むしろ、そうやって声を出している方が、こちらも力が湧いてくるような気がする。
スタートから30分はほとんどそんな感じで声を出しながら走り続けた。
バイクの予定スピードは、時速25km。コース長が140kmなので、5時間で125km。大体5時間半でフィニッシュしたい。スイムを1時間半であがっているので、バイク終了時点で7時間。残りの7時間半をランにあてればどんなに最後歩いたとしてもゴールはできる計算だ。とらぬ狸の皮算用なのは十分承知しているが、決して無理なペースではないはず。
走り出して30分。サイクルメーターの数字はアベレージ28kmを差している。長距離のレースになるのでできるだけ最初は抑えているはずなのに想定よりも結構速い。
正確に言うと、25km位のペースで走っている感覚なのに、28kmが出ている。28kmのペースで走っていて28kmならいいんだけど、そうでない。
これは、レース直前に8000円という大金をはたいて(!)、タイヤを8年ぶり(!)に新しくした効果なのか、アドレナリンが出まくっていて思っている以上の力が出てしまっているのか・・・。きっとその両方だ。
なんにせよ、スピードが出ていることはいいことなので、とりあえずそれ以上抑えることもせず、逆に調子に乗ってペースアップすることもしないで、一定のケイデンスでペダルを回していく。ギアはなるべく軽く。フロントはインナー。リアも軽い方から4枚目から5枚目。ケイデンスは90~95を目安に。
そういえば、大学で初めてロードバイクに乗ったころは、110回転くらいを腰を浮かさずに回す練習をしていた。それってどういう意味があったんだろう。結果として110回転以下で回すことがなくなっていたな・・・。
この皆生大会、ほかのレースと大きく異なることが一つある。それがコースの交通規制が敷かれていないということ。通常ならば、バイクとランのコースは完全に封鎖され、信号もない状態になっているが、皆生大会の場合は、赤信号の場合は青になるまで止まらなければならないし、コースの途中には地下道を歩いて通らなければならないところもある。
そうした、ほかの大会とは違った面も楽しみながら、多くの人に支えられていることを心の底から実感するコースを走り抜けていく。今までトライアスロンでは、20以上の大会に出場してきたけれど、ここまで多くのボランティア、そして沿道の人たちが声援を送ってくれる大会は初めてだった。
そういう形で最初の1時間は順調に進んでいった。信号のある交差点にもほとんど出会うことが無く、交通規制なんてなくても全然問題ないじゃない・・・なんて考えていた。
前回までのあらすじ―。
ふとしたことから思い立った全日本トライアスロン皆生大会出場。奇跡的に抽選に受かり、わずか練習2か月で挑んだ大会。山形から1000kmを車にバイク他一式を積み込んで自走して会場入りした大会は、最高気温36度を超える灼熱のレースだった。
バイクがスタートした。バイクスタート時点で限りなく900位に近い順位だったので、これ以上落ちることはほぼない状況。最後尾から何人まくれるか―。とりあえず、100人は抜くことを目標に走り出す。
スタート直後は、直角コーナーが連続する住宅地の生活道路。そこから川沿いの土手にを走る。スイム終了時点では、体力的な厳しさはどこにもなく、また、風があたるので暑さもそれほどは感じない。
しかし、後に気象庁のデータを調べたところ、午前8時半過ぎには気温30度を超えていた。4000人いるというボランティア(選手の4倍以上の数の方がボランティアとしてレースに参加していた。衝撃の人数!)の方々が、交差点ごとに立っていてくれた。トップ選手が通過して30分以上経過していることもあり、だれてしまっている方もいらっしゃったが、この炎天下に早朝からスタンバイしているんだから仕方ないだろうと思う。
それでも、ほとんどの方が腹の底から大きな声で「頑張れー!」と声援を送ってくれる。心に沁みる。
ホント、皆さんがこんなに一生懸命に大会を作り上げてくださっているのに、僕なんかたった2か月ちょっとしか練習してなくて出場しちゃってごめんなさい。
何だか、そういう思いが先に来てしまって、一人ひとりに「ありがとう!」「暑い中ありがとう!」「水分とってね」などと、返事をしていった。
正直、30秒おきにボランティアの方から声をかけられるような状態なので、こちらもずっと声を出しっぱなし。でも全然辛くない。むしろ、そうやって声を出している方が、こちらも力が湧いてくるような気がする。
スタートから30分はほとんどそんな感じで声を出しながら走り続けた。
バイクの予定スピードは、時速25km。コース長が140kmなので、5時間で125km。大体5時間半でフィニッシュしたい。スイムを1時間半であがっているので、バイク終了時点で7時間。残りの7時間半をランにあてればどんなに最後歩いたとしてもゴールはできる計算だ。とらぬ狸の皮算用なのは十分承知しているが、決して無理なペースではないはず。
走り出して30分。サイクルメーターの数字はアベレージ28kmを差している。長距離のレースになるのでできるだけ最初は抑えているはずなのに想定よりも結構速い。
正確に言うと、25km位のペースで走っている感覚なのに、28kmが出ている。28kmのペースで走っていて28kmならいいんだけど、そうでない。
これは、レース直前に8000円という大金をはたいて(!)、タイヤを8年ぶり(!)に新しくした効果なのか、アドレナリンが出まくっていて思っている以上の力が出てしまっているのか・・・。きっとその両方だ。
なんにせよ、スピードが出ていることはいいことなので、とりあえずそれ以上抑えることもせず、逆に調子に乗ってペースアップすることもしないで、一定のケイデンスでペダルを回していく。ギアはなるべく軽く。フロントはインナー。リアも軽い方から4枚目から5枚目。ケイデンスは90~95を目安に。
そういえば、大学で初めてロードバイクに乗ったころは、110回転くらいを腰を浮かさずに回す練習をしていた。それってどういう意味があったんだろう。結果として110回転以下で回すことがなくなっていたな・・・。
この皆生大会、ほかのレースと大きく異なることが一つある。それがコースの交通規制が敷かれていないということ。通常ならば、バイクとランのコースは完全に封鎖され、信号もない状態になっているが、皆生大会の場合は、赤信号の場合は青になるまで止まらなければならないし、コースの途中には地下道を歩いて通らなければならないところもある。
そうした、ほかの大会とは違った面も楽しみながら、多くの人に支えられていることを心の底から実感するコースを走り抜けていく。今までトライアスロンでは、20以上の大会に出場してきたけれど、ここまで多くのボランティア、そして沿道の人たちが声援を送ってくれる大会は初めてだった。
そういう形で最初の1時間は順調に進んでいった。信号のある交差点にもほとんど出会うことが無く、交通規制なんてなくても全然問題ないじゃない・・・なんて考えていた。
これが甘い考えだったのは、50kmを過ぎたころからの思い知ることになるのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月4日金曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑪
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑪
スイム後半がスタートした。
今回は、進路右側に最短距離のコースロープがある。ここは、息継ぎをするたびに確認できるので、ヘッドアップの必要がない。しかも、ジグザグに泳ぐ心配がないので、後半の方がタイムが期待できる。
まずは沖合に向けて泳いでいく。100mほど泳いだ後に右に曲がり、ここから1000m以上の直線コースだ。体力的にはまだまだ問題ない。回りにはほとんど選手がいないのは相変わらず。マーシャルのライフセイバーさんの方が多いくらいだ。
さて、長い直線を泳ぐ場合、プールと違ってゴールが全く見えないので、場合によっては心が折れそうになる。今回、その対策として僕がとったのは、腕をかく数を数える方法だった。
プールだと、25m泳ぐのに大体10かき~12かきかかる。最初の5mは壁をキックしたときに進むから、実質10mで10~12回腕を動かしていることになる。1かき≒2m(この場合の1かきは、右手と左手の両方を動かしたときを1かきと数えています)。
そうすると、約1500m進むのには、計算上は750回。
ということで、直線に入ってから、750まで腕を回した回数をずっと数えていた。
先のことは考えず、ひたすら数を数えることだけに集中する。眠れない時に羊が一匹、羊が二匹・・・とか数えるのと同じだ。
ちなみに、子供のころ羊が一匹、羊が二匹と数えてなんで眠くなるのか疑問だったが、大人になって謎が解けた。羊は英語だとsheep。シ~プ。シ~プと唱えるのは、羊が・・・と唱えるのとは全然違って呼吸とちょうど合う。ホントのところは知らないが、自分の中ではこれが正解だと思っている。
脇道にそれた。
スイム後半はひたすら単純作業を繰り返し進んでいく。時々、今が400回台なのか、500回台なのか判然としなくなったりしながらも、とにかく数を数えることだけ考える。後どれくらいでゴールかな?とか、何分だろう?とか、ペースはいいか?なんてことを考えるのは上級者になってから。
僕のような永遠の初心者は、いかに「体」と「心」を疲れさせずに淡々と作業を進められるかが重要になる。
これは、仕事にも通じる考えだと思う。仕事をしていると、つい短期的な成果を求めてしまう。けれど、皆生のスイムに関しては、スタートから3000m先にしか、ゴールという成果はない。
100mも2900mも、どちらも途中経過であり、そこでやめてしまったら、結果はDNFでしかなく、成果はゼロだ。
そう、皆生のスイムの成果はゼロか100かしかないのだ。このことを理解していないと、ああ、1000mいったとか、まだ1200m残っているとか、不毛なことを考えてしまう。そうするとモチベーションに上がり下がりが発生し、パフォーマンスも上下してしまう。
成果がでるまで(=ゴールするまで)続けることが、成果を出す唯一の方法なのであれば、どうすればそれを最も効率よく達成できるかに注力するべきだ。
その方法が、僕にとっては回数を数えるという作業だった。実は僕は単純作業が大好きで、単純作業を続けることにストレスがほとんど生じない。合わせて、同じペースで同じ動きを繰り返していくと、体の動きがだんだんと最適化されてくる(疲れによるフォームの乱れを考えなければ)ので、最も効率が良い。
そのため、ひたすら腕をかく回数を数えることに集中した―。
500回を超え、600回を超え、700回を数える。
700回になったところで初めてヘッドアップしたら、50mほど先に最後のコーナーになるブイが見えた。ドンピシャ!
でもここでペースを変えるとよくない。だって最後にはまた200mほど岸に向って泳がなければならない。そこで、またここから200数えることに集中する。
最初の40くらいで最後のコーナーを曲がり終える。そこからまた100回を数え、150回を数える。だんだん海底が浅くなってくる。
さらに進む。そろそろ立てそうな感じがするが、これまでの経験上こう思ってからしばらくしないと足がつかないことは知っていたので、ひたすら手を動かす。足をつくのは手が海底の砂に触ってからだ。
ひとかきひとかき、少しずつながら確実にゴールに向かっている。
そしてついに、右手が海底の砂をとらえた。念のため、もう一回だけ腕を動かしてから立ち上がる。すぐに時計を見ると1時間25分。
後半は38分で回ってきた。前半の47分に比べ10分近く早いタイム。やはり、前半はかなり余計な距離を泳いでいた模様。
水中で重力を感じていなかった体が重い。どたどたという感じで足を進めトランジットエリアに急ぐ。途中シャワーがあって海水を流せたので、ここで一緒にウェットスーツも脱いでしまう。
トランジットエリアでバイク用の荷物が入ったバックをつかみ、更衣室になっているテントへ。素っ裸になりバイクパンツをはいてバイクウェアを着る。ちゃんと靴下もはく。これ、長時間のバイクの場合結構重要で、足の裏に豆ができるのを防いでくれる。
さらに、背中のポケットにジェルを5つ装備。そして来ていたウェットスーツを袋に入れてようやくトランジットエリアを飛び出し、バイクパートに移る。
3種目の中で、比較的得意なバイク。これで順位を上げてやる。
しかし、炎天下でのバイクは想像を超える展開を見せるのだった―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
スイム後半がスタートした。
今回は、進路右側に最短距離のコースロープがある。ここは、息継ぎをするたびに確認できるので、ヘッドアップの必要がない。しかも、ジグザグに泳ぐ心配がないので、後半の方がタイムが期待できる。
まずは沖合に向けて泳いでいく。100mほど泳いだ後に右に曲がり、ここから1000m以上の直線コースだ。体力的にはまだまだ問題ない。回りにはほとんど選手がいないのは相変わらず。マーシャルのライフセイバーさんの方が多いくらいだ。
さて、長い直線を泳ぐ場合、プールと違ってゴールが全く見えないので、場合によっては心が折れそうになる。今回、その対策として僕がとったのは、腕をかく数を数える方法だった。
プールだと、25m泳ぐのに大体10かき~12かきかかる。最初の5mは壁をキックしたときに進むから、実質10mで10~12回腕を動かしていることになる。1かき≒2m(この場合の1かきは、右手と左手の両方を動かしたときを1かきと数えています)。
そうすると、約1500m進むのには、計算上は750回。
ということで、直線に入ってから、750まで腕を回した回数をずっと数えていた。
先のことは考えず、ひたすら数を数えることだけに集中する。眠れない時に羊が一匹、羊が二匹・・・とか数えるのと同じだ。
ちなみに、子供のころ羊が一匹、羊が二匹と数えてなんで眠くなるのか疑問だったが、大人になって謎が解けた。羊は英語だとsheep。シ~プ。シ~プと唱えるのは、羊が・・・と唱えるのとは全然違って呼吸とちょうど合う。ホントのところは知らないが、自分の中ではこれが正解だと思っている。
脇道にそれた。
スイム後半はひたすら単純作業を繰り返し進んでいく。時々、今が400回台なのか、500回台なのか判然としなくなったりしながらも、とにかく数を数えることだけ考える。後どれくらいでゴールかな?とか、何分だろう?とか、ペースはいいか?なんてことを考えるのは上級者になってから。
僕のような永遠の初心者は、いかに「体」と「心」を疲れさせずに淡々と作業を進められるかが重要になる。
これは、仕事にも通じる考えだと思う。仕事をしていると、つい短期的な成果を求めてしまう。けれど、皆生のスイムに関しては、スタートから3000m先にしか、ゴールという成果はない。
100mも2900mも、どちらも途中経過であり、そこでやめてしまったら、結果はDNFでしかなく、成果はゼロだ。
そう、皆生のスイムの成果はゼロか100かしかないのだ。このことを理解していないと、ああ、1000mいったとか、まだ1200m残っているとか、不毛なことを考えてしまう。そうするとモチベーションに上がり下がりが発生し、パフォーマンスも上下してしまう。
成果がでるまで(=ゴールするまで)続けることが、成果を出す唯一の方法なのであれば、どうすればそれを最も効率よく達成できるかに注力するべきだ。
その方法が、僕にとっては回数を数えるという作業だった。実は僕は単純作業が大好きで、単純作業を続けることにストレスがほとんど生じない。合わせて、同じペースで同じ動きを繰り返していくと、体の動きがだんだんと最適化されてくる(疲れによるフォームの乱れを考えなければ)ので、最も効率が良い。
そのため、ひたすら腕をかく回数を数えることに集中した―。
500回を超え、600回を超え、700回を数える。
700回になったところで初めてヘッドアップしたら、50mほど先に最後のコーナーになるブイが見えた。ドンピシャ!
でもここでペースを変えるとよくない。だって最後にはまた200mほど岸に向って泳がなければならない。そこで、またここから200数えることに集中する。
最初の40くらいで最後のコーナーを曲がり終える。そこからまた100回を数え、150回を数える。だんだん海底が浅くなってくる。
さらに進む。そろそろ立てそうな感じがするが、これまでの経験上こう思ってからしばらくしないと足がつかないことは知っていたので、ひたすら手を動かす。足をつくのは手が海底の砂に触ってからだ。
ひとかきひとかき、少しずつながら確実にゴールに向かっている。
そしてついに、右手が海底の砂をとらえた。念のため、もう一回だけ腕を動かしてから立ち上がる。すぐに時計を見ると1時間25分。
後半は38分で回ってきた。前半の47分に比べ10分近く早いタイム。やはり、前半はかなり余計な距離を泳いでいた模様。
水中で重力を感じていなかった体が重い。どたどたという感じで足を進めトランジットエリアに急ぐ。途中シャワーがあって海水を流せたので、ここで一緒にウェットスーツも脱いでしまう。
トランジットエリアでバイク用の荷物が入ったバックをつかみ、更衣室になっているテントへ。素っ裸になりバイクパンツをはいてバイクウェアを着る。ちゃんと靴下もはく。これ、長時間のバイクの場合結構重要で、足の裏に豆ができるのを防いでくれる。
さらに、背中のポケットにジェルを5つ装備。そして来ていたウェットスーツを袋に入れてようやくトランジットエリアを飛び出し、バイクパートに移る。
3種目の中で、比較的得意なバイク。これで順位を上げてやる。
しかし、炎天下でのバイクは想像を超える展開を見せるのだった―。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
人生、曇り時々晴れがいい。
2019年1月3日木曜日
皆生大会惨敗の記録~初心者がロングの大会で失敗しないために~⑩
初めて出場したロングのレース「全日本トライアスロン皆生大会」の失敗をたどる記録⑩
午前7時。
スイムスタートの時間。
スタート地点には900人の選手たちが並ぶ。これまで出てきたオリンピックディスタンスのレースでは、多くても400人程度だったので、これだけの人数が一斉に泳ぎ出すのは初めての経験。
正直、壮観だった。主催者のコールに合わせて皆が一斉に鬨の声を上げる。主催者からは現在の気温が28度。この日は35度以上に上がる予報なので、熱中症に気を付けるようにと言われるが、あとで気象庁の記録を見たらアメダス観測点での気温は26.8度だった。どうやら、会場は観測地点より2度ほど高い模様。
レースでは、前の方はバトルがきついと聞いていたのでで、後方に待機する。だが、この作戦は良い面も悪い面もあった。
元々、オリンピックディスタンスの1500mですら40分くらいかかる泳力しかない。50mを1分20秒(25mを40秒)で泳ぐペースだ。実はひそかにスイムでの足切りを恐れていたくらい。そして、このレベルの泳力で大会に出る人はほとんどいなかった。
後方からスタートすると、最初の5分ほどは若干のバトルがあるものの、すぐに誰とも接触しなくなった。おかしい、900人が泳いでいるはずなのに、何があった?
ヘッドアップして回りを見回すと、周りには選手がほとんどいなかった。
おいて行かれたのだ。
そもそも、回りとバトルできるほどの泳力が無かったのだ。バトルは回りと同じくらいの泳力があって初めてできる・・・というか起きてしまうもの。泳力が低い人が後ろからスタートすれば、だれともバトることなく一人ぼっちになるに決まっている。
それは、自分のペースで泳ぐことができる反面、前の選手について行って、スリップストリームに乗ることができないことを意味する。
多くの人が泳ぐことでできる流れに乗れれば、自分の力以上のペースで泳ぐことができる。それを狙っていたのに。
結局、3kmのスイムの間中、自分一人の力だけで泳ぐことになった。
皆生大会に限らず、ロングの大会に出ようと考えている方、スイムで他の選手とバトルする(=流れに乗ってスピードアップする)には、50mを1分10秒(25mを35秒以内)の泳力が最低でも必要だったみたい。
上記ペースの僕ですら、プールで200m×5本とか練習すると、50mを1分5秒くらいでは泳いでいる(200mを4分20秒くらい)。ということは、プールでは50m1分以内で200m以上泳ぎ続ける泳力が必要になるようだ。50mを1分だと、1500mは30分。プールで30分前後で1500mを泳げる人以上の人たちしかいないのがロングの大会なのか―。
なんてことを考えながら泳いでいたら、右側にコースロープが見えてきた。おかしい。
皆生大会のコースは、最初の200mほどを沖に向かって泳いだ後は、左に転回。そのまま中間地点で一度上がるまで、砂浜に平行に泳ぐ。折り返した後は、コースロープの外側を戻ってくるカタチだ。
コースロープは、砂浜側の進路左側と、復路との境となる進路右側の二本が平行に張られていて、コースの幅は100m近くある。本来、左側のコースロープ近くを泳ぐのが最短距離を行くセオリー。右側を行くということは、陸上のトラックでいえばオープンレーンで8レーンばかり走っているのと同じ、距離のロスがあるということだ。
実は、泳力のほかにもう一つ、僕には弱点がある。それは、ヘッドアップが苦手ということだ。これ、皆さん練習してますよね。きっと。僕も練習はしているのですが、どうしても苦手で、うまくできない。というかペースが崩れるのでやりたくない。さらに言うと、息継ぎが右側でしかできない―。
ちーん。というSE(サウンドエフェクト)が聞こえてきそうなほど、詰んでいる状態。ホント、良くこれでロングに出ようなんて思ったもので・・・。
オリンピックディスタンスのレースだと、コース幅がそこまで広くなく、また、内側のコースロープが右側にあることが多いので(そういうコースのレースばかり出ていたということもある)、早々にコースロープに張り付き、コースロープに沿って最短距離を泳いでいた。多少のバトルがあっても、そこまで人が多いわけではないので致命的なことにもならなかった。
だが、今回はコース幅がかなり広い。また、往路で右側のコースロープ付近を泳ごうとすると、ショートカットを警戒してなのか、マーシャルの方から注意され、内側を泳ぐように促される。そのたびに、進路左側に泳いでいくが、今度は左側のコースロープまで斜めに泳いでしまい、今度は右に進路を切って・・・。
結局ジグザグに泳いでしまい、本来の距離より何百メートルか長く泳いでようやく、ようやく中間地点にまでたどり着いた。
一度砂浜に上がった時点で7時47分。気温は上がり、水温も高い。このペースならば足切り前にスイムアップは可能だが、後ろを見ると3、4人しか泳いでいなかった。
しかし、後半はコースロープが進路右側に来る。しかも、それが最短距離だ。後半はヘッドアップを一度もしなくてもゴールまで行ける。ペースアップもできるだろう。
レース冒頭からいきなりきつい状況になったが、希望が無いわけじゃない。何より今日の目標はゴールまでたどり着くこと。どんなにかっこ悪くても、どんなに無様でもいいからこの体をゴールまで持っていく。
希望を持ってスイム後半に挑んだのだった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
人生、曇り時々晴れがいい。
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